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2016.12.06

不動産フォーラム21

当店は「お店で見てネットで買う」をおススメする店です。

 

 ときどき買物に行くセレクトショップでの出来事です。レジカウンター前で会計を済ませ商品包装を待っていると、カウンター上にある名刺大のカードに目がとまりました。「お店で見てネットで買う。オンラインストア」と表面に印刷されています。裏面には15ケタの数字が記入できる枠が2列印刷され「7日以内であれば返品可能です」と記されています。

 なじみのスタッフに「これ何?」と聞くと、「ネットショッピングしたい人に、ほしい品の商品番号を書いて渡すんですよ。」との話。
「エッ、お店に来たお客さんにネットで買うための商品をメモしてあげてるわけ!?」
「そーなんです。ちょっとイヤなんですけど、そのためのカードなんです。」
「そんなに店で見てネットで買う人はいるの?」
「結構いますよ。最近は特に多くなりました。いろいろ見て試着もして買ってくれるのかと期待して何十分もかけて接客をしたのに、ネットで買うからと言って帰られるんです。かなりガックリきますよ。」
「そんなに正々堂々とネットで買うと言うものなの?」
「みなさん平然とネット買いを宣言しますよ。」
「だってこんな品番メモまで書いてお客さんに渡しても、この店の売上にはならないわけでしょ?」
「なりませんよ。でもネットでも店でも会社の売上にはなるから会社としては良しなんじゃないですか。」
「なるほどネー。」
「このカード、ちょっといやだからカウンターの端っこに置いてあるんですよ。目立たないように。」
「そうよね。販売のプロとしてはお会計、お包み、そして満足そうなお客様をお見送りしてまでが仕事のドラマだからね。」
「ホントですよ。でも最近はあっさりとネットで買うからと言われちゃうんです。がっかりです。」

 

 気概を持ってファッション販売をしているこのスタッフには残念なことのようですが、私にはつい数年前まで店でさも買うふりをして試着や品探しをしてきたお客様が、ネット宣言を当たり前にできるようになった今や、ショールーミングは困ったものだと言っていた店側が、会社自ら率先してネットショッピングを推薦するようになった今にとても驚きました。こんな短期間で、世の中の買物事情は変わるのですね。

 さらにそのスタッフと話をすると、その会社のサイトで買物をしてほしいのではなく、ホンネはネットショッピング専門会社サイトで買ってもらうことを会社は喜んでいる。理由は、その会社の販売の場合はポイント付与等によるコストがかかるが専門会社のサイトからの買物についてはポイントコスト等がかかってこないのでコストパフォーマンスがよいのだそうです。これもなるほど、の話です。私も本や雑誌などはネットショッピング専門会社の特定サイトで買物してポイントをためていますから、ネットショッピングでもポイントによる顧客の囲い込みは効果大だと思います。そのコストもバカにならないはずです。

 

 こんな世の中の変化を見渡してみると、青山商事が秋葉原にスーツのショールーミング専門店を秋に開店しました。約50坪の小規模店舗に600着のスーツをそろえ、実際のスーツの試着で着心地やサイズを体験し、その場でタッチパネルからネット注文をするというシステムです。また、「CITERA」という男性向けネット通販専門カジュアルブランドでは、新宿に商品をラインナップしたショールーミング専門店を期間限定で開店しています。

 

 衣料品の売れ行きが伸び悩む中、各社がネット&リアルショップの融合で販売チャネルを増やし、消費者はそれを当然のように使いこなす時代が始まっていることを実感しました。

 

 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2016年12月号掲載)