聖教新聞
結果を出せるかどうかは「こうなりたい」という欲が深いかどうか
待っていてはいけない
「仕事は決して、自分の方に歩み寄ってはくれないもの。特に、能力も経験も十分でない若いうちは、自分から仕事に歩み寄って引き寄せない限り、何も始まりません」。
著書『30歳から自分を変える小さな習慣』の中で、仕事の姿勢について、こう書かれていた。
若手社員を見ていると“待っている人”が結構多いような気がします。「私はここにいるから早く誰か、私に気がついて」と、まるでシンデレラのように(笑い)。子どものころは皆、何かあると競うように「やりたい!やりたい!」って手を挙げていたのに、大人になるとそれがなかなかできない。そんな姿勢で、仕事が来ることはないですよね。
タクシーでも空車の表示がついているから、乗りたい人が手を挙げて止めてくれる。表示が出ていないタクシーは誰も止めません。上司は「仕事をやらせてください」という“やる気”を見て、仕事を任せるもの。時には、望んだものとは違う仕事を頼まれることもありますが、「何かお手伝いすることはありませんか?」と“御用聞き”を日々の習慣にすることから始めるだけでも変わってくるものです。
また、待っているうちは仕事が楽しくなる事はないんじゃないですかね。今つらいと感じている仕事が劇的に楽しく変わる事はないかもしれませんが、そんなちょっとした姿勢の変化によって少しは楽しさが見つけられるはずです。
感性とは観察力だと島村さんは言う。そして、観察力が磨かれていくとそれによって“気付き”が増え、新しい発想や課題の解決策が生まれる。
例えば、同じ時間クライアントさんと商談をしていても、私と、連れて行った新人社員とでは気づきの量が違います。それは、観察力の違いなのですが、気づきの出発点は「面白がる」ことだと思うんです。
自分が面白い、楽しいと思う感覚を信じて、ひたすら目の前にある仕事をやり続けていくことが結果としてキャリアアップにつながるのではないでしょうか。面白がることは自分に気づきチャンスを与えていくことになります。いろんな視点から面白がることができれば、その分だけ気づきが増えるということなんです。
感性は誰にでもある
さらに「感性とはすべての人に与えられた力」と強調する。
感性がない人はいないと思います。仕事では頼りない人でも、コーヒーのことになると、とても研究熱心な人っていますよね。また、仕事は半人前だけど、釣りに関してはプロ並みなんて人もいるかもしれません。
感性の生かし方とは、自分の感覚から出発してかまわないので、観察し、気づき、考え、そして行動に移すこと。例えば釣であれば、風向きを観察し、どんな場所でどんな道具を使うか考え、実際に釣りに行きますよね。そんなことは教わらなくてもやっているでしょ。同じプロセスを少しでも仕事で意識してみると、なにか変わるんじゃないかと思うんです。
著書の中では「少しでも心に引っかかった事があれば、それを見逃さずに一歩足を踏み出す。たったそれだけのことですが、これを実行するかどうかで人生は変わってきます」とも記す。
何かをやろうとする時、出来ない理由をたくさん並べる人っていますよね。例えば、太り気味の人がジョギングを決意したとします。しかし、いざ走ろうとすると走りたくないので「雨が降ってきたから」「暑いから」「明日は大事な会議があるから」などと理由を並べ、結局走らない(笑い)。そんなにできない理由を考えられるエネルギーと能力があるんだったら、さっさとやってしまった方が早いと思うんです。
私も、原稿の締め切りがあったりすると、書かない理由を山のように頭の中で考えるんです。でも、書かない理由を考えている途中で、「こんな無駄なエネルギーは人生にとっていいことない」って気づいて「ちゃっちゃとやっちゃおう!」と。毎回そうなんですよね。
経営者として社員と接する中で「伸びる人と伸びない人」にはどんな違いがあるかを聞いてみた。
伸びる人は自分に対する欲が深い人。「自分はもうちょっとこうしたいな」とか「こうなりたい」という欲は誰にでもあります。それを外に出せる人ほど、何かをやらせてみた時に食いついてくるんです。また、そういう人は成功した時も、失敗した時も決して漠然としておきません。失敗した時は、どうしてそうなったのか徹底的に検証し、改善する努力をします。また、成功した時は、ただ喜ぶのではなく、どうして上手くいったのかを振り返ることで次の仕事を、さらに質の高い物にすることができます。
自分への欲が少ない人ほど、勝っても負けても漠然とさせちゃう。そこが伸びる人とそうでない人の違いだと思います。仕事に対して、誰もが自分への欲くが深くなければいけないとは思っていませんが、一緒に仕事をするなら、自分への欲が深い人がいいですね。
その上で、小さな成功体験の積み重ねが大事だと島村さんは言う。
うまくいった時に、うまくできた自分に“うっとり”することってあるじゃないですか。それはすごく重要なことで、心の中で“ドヤ顔”するような感覚を味わうと、人はその感覚を味わうために頑張れる。自分に対する欲もどんどん出てくる。そうなれば、仕事は断然面白くなると思いますよ。
(記:島村 美由紀/聖教新聞 2016年7月9日掲載)