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2018.02.01

不動産フォーラム21

早起きは三文の徳-時差Bizのススメ-

 

朝の通勤時間帯1時間に1日の輸送量の4分の1が集中しているという事実

 毎日の通勤ラッシュは生き地獄のようで、精神をいらだたせた客同士のけんかを時たま見かけることがあります。先日、私はこんな現場に出くわしました。
 ラッシュピークの品川駅に到着した電車から大勢の人々が吐き出されるようにホームに降り立つ中、中年男性と小柄な若者がお互いの胸ぐらをつかみ合っています。怒鳴り合い後に中年男性が若者にパンチを食らわし、その場を離れました。痛そうにした若者が走り出したので男性を追いかけると思ったのですが、いきなり小さくジャンプをして柱に設置してある非常ボタンを押し、消え去りました。瞬時に大きなベル音とともにすべての電車はストップをし、安全確認後の運行回復までに時間がかかり、ラッシュ時の駅がますます人でごった返しました。数分間の、目の前でおきた驚きの出来事でした。
 ある調査によると、都内にある主要17路線で8時~9時の朝ラッシュの1時間への集中率は1986年で平均29.1%だったものが、企業の時差通勤推奨や鉄道会社の輸送量拡大努力により徐々に軽減され、2011年には26.4%にまで下がったそうです。
 とはいえ、1日の輸送量の4分の1が朝の時間に集中するわけですから殺人的ラッシュには変わりなしと毎朝痛感しています。

 

東西線でお得な早起きキャンペーン

 我社のスタッフがこんな(写真1)パンフレットを紹介してくれました。題して「東西線早起きキャンペーン」なるもので、東京メトロが定める期間に早起きをして時差通勤を行うことで、商品券がゲットできるという、わかりやすいキャンペーンです。
 まず参加登録をし、毎朝ICカードをタッチするとメダルがどんどんたまり、そのメダル数に応じて商品券(どこでも利用可なギフトカード)がもらえるというものです。このキャンペーンは特に混雑が激しい東西線区間でスタートした混雑緩和策で、すでに10年間の間にキャンペーン回数や期間の拡大、区間の拡大(西船橋-門前仲町)、ポイント獲得可能時間の拡大等を行い実績を上げているそうです。このキャンペーンがよく考えられているなと感心したのは、西船橋から木場までの11駅でそれぞれの駅用冊子がつくられており、各駅毎の細かな駅の混雑状況を示す一覧表(写真2)が掲載されていること、また乗客を効率よく分散させるために、ピーク直前時間帯はメダル3枚、ピークに余裕のある早朝はメダル5枚、始発から超早朝はメダル1枚と参加者を上手に誘導しています。さらにコツコツと300メダルを貯めた応募者には抽選で10万円がもらえるというWチャンスがあります。
 私は東西線利用者ではありませんが、この「早起きキャンペーン」を知った時に、今までのお堅い鉄道会社とは違った面白そうなやわらかさを感じました。「これ参加してみよう!」と思う乗客はいるはずですよね。

 

小池知事の「時差Biz」がスタート

 実は昨年、小池百合子知事は選挙公約で通勤ラッシュゼロを掲げ、知事就任後の7月から「時差Biz」活動を始めています。あまり知られていないのが残念なのですが、すでに12社の鉄道会社が前述の東京メトロのようなポイント付与、座席定員制列車の運行、ダイヤ改正、独自アプリによる混雑の見える化と誘導、等を行っています。
 今年は働き方改革が新年から叫ばれています。時差Bizのムーヴメントがこれから大きくなっていくことを期待しつつ、自分の一日の過ごし方も工夫が必要だと思います。そういえば昭和の時代には「早起きは三文の徳」ということわざを誰もが知って意識していましたっけ。

 

 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2018年2月号掲載)