不動産フォーラム21
銀行であり、オフィスであり、カフェである。そんな場所ができました。
小学校の時、親と銀行に行き自分口座を持ちました。大人になった気分と銀行のピシッとした雰囲気と景品の貯金箱で記憶に残る体験でした。
数年前まで銀行は街の随所にあり夏に涼ませてもらったり待ち合わせ場所に使ったりと、身近な存在だったのですが、近頃は「法人はダメ」「何の用件?」「予約してある?」などと関所のごとき入り口で制限され手数料も高額になり無人化傾向で店舗数も激減。昔のような親しみあるお付き合いなど望むべくもなくなりました。子供たちの初口座づくりは今どうなっているのかしら…。
●古い銀行がモダンラウンジに生まれ変わり
渋谷の三井住友銀行が閉じられ撤退かと思っていたら数ヶ月後に「Olive LOUNGE」というおしゃれな店舗に変わりました。大型スタバと2階はコワーキングスペースです。1階には様々なスタイルのテーブルと椅子が配置され、一人でもグループでもスタバのコーヒータイムを楽しめる明るい空間が広がっています。中央には大きなモニターが設置され書棚のような落ち着いたデザイン空間です。
従来型のスタバより主張が柔らかになり軽快さを感じます。2階のSHARE LOUNGEはCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)が運営する125席のスペースで個人用ブースやオンライン会議もできるミーティングルーム等多彩です。1時間1,650円(フリードリンク)でナッツやシリアル等の軽食までそろっています。
また1時間2,200円のアルコールプランではビールやハイボールが楽しめます。驚いたのはキッズプラン1時間825円があり、渋谷に来る子連れママ&パパをイメージしての設定なのでしょう。近頃スペースレンタルの気の利き方はハンパないですね。
開業直後の6月初旬は、「Olive LOUNGE」に気付く人が少なく、写真のようにスタバもゆとり、シェアラウンジもスキスキでしたが、瞬く間にスタバはキャリーケースを持ったインバウンドや渋谷見学の若者でいっぱいになりシェアラウンジも席が埋まっています。モダンなラウンジに生まれ変わり古い銀行の面影はゼロです。
●「お気軽な利用」の銀行アプローチ
渋谷らしい華やかなお客さんでにぎわっているラウンジの奥にスーツ姿の女性が待機していて、銀行のATMと相談カウンターが設置されています。「用事がないと行かない場から生活の中で日常的に使う場の中に銀行サービスを設ける」というのがこの銀行のねらいで、スタバやCCCと共同企画したのが「Olive LOUNGE」だそうです。
試しにお金の運用を相談したいと申し出てみました。待たされること約20分。運転免許証等の提示を求められ「お金とは少額か?」などと質問されお気軽ではありません。
その後、地下のミーティング室に通されタブレットに映る担当者とリモートで面談となり漠然としたまま終了しました。お気軽に声を掛けましたがその先は重かったです…。銀行ができることは何か、こちらも何をしてほしいのかをお互い提示できないと流れには乗れないようです。これってスタバでお茶しながら「そうだ、銀行に相談してみよう!」となるシーンなのかしら?ちょっと謎でした。
三井住友銀行ではTVでCMしている金融サービスアプリ「Olive」のユーザー獲得のためこのラウンジを新業態としてオープンしたそうです。「Olive」は銀行口座、クレジットカード、デビットカード、資産運用も1つのアプリで一括管理できるというすぐれものだそう。初めてこの店を見たとき「何でOliveという名なの?」と思いましたが、銀行の営業戦略から命名された事がわかりました。しかし私には「Olive」アプリのお勧めがなかったのは残念です。
次はお互い新ステージを上手に効かせるようになっているはず。また気軽にお茶飲みにいってみましょう‼
(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2024年7月号掲載)