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2015.02.03

不動産フォーラム21

進化するジャパンビジットな人々

 

 急激な円安で日本人の海外旅行はやや控え気味の昨今、海外からは訪日外国人は増加の一途にあり、日本政府観光局の発表によると2014年11月の訪日外客数は前年同月比39.1%増の116万9千人で、2013年11月の84万人を何と約33万人も上回る勢いです。2014年1月~11月までの累計は1,200万人を突破し2014年の年間では1,300万人を超えたのであろうと推測され、日本は過去最高の訪日外国人を迎えていることになります。

 たしかにその実感は日常の街中でもあり、以前は都内で「多いな」と思った外国人観光客の姿が昨年あたりから大阪はもちろんのこと、札幌や福岡や名古屋でもかなりの人数を見かけるようになりました。さらに、昨年あたりから特徴的なのはその多様性で、以前は余裕のある中高年層が主流でしたが、近頃は小さい子供連れのファミリーや10代20代前半の若者層が多く目立つようになっています。

 2020年オリンピックイヤーに向けて、多くの国や世代の外国の方々に日本を知ってもらえるのはうれしい限りです。

 

 実は先日、外国人観光についてとても興味深い話を聞きました。冬の北海道はウィンタースポーツを目的にしたアジアやオーストラリアからの観光客でにぎわいを見せていますが、高級な宿泊施設が整ったメジャーなスキー場にはシンガポール・台湾・タイ・香港から超お金持ちの方々が一族や一家でお手伝いさんも引き連れて長期滞在されるケースが近年目立ってきたそうです。これらのリッチファミリーの凄さはコートを羽織った普段着で訪れスキー場にあるショップでスキーウェアからギアに至るまで用品一式をファミリー分全て買い揃え、メイドインジャパン婦人服や紳士服もついで買いをされ、1回の買物に数十万から数百万円を使う上客となるそうです。さらに凄いのは帰国時には荷物になるし、あたたかなお国ではスキーウェアやスキー板は無用の長物とばかりに全てをホテルに捨てていき、また来年の来日時に一致気を買い揃えるという贅沢な使い捨て感覚のお客様だそう。こんなセレブファミリーをターゲットにして店側では、ハイクオリティの高額ウィンター商品を充実させたりついで買いのためのファッションや雑貨を揃えたり、英語力のある販売員を全国から募集したりと対応に大わらわだそうです。

 

 東京でも面白い話がありました。欧米から輸入の高級キッチン用品専門店では円安の傾向から値上げ商品が増えてしまっているそうですが、売上は好調だそう。その要因は、アジアからの富裕層観光客が、母国よりも円安日本のほうが同じ商品でも安く買えるとばかりに調理器具や食器等をまとめ買いしていくのだそうです。「旅慣れをしている外国人客が増えている証拠」と店主が言っていました。

 慣れるという意味では、逆に嫌な話もあります。私がコンサルティングをしている工芸品を扱う九州の小売店では、近頃万引きの被害にあっています。盗まれる商品が数ある商品の中でも、より品のある高級品ばかり。唐津焼の1万円もするシブ好みのお猪口であったり、博多曲物の棗(なつめ)であったり。ともかく通好みの一品ばかりなのでがっかりするやら感心するやらの複雑な気分です。

 

 今年1月に入り国土交通省は、札幌までの北海道新幹線を5年、北陸新幹線の金沢・敦賀間を3年、長崎までの九州新幹線も可能な限り前倒しの方針を発表しました。北海道を5年、北陸を3年前倒しするとGDPは4千億円の押し上げ効果が期待できるそうで、この中には外国からの観光客にビジットジャパンを日本の各地で楽しんでもらいたいというシナリオも組まれているそうです。初めての日本旅から2回目、3回目の日本旅となる外国人観光客にどんな日本を見せられるかがこれからのテーマですね。

 

 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2015年2月号掲載)