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2024.04.01

不動産フォーラム21

平均年齢30代の都市 バンコク・ハノイ・ホーチミン その①

 
 

 平均年齢30代、消費意欲旺盛で活気あふれる都市がアジアに複数あります。その代表的なバンコク・ハノイ・ホーチミンでエネルギッシュな街や商業を見てきましたので、2回にわたり最新情報をお届けしたいと思います。

 
 

●にぎわい拠点があちこちに誕生するバンコク 
 以前からバンコク商業に注目をしていましたが、4年ぶりに行ったバンコクはさらにパワーアップしていました。昨年12月に「EMSPHERE(エムスフィア)」という延床約60,000坪超(約300店)の大型商業施設が街の中心部に開業し集客をしています。「エムスフィア」はタイの百貨店やSC開発をおこなう大手企業ザ・モール・グループがBTS(都市交通)プロンポン駅前に開発したバンコク新大型SCで、駅周辺に百貨店やSCを開発した同社の3ツ目となる商業施設です。

 

 「エムスフィア」を見て感じたのは“ポストコロナ時代のショッピングエンタメ”というテーマ性です。エントランスからいきなり食‼2層吹き抜けの1階は食・食・食‼すべて食で埋め尽くされています。開放型環境の数々のレストランが並び、スイーツからカフェ・フルコースまでのバラエティ豊かに店が揃えられています。さらにフードコートもあり出来立てを気軽気楽に食べられ、タイの代表的グルメスーパー「Tops」では新鮮な食材を提供しています。

 

 2階には最新コスメブティックが数々店を連ね、日本未進出のブランドもたくさんあります。3階には世界の代表的なスポーツブランドの大型店や高級車のショールーム、さらに上層階には12,000㎡の都市型IKEA(2月末は準備中)と続き、今を代表する消費のキーコンテンツ「食・美・健康・スポーツマインド・居住快適性」が集められています。一般的ファッションを重視する視点がほぼ0のところが斬新です。

 

 2018年2018年11月、チャオプラヤー川の対岸に不動産大手サイアムピワットによって約75万㎡の巨大な「アイコンサイアム」(商業・オフィス・レジデンス)が開発されました。開業当時は不便な地でしたがさすが大手企業だけあり主要BTSより新BTS(ゴールドライン)を敷き、交通便利な地になっています。周辺はタワマンや高級ホテルの開発ラッシュで新しい街が形成されていました。

 

 開業当時、「アイコンサイアム」の巨大モールは最新商業博覧会場のようで3層吹き抜けの巨大ラグジュアリーや上層階で天井から噴水の演出があるゴージャスなレストランフロアがあり、地階には水上マーケットを再現したフードフロア、夜には川でウォーターショーが上演されるというほど最新を集めたショッピングエンタメを体験できました。4年経過した今はラグジュアリーすぎたものや運営上無理のあったものは標準化し、普通におもしろく普通にすごいおしゃれでポピュラーな巨大モールへと成長し、地元市民・インバウンドそれぞれが終日楽しめる商業に代わっていることに好感が持てました。

 

 バンコクは1拠点集中だったにぎわいが都市の複数ヶ所に拠点が誕生し街に厚みが増した印象を強く受けました。

 
 

●巨大さと旬を盛り込んだハノイの最新SC
 ハノイに韓国の大手ディベロッパー・ロッテグループが23年9月に「ロッテモール・ウエストレイク・ハノイ」を開業。ベトナムにおける最新SC(36,000坪超)の大型商業として注目されています。この施設の特徴は何といってもダイナミックでデザインパワーのある商業空間。デジタルサイネージが多用されカッコいいSCです。

 

 しかしハード面ばかりではなくソフト面も工夫がされています。上層階には約300坪くらいの絵本と少年少女向けの本を集めたブックストアや世界のワインとリカーを揃えた大型専門店、IKEA風大型ライフスタイルショップ、シネマコンプレックス、ベトナム初出店のキッザニアもあり、店舗充実型で見ごたえがあります。周辺にはホテルやアパートメント・オフィスビルが開発され、ロッテによる街づくりが進行していました。

 
 

 タイは38歳、ベトナムは33歳という平均年齢の国で、豊かさへの消費は活発です。「モノが売れない」と悩んでいる日本からは眩しいようなショッピング娯楽シーンがあります。次回は、街中のトレンドについてお話しいたしましょう。

 
 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2024年4月号掲載)