不動産フォーラム21
日本でも「フェムテック元年」はじまっています。-女性の性を正面から捉えるムーブメント-
●女性の性をポジティブに表現する店
ラフォーレ原宿の地下階に「ラブピースクラブ」という可愛いShopがあります。店内はイエローとピンクで演出され本や化粧品や雑貨が並んでいるので一見すると今どきのセレクトショップに見えますが、ここで売られている商品は生理用ショーツや月経カップ・デリケートゾーン用ローションやコスメ・プレジャーグッズ・膣トレーニンググッズ等やフェミニズムとジェンダーに関連した書籍が揃っています。
館内をあるく女性たちが何気に立ち寄りショーツやヘルスケア用品を手に取ったりしています。私はこの店を雑誌で知り、“女性の性をポジティブに表現する店”という趣旨に関心を持ち見に来たのですが予想以上の多様な商品が揃っていて驚きました。近頃話題になっている吸水パッドとショーツが一体化されたサニタリーパンツは吸水力が優れていて便利そうです。月経カップは初めて実物を見ました。
20代後半の女性スタッフが丁寧に説明をしてくれ自分が試してみた使い心地も語るのでリアルさが安心をもたらします。棚には世界中の女性たちが開発したバイブレーションやローターが並び、どれもカラフルでセンスの良いデザインばかりで違和感なく手に取れます。「女性が安心で心地よいと感じる魅力的なグッズをそろえました」とその若いスタッフは豊富な商品知識を披露してくれました。
●「フェムテック」が注文されるワケ
「フェムテック」という言葉をご存じですか?フェムテックとは女性の健康課題をテクノロジーで解決する商品やサービスのことで、「female technology」を略した用語です。
男性用コンドームが製造されたのは100年以上前のことですが、女性の経口避妊薬が承認されたのは1960年代。その後男性向けの性に関する商品は多く開発・承認される中で、女性の性はタブー視され男性中心の社会では女性のヘルスケア関連に投資する投資家も少なく長い間停滞した市場になっていました。それがようやくこの数年間で「女性の性」を正面から捉え、痛みや不快を解消したり気持ちよさや楽しさを増すための商品やサービスが次々に開発・発表されています。
前述した「ラブピースクラブ」もまさにフェムテックのためのショップで、1996年からイベントやEC販売を続けていた商品を昨年Shopとしてお披露目し、若い女性たちに関心の輪を広げていく活動をしています。2019年11月、大阪大丸でも「ミチカケ」というフェムテックショップが開業して百貨店の新しい取組としてニュースになりました。
女性の社会進出が進み、SDGsやジェンダーへの意識共有が一般化した今、女性の深層的な悩みや痛みに社会や企業がしっかり向き合う姿勢を取る動きがフェムテックブームを形成していますが、世界人口の半数を占める女性をターゲットとしたこの市場は、2025年には世界全体で5兆円規模の市場になると予想されている熱いマーケットであることも注目のポイントだと思います。
●日本企業も徐々に参入
ラブピースクラブのスタッフが「残念なのは日本製品が少なくて海外製品を仕入なければならないので値段が高い。お客さんは若い人も多いので買えない人もいる」という印象的な話をしてくれました。
しかし、ようやく日本のメーカーも近年フェムテックに気づき始めた様子です。イオンのPB(トップバリュ)では昨年春から「骨盤・骨盤底筋サポートショーツ」を発売し全国350店舗で販売を始めています。また、GUでは吸水型サニタリーショーツを1,490円という破格の安さで販売し品切れする人気商品になっています。ユニ・チャームでも昨年から月経カップの販売を開始。通販大手であるディノスでは「衛生用品・ラブアイテム」のカテゴリーを設け、膣トレ、ラブグッズ、プレジャートイ、ケアコスメ等の商品を豊富にそろえています。
従来タブー視化されてきた“女性の性市場”に対し、参入する日本のメーカーはこれから増えてくるはず。合わせて、フェムテックは若い女性マーケットだけではなく、妊娠・出産・中年期・更年期・老年期の女性のライフステージをトータルに考え市場化する女性のテクノロジーという位置付けなので、今後は出産や更年期に対するサービスや商品も開発されるはずだと期待をしています。
(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2022年9月号掲載)