不動産フォーラム21
生まれ変わった学校へ行こう‼
●年間450校が廃校になっている日本
全国で2022年までの20年間に8,580校が廃校となり、小学校は約5,600校が閉校と知りました。少子化と耐震問題で、祭りの場や子供の遊び場、災害時は避難場所として町の拠点だった小学校がいつの間にかなくなっているのです。
2014年に「地方創生」が提唱され地方活性化や地方雇用機会創出が推進される中で“廃校を再利用するプロジェクト”が各地で立ち上がり実績を上げています。その中で公募型プロポーザル方式で優れた民間事業者を選び成功する神戸市が注目されています。
●神戸北野の好イメージが凝縮されたプロジェクト
三宮駅から徒歩10分。居留外国人住宅だった北野に明治41年に開校し校舎は昭和6年築の旧北野小学校が民間事業者によりリノベーションされ、2024年11月「神戸北野ノスタ」(3階建て、650坪、7店舗+1ホール)に生まれ変わりわずか100日で10万人超の来館者を迎えています。
訪問するまでは「観光客向けのみやげ館では」と思っていましたが、朝9時に行くと近所のミセスが焼き立てパンを買いに来たり、老夫婦が散歩がてらコーヒーを楽しみに来たりと街の憩いの場になっていました。午前中からノスタ目当てのシニア女性グループや若いカップルなどが増え、2Fのシックなレストランではゆっくりとランチを楽しむグループを見かけ、午後には有名バリスタがいるコーヒー店は満席です。
神戸市から選出された事業者は関西の外車ディーラー企業のグループ会社で、老舗旅館や老舗陶磁器会社の再生など日本の良いものを守り残す事業を手掛けてきました。4億円かけて改装した館はクラシックモダンな上質空間となり神戸山の手スタイルをつくり出しています。
休日には関西圏の集客があり、スタートわずか半年で街に新しい拠点を実現させています。
●小学校が水族館やブルワリーに変身
冬の日だまりの中で親子連れが何組も池で釣りを楽しみパパが大活躍しています。水族館からは若いカップルや小学生連れの親子が楽しそうに出てきます。
こんななじみの遊び場になっているのが神戸市兵庫区に2022年夏に誕生した「ネイチャースタジオ」で、2015年に廃校となった湊山小学校を77年の歴史ある地元工務店が地域活性化の志をもって企画運営に取り組んでいます。
かつて校庭だった場は全て食べられ使える有用植物のエディブルガーデンとし果樹やハーブが育てられ活用されています。直営の「みなとやま水族館」は水槽を子供目線でじっくり観察でき、床にはクッションがあり座ったり寝転んでしまったり楽しめる個性的アクアリウムです。
体育館を利用したフードホールはカレーやタコスやスイーツの店が並んでいますが、程よい採光と植物で居心地バツグン。このフードホールには大型厨房があり、神戸市内の飲食企業のセントラルキッチンとして貸し出し食品加工をしており、効率化の工夫が読み取れます。
館内には学童保育施設・就労支援施設・保育園もあり、旧給食室はブルワリー(ビール工場)に、1階にはハーブショップ(センス良い店)が併設されバラエティ豊かで、バス圏、徒歩圏の人々の “活かされステージ” になっていることがわかります。隣接地ではベーカリーレストラン・高齢者向けデイサービスの新工事が進行中で好調さがうかがえます。
以前、視察した千葉県保田小学校は、物産と宿泊施設で全国屈指の人気道の駅スポットになっていますし、昨年秋に千葉県大多喜町で旧老川小学校を無印良品がリノベーションして宿泊施設にショップやワーキングスペース、図書館などを展開して話題になりました。
小学校は多くの人にとり思い出深い場。古い校舎の再利用を民間の力を生かして進めることは新たな人や町の活力になるはずです。
最後に:『不動産フォーラム21』に初執筆したのは2002年9月です。約23年間、私の記事を読んでくださった皆様に感謝を申し上げます。
(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2025年4月号掲載 最終回)