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2015.11.02

不動産フォーラム21

寿司のように肉を食す ーユニークな大人欲の発想レストランー

 

 このところ肉食が注目されています。肉好き女子やアンチエイジングとしての肉食、熟成肉ブームに立ち食いステーキ店など、肉にまつわる話題が次々に出てきます。

 

 先日、わたしも肉食の面白い体験をしました。タイトルのとおり“寿司のように肉を1貫ずつ様々な料理法で食べさせてくれるレストラン”に行ってきたのです。

 その肉は宮崎牛で、“和牛のオリンピック”と呼ばれる「全国和牛能力共進会」にて内閣総理大臣賞を連続2回も受賞している国産牛のチャンピオンです。そして、レストランは宮崎が誇るフェニックス・シーガイア・リゾートの中にあるシャラトン・グランデ・オーシャンリゾートホテル。肉食には最高のシチュエーションです。

 

 その店ができるきっかけは、若い頃には200gや300gの肉をペロリと食べていたのに、年齢を重ね経済的に豊かになり美味しい肉が食べられる頃になるとたくさんの肉を食べられなくなってしまったことを残念に思う欲深きミドルやシニアに、寿司屋のように少量の肉を1貫ずつ食べられたら肉好きは喜ぶだろう、という大人欲望発想から生まれたユニークな店なのです。

 

 レストランは1日6客限定。この6人を前にして、熟練シェフがまるで寿司屋の板前のように腕をふるいます。
 まず始まりは2cm角の牛ヒレ肉鉄板焼きが各々に出されますいきなりヒレもインパクトですが、「一番お腹が空いているときにヒレの美味しさを味わう」の主旨だそう。その後、約2時間をかけて12種以上の肉料理が目前でつくられては食し、つくられては食しの“肉旅”が展開されます。その旅は意外性の連続で、千切り大根と牛肉ポロネーゼや県産茄子と牛うで肉の麻婆茄子など楽しいものばかり。最後はすき焼きや黒カレーが登場し、満腹の肉の旅が終わります。「ここまでで肉は200グラムでした。いつもより少なめです。とシェフに言われて、すばらしい味のひろがりに驚きました。
 

 フェニックス・シーガイア・リゾートというと高級リゾート施設として有名で、90年代は一度は行ってみたいリゾートとして憧れの地でした。が、経営不振でオーナーが複数回代わり、シーガイアは閉館し、ホテルも1,000室を経営するために、リーズナブルな価格変更などの工夫をしながら大規模リゾートが維持されています。私も久しぶりにシェラトンホテルに宿泊をして、昔の高級ホテルとは異なり、ファミリーや若いカップル等の客層の違いを感じました。

 

 今、このリゾート地を「大人が楽しめる新リゾートにしよう」という計画が推進されています。高齢化社会だからこそ、大人が集まってゆっくり自分らしく、様々なアクティビティで楽しめるリゾートを目指しているそうですが、その中の目玉として「1日6客しか予約をとらないレストラン」「寿司のように宮崎牛を食するレストラン」という限定性のある食展開をすることにより「なかなか予約が取れない」「どんなことをやっているのだろう」という大人の好奇心や期待感がウワサになり、ある意味、楽しい大人の活性化となるのではないか、という目的を持って1年前に「牛の宮」と命名されたレストランが開店しました。確かに予約は取りにくく、私も2度目のトライで「牛の宮」体験をしました。ということは、2度宮崎に行ったことになりますね、牛の宮に惹かれて。こんな大人の興味の惹き方もウケて、すでに1,600人もの人が肉旅を体験したそうです。

 

 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2015年11月号掲載)