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2024.11.01

不動産フォーラム21

生活支出の変化が人気業態を生む-勝ち組の目の付け所-

 
 

●生活の変化がはっきり数字に 
 家計調査は総務省統計局が一世帯当たりの1ヶ月間の支出額で、景気動向の把握をする基本資料ともなります。この調査の2018年度と2023年度を比較してコロナ禍を挟んだ世の中がどのように変化したのかを調べました。

 

 支出が増えたのは食料で円安もありスーパーに行く都度食品が高くなり「何を食べたらよいか…」と頭を悩ませる日々。光熱・水道も値上がり、激暑の今夏は明細書を見るのが恐ろしいほどでした。保健医療もコロナ禍の影響もあり増加しています。

 

 減少した項目の筆頭は被覆履物で、5年間で13%も少なくなりました。ちなみに10年間(13年/23年)で比較すると18%ダウン。衣料品は低価格化が進みアパレル業界は2018年をピークに市場規模が縮小し、消費支出にもそれが表れています。その他教育や交際費(その他支出)も節約により減少しています。消費支出の総額は2013年319,171円、2018年315,315円2023年318,755円と長年変化なし。多くの世帯で収入が増えていず支出を切り詰めるきびしい傾向になっています。

 
 

●スキ間に生まれた新業態
 支出が増えた項目に家具・家庭用品(113%)があります。節約傾向の中で何で?と疑問が湧きますが、コロナ禍で人々が巣ごもり生活を送った3年間に、部屋のレイアウト替えや料理をしたり、オンライン会議のためにインテリアを整えたり、と様々な家具や家事用品の購入を行った結果が消費支出にも表れているわけです。

 

 近頃、はやっている店舗に「デコホーム」や「スタンダードプロダクツ」という新しいショップがあります。この2店舗の共通特徴は母体が有名ブランドの派生業態であること。どちらも生活のスキ間を上手におしゃれに埋めていく雑貨ショップでありリーズナブル価格帯であることです。

 

 「デコホーム」は全国で1,030店強展開する家具店ニトリから生まれたインテリア雑貨店で全国150店が誕生しています。身近な商品をリーズナブルプライスで、駅前やショッピングセンター出店で立ち寄りやすく、中・小規模なので欲しい物が見つかりやすく、その関連商品が同じ棚・エリアに陳列され買いやすい等、母体の大規模店ニトリの弱点をこの業態では強みに変えた店舗展開が高く評価され、都市圏を中心に伸びています。「デコホーム」は昼間はミセス、夕方以降は仕事帰りの人々の立ち寄りがあり客の姿が絶えません。

 

 「スタンダードプロダクツ」の母体は百均大手ダイソーで、300円商品を中心に従来ダイソーより高品質・高デザインの商品をそろえ、環境配慮型商品開発も行い2021年の誕生からすでに100店舗を出店しています。スタートから徐々に店内の見せ方やセンスの良い商品開発でパワーアップし、今ではおしゃれな人のちょっとした日常雑貨に選ばれるようになってきています。ダイソーは「スタンダードプロダクツ」とは別に「スリーピー」という大人かわいい雑貨専門店も展開しており、最近では3業態の組み合わせ変化で出店を強化しており活性化しています。

 

 どちらも時代変化をとらえた人気の新業態です。

 
 

 収入が増えにくい時代、お金の使い方を生活者は工夫しています。安価な衣料品でカッコよく着回すことやストックできる冷凍食品の活用、小物雑貨で住まいの変化を付けたり、お金のかからないお出掛け先を見つけたり、車はシェアカーの利用など、若い世代になるほど生活工夫に長けた人たちが増えて、それに呼応して価値のある業態を生み出せる力ある事業者が勝ち組になる一例です。

 
 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2024年11月号掲載)