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2015.07.07

不動産フォーラム21

絵文字文化さまざま

 

 「ピクトグラム」をご存じですか?皆さんが毎日のように街で見かける絵文字のことで、身近なものは男女が並んだトイレサインや人が扉の向こうに跳び出そうとする非常口サインではないでしょうか?

 

 この見慣れている絵文字「ピクトグラム」には古い歴史があり、その起源は人類最初の絵として知られるスペインのアルタミラ洞窟壁画にあると言われていますが、ヨーロッパで発達し日本では1964年の東京オリンピックで一般人に認知させるようになりました。世界中から来日する言語が違う人々に対し一目で直感的に内容伝達を行うことを目的に開発されました。サッカーや水泳等、競技をシンポライズしたデザインは今見ても新鮮でカッコよく、当時のデザイナーの意気込みを感じさせます。

 毎日見かける男女のトイレサインは大昔からあった当たり前のような存在ですが、実は1970年の大阪万国博覧会に登場したのが最初だそうです。意外と新しいのですね。当時はこれがトイレのサインであるということをわかる人が少数であったためサインの横に「便所」という張り紙が出されたという話が残っていますが、トイレの案内用サインとして社会に浸透するのに10年かかり、同時に日本社会でも多くの「ピクトグラム」が街に登場するようになりました。最近よく見かけるようになったピクトグラムはオストメイト(人口校門保有者)対応トイレやAED(自動体外式除細動器)設置場所ですね。

 

 写真は大阪の地下鉄で見た「ピクトグラム」です。かなりのインパクトで、誰も座っていません!!

 従来、優れたピクトグラムは「主張しない」「訴えない」ことから生まれており、アピールを目的とする広告や看板とは役目が違うため、街角では目立たずに本当に必要な時に自然に目に飛び込んでくる黒子のような役割が優れたピクトグラムと言われています。思い出してみるとトイレサインは街にたくさんありますが、必要を感じない時にはその存在が目にも入ってこないものです。しかしこの地下鉄のシートは目立っています。「お年寄り、妊婦さん、赤ちゃん連れ、けがをしている人、だけのためのシートです」>という優先席をこれほど主張しているピクトグラムを初めて見ました。日本中の電車やバスには必ず優先席があり、写真と同様のピクトグラムが席のそばや窓やシートの背もたれに掲示されています。それは従来のピクトグラムの思想通り、主張しないサインであり、必要な人にだけ訴えるサインであるのですが、おそらく誰にでも訴えないとならない情報として>この地下鉄の優先席シートは開発されたのではないでしょうか?常に目立ち訴えていないと対象外の人々がシートを占領してしまうからなのでしょう。「主張する強いピクトグラム」が必要になってしまうのは残念なことです。

 

 さて、絵文字で思い出すのは携帯電話やインターネットで活用される絵文字や顔文字の様々なデザイン。近頃はプライベートなやり取りばかりでなくビジネスシーンでも>親しくなった方々とのコミュニケーションに文章中に顔文字や絵文字を入れると、表現がやわらかくなったりこちらの感情をより伝えやすくなったりの効果があって、活用される時代になっています。聞く話によると、顔文字はお国柄があり、日本人は目をポイントに、米国人は口をポイントにした顔文字表現なのだそうです。

 アルタミラから始まった直感的に内容伝達する目的の絵文字化は、街中にもケータイにも人々の多様化の中で必須の存在になっています。

 

 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2015年7月号掲載)