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2022.06.01

不動産フォーラム21

“目的はっきり 成果くっきり“ のフィットネストレンド

  

●幽霊会員やお風呂会員が消えた 
 2019年のフィットネス市場は約5,000億円規模で会員数約430万人と2007年から増加傾向でしたが、コロナ禍で「スポーツジムがクラスター源」「ジムは不要不急の施設」といった政府発言もあり多くのクラブが休業に追い込まれ、2020年は35%減の3,196億円、会員数は23%減の約330万人に縮小してしまいました。

 

 ジムの中では日中の常連だったシニア会員が感染を恐れた家族からジム通いを止められての退会、コロナ禍で収入減になった人の退会、会費だけを払っていた幽霊会員の家計見直しによる退会、お風呂だけ会員の退会など、2020年頃は目に見えて会員数が少なくなり、「〇〇ジムは休館している」「〇〇クラブは閉館らしい」というマイナスな噂が飛び交い、お風呂にもマスク姿の会員がいたほど感染に注意をした会員とコスト削減策を実施して危機を乗り切ろうとするクラブ運営で館内は混沌とした空気が流れた2年間でした。大手事業者の中には店舗の閉店を進める状況もありました。

 

 しかし、逆のコロナ禍効果も生まれました。おうち時間が長くなったリモートワーカーが健康管理やダイエットにと入会したり、2006年頃より本格化した筋トレブームで外出制限がきっかけとなり本格的に始める人やオリンピックに刺激された人もいて新規入会者が増え、生き残ったクラブや事務は再生を図りつつあるようです。

 
 

●“からだ鍛え道“は多様化の一途
 日本のフィットネスの始まりは1964年東京オリンピックがトリガーで、80年代のエアロビブームもあり現在の総合型(マシンジム・スタジオ・プール・スパ等)スポーツジムとなりました。2020年には民間施設が全国で約8,000ある中、急激に増えたトレーニングマシン特化型の24時間営業セルフフィットネスやティラピス・ヨガ・筋トレ・女性専用の専門特化型スタジオやパーソナルトレーニング等も新業態として生まれています。

 

 「女性専用30分健康体操ジム」を初めて14年前に視察した時は軽いショックを受けました。トレーニングマシンが円形に並べられ会員がマシンからマシンへ移動して運動するとちょうど30分。軽く汗をかいてダイエットや気分転換になるというプログラムで、ガラス張りのスタジオは通路から丸見え。「これじゃ恥ずかしくて女性客は集まらない」と思いましたが、今では全国約2,000店もあり専業主婦やシニア女性に気軽な運動場として人気があります。もちろん、丸見えスタイルはNGで今は繁華街や商店街のビル2階によく看板を見かけるようになりました。「24時間ジム」瞬く間に数が増え全国に2,000店舗くらいあるといわれています。コアタイムだけスタッフがいるジムもあれば24時間無人ジムもあり、自由度高く価格が安いことからコロナ禍のダメージは少なかった業態です。

 

 最近、最もブームになり増加しているのがパーソナルトレーニングです。トレーナーがマンツーマンで専属対応し、客の目的に合わせたトレーニングを組み立て正しいフォームで指導・実施してくれるという贅沢トレーニングで、中高年だけではなく若い女性もフィットネスジムよりパーソナルトレーニングを望む人が増加傾向にあります。総合型フィットネスジムでパーソナル対応もありますが、トレーナーがマンション等の一室をスタジオとして設え「〇〇パーソナルジム」の看板を掲げる個人ビジネスが増えています。

 

 1対1ですから料金も高い。相場はあってないようなものですが50万円で30回分(1回1時間)チケットを買うというレベルの話をよく聞きます。高額なので目標達成しプリプリお尻のボディメーキングに成功した27歳女性や夫婦でダイエット成功の知人がいますが、高額だからがんばれた人と高額だから次の50万円が出せない人もいるよう。またトレーナーの国家資格がないのでトレーナーの質が保証されていないのが現状です。パーソナルトレーニングは注目が集まり出したトレーニングスタイルなのでこれから質やサービスがブラッシュアップされ成熟する業態になっていくでしょう。

 

 コロナ禍で試練があった業態ですが老若男女の健康ニーズやワークライフバランスへの意識変化を踏まえ、総合型だけではなく個人のニーズに合わせたコンセプトが明快なクラブやジムの存在に支持が集まる予感がします。フィットネス業界はコロナ禍でひと皮むけたネクストステージに突入した感があります。

 
 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2022年6月号掲載)