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2020.07.01

不動産フォーラム21

盛り上がるか!? 「ライブコマース」

  

 新型コロナ感染拡大をきっかけに在宅ワークのWeb会議やリモート飲み会、リモート遊び等が一挙に一般化しオンラインの利便性を実感するコロナ生活となりました。

 

 もうひとつ、オンラインで盛り上がりつつある「ライブコマース」の存在をご存知でしょうか?「ライブコマース」とはタレントやインフルエンサーがライブ動画を配信し、視聴者はリアルタイムに質問やコメントを送信して双方向のやり取りをしながら商品を購入できるという新しいEコマースの形態で、すでに中国では年間6兆円規模に成長しているというビッグビジネスです。

 

 今回は日本でもコロナを機に注目される「ライブコマース」についてお話をいたしましょう。
 
 

●知人が絶賛する利便の深さ
 エステティックサロンを経営する知人が「ライブコマース」を絶賛しています。それは化粧品仕入れが「ライブコマース」で効率アップをしたからです。
 

 知人のサロンは東京の隣県にあり、新しい化粧品が発売されると問屋や代理店から商品説明会の案内があり、片道1時間かけて講習を兼ねた説明会に行き、気に入れば仕入れるというやり方でサロンの商品構成を保ってきました。「ほぼ1日がかりの説明会は、人手不足の折、負担が大きかった。ヒット商品に結び付けばよいが、いまいちな商品もあった」そうです。

 

 ところがコロナをきっかけにメーカー側が商品説明会をライブコマースで行うようになり、知人の時間合理化は劇的に改善されました。説明会時間にPCを開き、メーカーの美容部員による新商品の説明と具体的施術方法を実演する動画を見て、質問があればライブ配信中に送信でき、美容部員はその場で答えるというリアル感が画期的だそうです。例えば「そのクリームは脂っぽくない?」の質問に部員は「全く問題なし」と言いながら手にクリームを多めにぬった上にティッシュを置いてティッシュがさらりと床に落ちる、というように実演で回答を出し商品の信頼感を高めていくのだそうです。

 

 知人は「都心で説明会を開催しても集まるのは200人~300人程度。でもこのライブコマースでは一挙に2,000人ものサロン関係者が視聴する。またライブ配信中に問屋から電話があり『次々に売れているのでとりあえず注文を入れたほうがよい』というような連絡がある。サロンもメーカーも問屋も便利に商売ができ、春からの普及は加速している」との話。ライブコマースの利点がBtoBで生かされている好事例です。

 
 

●ソーシャルコマースとしての新しい道
 私の身近でもライブコマースはスタートしています。近頃のアパレル業界は販売員不足や大手事業者の倒産など暗い話が多い中、実力派のセレクトショップ複数社がライブコマースをスタートさせました。

 

 始めたばかりでどこもたどたどしい動画であり、Bショップなどは司会者とモデル兼紹介者であるショップスタッフが夏のワンピースを説明中に音声があやしくなり、しまいにはピーピー音でおわびが入る映像が流れていました。しかし視聴者はBショップのファンが主流ですから「○○君頑張って!」「声が聞こえなくても○美さんのスカートかわいいから買いますネ♡」なんていうメッセージがモニターにアップされていきます。これが従来のECとの差で、人と人とのコミュニケーションが付加され、購買体験を実現する“ソーシャルコマース”という新感覚の形態なのです。

 

 Sショップのメンズコマースを見て驚きました。大柄のAさん(Lサイズ)、小柄のBさん(Sサイズ)がそれぞれに夏のカジュアルスーツを着用して店内で商品説明をしています。Aさんはクールビズ対応のコーディネイトを、Bさんは上着の代わりにストライプシャツを羽織ってカジュアルコーディネイトを実演しています。体形違いの2人の登場でサイズ理解が促進されます。視聴者から素材への質問があると、水はじきが良い説明にいきなりケチャップを上着にかけてタオルでふき取り「ほら、このとおりです‼」と実演。とたんに「スゴ~イ‼」「ケチャップ驚きです」というコメントがモニターに流れます。高感度セレクトショップとして有名なSショップですが、まるでTV通販のようなノリなので新しい時代になったなあと感じました。

 
 

 ライブコマース先進国である中国のある化粧品メーカーが「リアルショップに来店する客数よりライブコマースを動画で視聴する客数が数百倍多い」と言っていました。エステサロンの知人の話からそれを実感することができますが、ライブコマースの要は、ジャパネットたかた創業者の高田前社長のように、人物的魅力、会話の上手さ等商品にマッチした雰囲気のキーマン等が登場し親近感を持って双方向の良さを生かしていけるか、という人物にかかわってくると思います。ライブコマースがリアルECに次ぐ新チャンネルとして成長するか、期待したいところです。

 
 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2020年7月号掲載)