不動産フォーラム21
渋谷パルコが閉館。 生まれ変わってどんな姿に?
渋谷の商業文化を代表する渋谷PARCOが43年間の歴史に幕を閉じ、8月7日に閉館しました。2年半後をめどに地上20階地下3回、延床面積6万5,000㎡の複合施設として再スタートを切る予定で、商業だけではなく、事務所や文化施設や文化育成施設等のマルチな都市機能がコンプレックスされたビルとなるそうでです。
渋谷PARCOはファッションビルの花道だった
実は我社は渋谷PARCOのご近所にあり、この25年間、毎日渋谷PARCOを見続けてきました。25年前に事務所の移転先を探したとき。「商業機能の充実」「文化発信力」という商業コンサルタントとして必要不可欠な立地特性からこの渋谷の地を移転先に選んだのですが、最も私たちにとって当時魅力的だったのは、渋谷PARCOが目と鼻の先にあるという利点からでした。渋谷PARCOに行けば最新ファッションと最新流行テナントが一目にしてわかるというありがたい存在だったので昼休みにブラブラ、出掛け先からの帰りにブラブラと日々の散歩感覚の中で渋谷PARCOから仕事情報を吸収していました。スタッフがアイディアにいきづまると「PARCO見てきます!」とよく出掛けていましたっけ。個人的には芝居やアートイベントも堪能させてもらい、様々な芸能人・文化人を見かけたPARCOでした。
本当に長い間輝いていたのが渋谷PARCOだったのです。渋谷のヘソでした。
それが、いつ頃からか元気がなくなり、気づいたら私たちが情報収集に渋谷PARCOを選ぶことがなくなり、新宿や表参道や銀座の商業施設を選ぶようになっていました。
昔はセール時に長蛇の列がPARCOを何重にも取り巻いていましたが、最近ではいつセールをやっているのかも気づきにくいぐらいにひっそりした様子になっていました。それを裏付けるように渋谷PARCOの売上げも減少し、2003年には222億円でしたが、2010年は161億円、2015年には153億円と落ち続けてきました。東京山手線沿線に競合商業施設が増加したことや、駅立地の利便性が商業立地として評価される時代になり、駅から徒歩7分の立地が不利になってきましたし、若者層のファッション離れも大きく影響していたのだろうと思います。
新生渋谷PARCOはどんな館に?
この数年間、静かな渋谷PARCOを見てきた我社ですが、出社時の話題になったのがときどき見かけるPARCO前の行列でした。早朝から正面入口で数名の若者が列をつくっているのです。その目的は「ふなっしーカフェ」やポケモン、リラックマ等のキャラクター催事に来館した人々の早朝行列です。「PARCOも客層が変わっちゃうね」と、PARCOのファッション性を評価してきた我社にとっては少々違和感ある朝の光景でした。
さて、2年半後に渋谷PARCOがどんな姿になって登場するのかを期待したいところですが、2020年に予定されている渋谷駅の大開発で百貨店や大型商業施設で買物客の足は止められてしまう可能性が高く、若年層になるほどにモノ消費はネットを中心に移行する時代に突入してきています。駅から歩かねばならない立地のPARCOは不利なばかりのような気がします。我社スタッフの総論では、キャラクターやサブカル文化でこの数年間集客を図ってきたPARCOは、43年前に様々な文化発信をしてきた歴史を生かしてコト発信の拠点化を目指すのではないか、という見通しに至りました。昨年はショールーミング専門のショップを導入してECの先駆け事業を展開したり、将来メインカルチャーとなるサブカルチャーを多様にイベント展開したりという、近年の活動をより具体かつ主力にかえる新しい商業文化施設として生まれ変わるのではないか。モノは売らずにコトだけを売る、日本で初のSCになるのではないか。そんな新生渋谷PARCOの生まれ代わりに期待をしています。となると、またその時には、弊社のオフィス立地がきわめて有効に価値ある場となるわけです。新しい渋谷PARCOに期待!!
(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2016年9月号掲載)