不動産フォーラム21
-曖昧カラーがなぜはやるのか-
●流行色はどこからうまれる?
皆さんは流行色がどのように生まれるのかご存じですか?街中やテレビで見かけるカッコいいファションからこんな色が流行っているのかと思ったり、駅や電車の広告から色の傾向を感じたり、買い物先の売り場で気になる色が視界にはいってきたり、流行色に対してはこんな受け止め方が一般的で、多くの人が好いと思った色が生き残り商品化の主流になった結果が流行色となると思っているのではないでしょうか。
実は流行色は国際流行色委員会という国際的な民間の色彩情報団体によって毎年2回春夏カラーと秋冬カラーの流行色が決定され世界に情報発信されています。色の決定は2年前にさかのぼり、例えば2022年春夏カラーであれば2020年春時点でこの団体により決定されその情報が世界の各種業界に伝わり、そこから商品化がスタートし展示会や発表会を経て2022年春夏に店頭に並ぶという長いプロセスがとられます。激動の時代、特にパンデミックに襲われている今の世の中では、2年前の決定が果たして消費者の心を掴めるものだろうか、と疑問を感じたりもしますが、流行色は消費者オリエンテッドではなくビジネスを仕掛ける側がつくっているという事実は意外と知られていません。
さて、仕掛けには乗らない一般市場では一昨年後半から 「ニュアンスカラー」 という色の領域がヒットをして多様なカラーシーンを生み出しています。 「ニュアンス」 の意味は色彩や音色の微妙な差異、言外に表された話し手の意図 と辞書にはあり印象や雰囲気の微妙な違いを表す言葉ですが、この微妙な色合い、あいまいな色合いという領域がウイズコロナ時代に人々の気持ちをとらえています。
●ニュアンスカラーでこなれ感UP
「ニュアンスカラー」 がヒットしている領域はファション・化粧品・ヘアカラー・ネイルといった装い分野が筆頭ですが、インテリアや生花の分野までニュアンスカラーが支持されています。
ニュアンスカラーとはどんな色でしょう?本誌がカラーではなくて残念ですが、複数の色味が混ざった曖昧な中間色のことで、原色や蛍光色、パステルカラーなどの鮮やかで明るい色とは異なり、全体にくすみがかったグレーっぽい色合いが特徴でくすみカラー、スモーキーカラーともいわれています。くすんだベージュ、くすませたグリーン系、くすんだピンクやくすんだ紫色、くすみブルー等々、どれも彩度が低い穏やかな色合いです。
ファションではニュアンスカラーのニットワンピースやニュアンスカラーのシャツとニュアンスカラーのパンツのコーデネイト、真冬にはくすんだホワイトカラーのコートにパンツもくすみホワイトといったワントーンコーデが流行しています。どれも品よく抑えた穏やかな色合いなので日本人の顔やスタイルにマッチし着こなしやすく今年のお洒落感を演出できるので、多くの人のお財布の紐を緩ませました。中にはユニクロがニュアンスカラーの取り込みが早く店頭マネキンでニュアンスカラーの全身コーデを提案したので浸透が加速したという説や、ジェンダレス時代で男女差がなく受け入れられる色で人気が広がったという説もながれています。もっとシンプルな理由は不景気な時代なのでどの色とも相性が良いニュアンスカラーの1枚を取り入れることで手持ちのパンツやアウターと組み合わせれば簡単に今どきのこなれ感が楽しめることがヒットの要因ではないかと推測します。
しかし誰もがニュアンスカラー支持というわけでもなくネットをチエックすると真逆な評価もあり、「アラフィフの私はニュアンスカラーのトップスを着ると顔色がくすみまるで死人のようだ」「若い身体がきれいなスラッとした女の子のニュアンスカラーは魅力的だがぜい肉がついたアラフオーの私はデブ感倍増」という本音の書き込みもあり思わず吹き出してしまいました。
●なぜはやっているのか、本当の理由
むかしから景気が良いときには明るい色が流行り、景気が悪いときは暗い色が流行る、といわれています。消費者心理が色にも表れるわけです。では曖昧なニュアンスカラーの流行は消費者のどんな心理の現れでしょうか。情報があふれ情報に惑わされる現代、とくにコロナ禍となり不安定で先行きが見えないことや自宅時間増でついつい情報を取りすぎてしまう生活で目に入り耳に聞こえてくる情報に脳や気持ちが疲労する毎日。それが為に気にならない色、目に心地よい色を好ましいという傾向が顕著になり ”引っかからない和み色” を評価しているのではないかとおもいます。また彩度が低い色味は良い意味で目立たない。ここにも苦難の時代ゆえに気張ることより、ムリしないでフツーに暮していきたい消費者心理が隠されているのではないでしょうか。
2022年春夏シーズンのトレンドカラーはケリーグリーン、ブライトオレンジ、コットンキャンデーブルー、クリームイエローなど元気な色相が発表されています。こんな元気色が受け入れられる心前向きな2022年春が来ますように。
(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2022年1月号掲載)