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2019.12.02

不動産フォーラム21

新しいエアポートのかたち ーチャンギ空港に巨大滝が出現ー

  

 シンガポールにすごい施設ができ話題になっています。それはチャンギ国際空港に4月にオープンした「Jewel」(ジュエル)という大規模複合施設で、40mの屋内世界最長の滝を名物とした施設です。さっそく見学に行ってまいりました。

 
 

●巨大なドームに巨大な滝
 チャンギ空港には4ターミナルがあり、どのターミナルにも案内サインがしっかり設置されジュエルに行くのは簡単です。特に第1ターミナルにジュエルが直結しているので、ジュエル内に各航空会社のカウンターがあり、荷物も含めたチェックインが可能だというのには驚きました。私は第3ターミナルからチューブ型のブリッジでジュエルに向かいましたが、巨大なシルバーのキノコの傘のようなドームが見えてきてワクワクしました。

 

 ドーム内に入ると、いきなり巨大な滝(レインボルテックス)が目前に迫ってきます。円型のドームの中央に名物の滝が天井40mの高さから水柱となって流れ落ち、その周囲を約3,000本の熱帯樹木を植えた植物園(フォレストバレー)が覆い、さらにその外周をぐるりとショップやサービス施設が取り囲んだモールとなる構造です。巨大な滝は圧巻です。時たま流れが止まりモワモワッとしたミストが吹き出し、熱帯植物園のトロピカルシーンを演出してくれたり、夜にはライトアップによるショーが深夜まで展開されロマンチックなムードを盛り上げてくれます。

 

 5層分の高さのある植物園内には階段やベンチ、展望デッキが配置されており、ゆっくり滝のダイナミックな流れを楽しめるはずですが、今は人が多いので、ゆっくり鑑賞は難しい滝の人気ぶりです。
 最上階の5階は滝をぐるりと取り囲んだキャノピパークという有料ゾーンになり、散歩コースやジャンピングネットや迷路等のアトラクションが楽しめる工夫がなされていますが、巨大ドームに巨大滝と植物園を味わった人たちはそれだけでToo Muchのため、子供連れのリピーター利用といったゾーンになっているようで、人影はまばらでした。

 
 

●旅の楽しみ、食の場は大盛況
 地下3階から5階まで約300店弱のレストランやショップが、滝の外周をモール型に取り巻いています。すべてを見ようと思えば、3時間程度の長距離ウォーキングになります。また目的の店に行こうとガイドスクリーンのタッチパネルで店を探し当てても、近道はないので、ともかく“グルリと周る”を楽しむ心の余裕が求められるショッピングゾーンです。それもそのはず、ジュエルに来館する人々は、空港の乗り継ぎ時間を楽しむ人、シンガポールをこれから旅立つ人、地元のレジャー客という客層が主体なので、ゆっくり、ブラブラとジュエルにいることを楽しむお客様ばかりです。

 

 ショップは一般的な店が主ですが、飲食店は高級店からフードコート、カジュアルレストラン、カフェ等、様々なレシピとタイプの店がたくさんあり、中には滝を借景にして食事ができるレストランもあり、飲食店はにぎわっています。従来のチャンギ空港にはたくさんの飲食店がありますがやはり空港の付帯施設の感はぬぐえないものがありました。多少でも時間に余裕があれば空港であることを微塵も感じさせないジュエルのエンターテインメント空間で、“旅のつかの間の食の楽しみ”を味わいたいという意欲をレストランでテーブルを囲むお客様の楽しそうな表情から感じることができました。私も5階テラス型ビアガーデンで緑と滝を眺めつつ、タイガービールを楽しみました。

 
 

●7年連続No.1エアポート
 シンガポールの玄関口であるチャンギ国際空港は年間6,500万人もの利用があり、7年間連続世界No.1と讃えられた空港です。清潔さやスタッフのサービスレベル、乗り継ぎの利便性やショッピング、レストランの充実等で高い評価を得て成功している空港です。各国の空港は国際線着陸料が高額な中、チャンギ空港の着陸料は安価で世界中からハブ空港として飛行機を呼び込みやすくしています。その理由は営業許可料や施設賃貸・サービス料等の航空関係外収益が事業収入の5割を占めるため、着陸・駐機料を安く抑えることができるからで、多くの他国からの訪問者を受け入れ、観光産業を潤わせるという国家戦略が組まれています。今回のジュエルも約1,400億円が投資されたプロジェクトでその効果は大きく、観光客の新たなる需要を生み出しています。

 

 すでにチャンギでは第5ターミナルの計画が進行中とのこと。どんな新世界を見せてもらえるか今から楽しみです。

 
 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2019年12月号掲載)