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2016.08.05

不動産フォーラム21

知って驚きのカーシェアリング

 

 地方都市で暮らす友人を訪ねると、空港に車で迎えに来てくれました。「あれ、この人は車を持っていたっけ?」と思ったら何とシャアリングカーだそうで「近頃はシェアリングカーを活用して行動範囲が広がった!!」と大満足の様子。さらに「本当によくできたシステムで快適!!」と普段は辛口評価の彼女の高評価にあらためて“カーシェアリング”に注目をしてみました。

 

超お手軽でコスパはバツグン!
 友人いわく、ともかく便利で安いのだそうです。車を所有する場合にかかるコストは購入費用、ローンの金利、車検や点検整備コスト、税金、保険料、ガソリン代、駐車場代等で、年間にかなりの経費がかかります。当社は東京渋谷に事務所がありますが、若手スタッフの下町マンション家賃と駐車場代が同じだと知った時には笑い顔が引きつりました。高すぎる・・・。
さて友人も住宅ローンや教育費を抱えたら常時使用するわけでもない車なんて保有できないと長年車なし生活をしてきた人ですが、口コミでカーシェアリングの活用術を知り、使ってみたら手軽で安く便利で、実家の親の介護、大物の買物等に使い、最近では夫婦でゴルフも始めたとの報告でした。
「とは言えどこに車を借りに行くの?」という私の質問に「近所の有料駐車場にシェアカーが置いてあり、メンバーになってネットで利用予約をし、当日駐車場に出向き、メンバーズカードを車にピッとかざすとロック解除。車内にあるキーを取り出して運転。そして予約時間内に駐車場に戻し、メンバーカードをかざして施錠するだけよ」とのこと。実際に私と友人は出迎えの空港から夕食の買い出しにスーパーへ、友人宅で荷物をおろし、近所の駐車場の所定の位置に車を戻してカーシェアリングは完了しました。利用金額は3時間で2,500円弱。洗車も給油も電話連絡も不用、なんてお手軽なんでしょう!!
思い出してみると、たしか4~5年前にこれからカーシェアリングが普及するかもしれないという原稿を書いたことがありました。ある交通系の政府機関の委員会に出席して、ドイツで先行しているカーシェアリングを日本でも本格導入する事業者が出てきたという話を聞いて原稿にしたのですが、まったく知らない間にカーシェアリングは進化を遂げ、国内のカーシェア拠点は10,800ヵ所で約2万台の車が稼働、会員は85万人もいて、利用者は倍増しているそうです。

 

グッドマナーには特典付与がプログラムのkey
 「一つの物を他人同士で共有するのは皆が良い人でないとできないはず。どーやって守れるの?」カーシェアリングを体験した私の一番の疑問がこれでした。友人は「それがね、実にたくみにできたプログラムが個人評価につながっているのよ」とある大手事業者のプログラムを見せてくれました。このプログラムはポイントがたまりポイントに応じた特典が付与されるだけでなく、3段階のステージ評価がなされ「あなたはステージ2ですよ」「ステージ3になりましたよ」とほめられ、ルール違反をするとステージを下げられてしまうというちょっと厳しいプログラムです。
その中身をのぞいてみると「キレイ度チェック」で次にその車を使った人が前使用者の返却状態をWEBアンケートでチェックすると、アンケート回答者に1ポイント、きれいに使った前使用者に3ポイトが与えられます。「エコドライブ」では急加速や急減速の回数が1回以内にポイント付与、給油や洗車(料金は事業者負担)をした利用者にも15分間使用延長と3ポイントの付与、利用代金に応じたポイント付与、誕生日利用に付与というようにグッドマナーと頻度高い利用者にポイントがどんどんたまり、ステージ3の評価が下されるわけです。一番のミソは次の利用者からチェックされるので「キレイにキチンと」のモラルが車を守っていることなんですね。逆にルール違反をしたり駐車違反をした人はポイントが減点になるそうです。

 

“もったいない”が世界の共通語になる時代、家をシェア、ホテルをシェア、オフィスをシェアといろいろな“シェアリングエコノミー”が始まっています。個人と個人の信頼関係が鍵となるシェアリング文化が面白く発達することに期待します。

 

 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2016年8月号掲載)