不動産フォーラム21
人の断捨離
カフェで小耳に挟んだ話です。30代若ママらしき2人がお茶をしながら「ちょっと失礼な言い方だけど “人の断捨離”やってるのよネ。この間も学生時代に仲の良かったグループの集まりがあってね、6,000円のエスニックレストランでおいしかったんだけど、7人のうち1人はお医者さんと結婚してハッピーな人で話も楽しくて明るい人だけど、残りの6人は独身で仕事漬けの毎日らしく、愚痴とため息の話ばっかり。10年も続いた友達関係だけど、もういいかなって思っちゃった。私にはいらないなって・・・・・・」「そうそう、私も子供を産んでから人間関係は変わったよ。それまで声かけられると当たり前のように付き合っていた友だちも、子育てが始まると時間がないからおのずと会おうと思う人とそのうちネと思う人とを選んでいるので、ずいぶん友達関係変わった。これ“人の断捨離”だよね。」「やっぱり環境や経済力で昔の友人でも生き方や考え方が変わるから、会っておかなきゃっていう気持ちに対し、それはムダじゃないの?っていうチェックが入るわけよ。洋服のいつか着るかもしれないからとっておかなきゃから、何年も着てないから持っているのがムダじゃない?の断捨離と同じだよね。けっこうスッキリするのよね、”人の断捨離”って。」「同感。同感。(笑)」
なるほど、うまく言ったものだと私は感心しました。実は私も”人の断捨離”をやっていて、10年以上何となく会っていた女子仲間のレストランめぐりの集まりを休止したり、スポーツ仲間集めが面倒になり、会員制クラブに入って知らぬ人とシンプルなプレーを楽しむようになり、なんだか楽チンな人との関係がこの数年始まっています。“人の断捨離”です。
先日、TVでも似たような話を有名男優がしていました。この人は子供たちが独立をして、夫婦2人となったある日の食卓で「あなた、本当の友達はいるの?」と奥様の突然の一言でドキッとして「本当の友達・・・。ホントウの友達はいないなあ・・・。」と答えたら。「私にはいるわよ。子供たちもいなくなったんだから友達つくらないとヤバいんじゃないの!!」と言われ、ちょっとショックだったそう。しばらく考えたけれど「無理して友達つくるより、今のままでイヤじゃなければ、しばらくは一人でもいいんじゃいかなー」というのが結論だったと男優さんは語っていました。“人間関係にムリをしない。人の関係に意図を加えない”今の時代はこんな感じの人が多くなっているように思います。
40代以上の人には記憶があると思いますが、以前ビジネスシーンでは「異業種交流会」なるものが活発でした。人脈をつくるため、知識を増やすため異業種同士集まって、知り合いになろうというイベントがあちらこちらでひらかれ、みな積極的に出かけて行ったものです。今では「異業種交流」なんて死語になってしまい耳にすることは皆無です。これもビジネスシーンにおける“人の断捨離”なのでしょうか?
考えてみると、ここ数年で業種の壁がどんどん薄くなったように思います。業種が以前のように縦割りではなくなりチャネルの拡大で、小売業×ネットビジネス、物流×不動産、農業×商業というように業種がオーバーラップするビジネスモデルがたいへん増えてきています。またネットの普及で世界中のビジネス情報が瞬時のうちに手には入る時代にもなりました。情報環境やビジネスモデルの進化から言っても、以前のように、ともかく人脈を広げる時代から、深める時代になったのかもしれません。
さらに、スローライフな暮らし方を志向する人が増え、自分らしい生活時間に価値を置く中でムリ・ムダにたいして敏感になっていて、仕事にかけるオンタイムとプライベートを大切にするオフタイムの時間配分をこだわる世代が増加していることも、大きな要因になっているようです。
次には“人の断捨離”から“ネットの断捨離”がめぐってくるかもしれませんね。
(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2014年12月号掲載)