MAGAZINE

2023.12.01

不動産フォーラム21

銀座の新ホットスポット-時代が生んだ新交差点-

 
 

●日本の世界ブランドが集まる銀座の新四つ角 
 銀座といえば和光前の四丁目交差点が有名ですが、近ごろはマロニエ通りと並木通りが交差する四つ角がホットスポットになっています。この四つ角で日本を代表する世界ブランドが集まり最新業態を見せているからです。

 

 角の一つは「ミキモト銀座2丁目店」。日本産真珠は透明度と輝きの高品質で世界の富裕層から人気があり、特にミキモトはその老舗として有名です。斜め向かい角には国内最大規模の「ユニクロトーキョー」(1~6F)がピカピカサイネージでアピールしているビルがあります。誰もが知っているユニクロを展開するファーストリテイリングはグループ全体で2兆7,665億円企業で世界で3,600店ものショップを持つビッグカンパニーです。その国内代表店「ユニクロトーキョー」が四つ角の一角を占めています。さらに並木通りを隔てた向かい側には「無印良品 銀座」がありこの店も国内店舗としてはトップクラスのホテルやレストランを併設した大規模店です。無印良品も国内海外に約1,200もの店舗を構え欧米でも人気が高い世界ブランドです。

 

 “真珠のミキモト、ライフウェアのユニクロ、シンプルライフの無印良品”が集まる小さな交差点は日本の誇る世界ブランドの結集ステージで、国内客以上に海外旅行者が集まるにぎやかな名所になっています。

 
 

●リニューアルとお仲間増でさらなる活気が
 9月29日、「無印良品 銀座」が開店から4年半で大きなリニューアルを仕掛けオープンしました。2019年の開店時は衣料品中心の商品構成でしたが、今回のリニューアルでは“食”をフォーカスして売場を作りかえています。コロナ禍で変化した人々の意識を読み取り開業4年半でフラッグシップ店をリニューアルする敏捷性はさすがだと感じます。

 

 1階は食のフロアとして青果や菓子・乾物・冷凍食品や焙煎したコーヒー豆の販売・焼き立てベーカリーがあり生ハム、フレッシュチーズ、生パスタ等のチルド食品の販売も新規に始まりました。地下は広々空間の「MUJIダイナー」になっています。2階、3階は衣料品売場ですが、4階は食を切り口にしたキッチン商品やテーブルウェアで構成されたテーマゾーンになり、6階は自家焙煎コーヒーやアルコールが楽しめアートギャラリーが併設された文化的サロンになっています。都内や地方に無印良品の大規模店はいくつかありますが、銀座店は無印の志向性が濃度高くコンパクトに表現された構成となり、メッセージが感じられるリニューアルとなりました。平日のためか来店客の半数以上がインバウンドの人々でしたが、何かが伝わっているのでしょうか、皆さん興味深げに館内を回遊しお茶や食事を楽しんでおられました。

 

 お向かいのユニクロは常にシーズンを先取りする商品構成と見せ方で表情を変える店づくりで楽しませてくれる館で、サイネージや館内装飾でも勉強になるポイントがあり時代の先端を感じる場ですが、さらに館がパワーアップする出来事が今年10月に起こりました。

 

 「毎日が特売」をウリに低価格を武器に成長する食品スーパーの「オーケー」がユニクロの地下1階・2階の600坪で出店したのです。オーケーと言えば300円台のお弁当や安価な冷凍食品の豊富な品揃えで有名なスーパーです。「銀座の一等地で安価スーパー?」と出店ニュースには驚きましたが、行ってみるとすでに銀座になじんだ雰囲気が漂い、来店客も多くいました。安いお惣菜やお弁当は銀座でも実現。おにぎりが1個50円、サラダパックが198円、人気のかつ重299円とみごとな品揃えです。ご近所のサラリーマンやOL、ショップスタッフがランチにお弁当を買いセルフレジで会計を済ませる姿が多くありました。銀座は高級、銀座は一等地のウラに実は潜在的ニーズがかくされていたことに気付く「オーケー」のあり方でした。

 
 

 銀座と言えば長い間ラグジュアリー&非日常の憧れリッチエリアですが、そこから2丁離れた小さなマロニエ二丁目交差点のあり方は、これからの私たちの“クオリティライフ”を軸とする新生活価値を象徴する新しいクロスポイントになっていると思います。

 
 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2023年12月号掲載)