MAGAZINE

2017.01.31

不動産フォーラム21

2017年のスタート 福袋と鬱袋

 

福袋はお好きですか?
 私は福袋に全く縁のない消費者で、長い人生に福袋を買ったことは1回だけ。それも後輩が務める大手下着メーカーの福袋を頼まれて義理で購入。中身はさえない商品で速攻ゴミ箱行きでした。もう20年以上前のことです。
 福袋無関心派なのでお正月の福袋フィーバーには消費者として不思議な感覚ですが、商業コンサルタントという仕事柄、1月1日の誘客では福袋が重要なファクターとなり注目をしています。数ヶ月前からショップに福袋の準備をしてもらい年末にはネットやチラシで福袋のPRを行い元旦からの人手を期待するわけです。
 今年も福袋人気は不動でした。福袋人気ショップは元旦早朝からお客様が行列をつくるので商業施設の運営者は行列の整理が仕事始めとなる毎年のお正月です。多数のお客様が列をつくってくださると「今年の初売りも好調だなあ」とうれしい気持ちになりますが、消費者目線では「元旦早朝から買物とはすごい」という感覚になります。
 しかし来店客はみなさん淡々と行列をつくり、お目当ての福袋を手に入れると楽しそうにニコニコ帰っていきます。心底毎年その店の福袋を楽しみにしているのです。

 

福袋トラブル
 年に1度の福袋ですから期待が大きいだけにトラブルも起こってしまいます。私がかかわっている商業施設では行列のトラブルが時々起ります。元旦早朝から福袋人気店前に並ぶのですが、横入りしたということで客同士のけんかになるケースがありましたが礼儀正しい日本人のことですので稀の稀でした。が、近頃は日本の福袋はお買い得という話題が広まりインバウンドの外国人旅行者も行列に加わるようになってきましたので、整列トラブルは多少増加傾向になってきています。
 また困ったトラブルは少数客の買い占め問題です。一人や二人の客が何十個と福袋を買い占めてしまうので、後続の客まで限定数福袋が回っていかない問題です。ある人気アパレルショップの開業後初のお正月の出来事。元旦早々から長蛇の列が福袋をお目当てにできていました。限定50袋をPRしていましたので整列係りも50人以降のお客様にはお帰りをいただいたのですが、なんと前方に並んだお客様が友人に頼まれたと複数個を買ってしまったので後続のお客様の手に福袋は渡らずじまいになって大問題となりました。当然翌年からこの店は一人一個の制限となりました。この話は人気店にありがちな福袋トラブルですが、昨年有名になったのはスターバックスコーヒーの都内店舗で、早朝5時過ぎから行列が始まったが先頭はなぜか人間がいなくて5脚のイスのみ。7時の開店に合わせイスを置いて5人の人物が現れ(車で待機していた様子)108個の全福袋を買い占めていったという事件です。この人物たちのモラルの問題ですが行列を前にして108個を売ってしまったスタバの対応も問題になりました。悲しいトラブルです。

 

鬱袋(うつぶくろ)のガッカリ自慢
 スタバのような事件がなぜ起こるのかというと、人気店福袋のネットによる転売が当たり前化しているのです。スタバ福袋には地域限定品やオリジナルカップ等が入っているという噂があり、2~3倍の値でネットオークションにかけられます。この5人も福袋で儲けようとした人たちなのでしょう。ちっとも“福”ではないお話です。
 さて、ネットは福袋に新たなステージを生み出しています。福袋好きの人たちが、ゲットした福袋の中身をネット上公開しているのです。「今年の〇〇ブランドの福袋は当たりでした」「昨年より今年の中身はクオリティが良くなりましたよ」「〇〇や△△も入っていて、ほしいものばかりでラッキー!!」なんてメッセージ付きで写真がアップされています。どれも“福度合”の自慢PHOTOで、確かに値段と比較するとお得な商品が袋にびっしりです。
 しかし、おもしろいことに「〇〇店の今年はひどすぎる レベル低いゾー!」「これが5,000円か!!」「どーやって着るのよー」といったメッセージとともに残念なPHOTOをアップしている人たちもいます。正直、福袋の自慢を見るよりこのガッカリメッセージを見るのはおもしろく、これを人々は鬱袋(うつぶくろ)と呼んで、ハズレばかりをつかまされた自分に対し自虐ネタとして鬱袋のさえなさやダメダメさを自慢しているようです。中には袖が4本もあるニットや精肉断面の生々しいクッション等、お気の毒な商品が多数あり。ちょっと笑えます。
 いずれにしろ、新年の買物始めは今年のハッピーの始まりですね。

 

 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2017年2月号掲載)