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2017.06.15

販売士

女ゴゴロの接客

 

 接客で “よし悪し” が語られるとき、衣料品の販売事例がよく取り上げられます。それだけ多くの人に身近で頻度が高い買物シーンであり “パーソンtoパーソン=私のために” が求められる場面からなのでしょう。

 

ある日のガールズトーク ( 20代女子の場合 )

 我社の昼休みに20代後半の女子が「接客態度で店のレベルが判断できる」と話し始めました。都内の某繁華街にある若年女性御用達のAファッションビルは接客がしつこいそうです。ラックにかかっている服に手を伸ばそうものならすぐさま近寄ってきて「それ今日はいったばっかのブラウスなんですよぅ。今年はオフショルダーがはやりじゃないですか~。だからこのブラウスも・・・」とトーク炸裂で客の聞きたいことというより自分の知っていることを喋るのでうっとうしい。客が嫌な顔をするとスーっと居なくなるが、しつこいスタッフはまた寄ってきてトークが始まるのだそうです。ともかく空気を読めない若いスタッフが多いのだそう。さらに、同じ街でで全面リニューアルにより館名を変え再デビューしたB館も接客が頻繁にありうるさいそうです。
 それって服好きの熱心なスタッフが接客をしている証拠なのでは?と聞くと「違いますよ。A館は空気を読めない若い子。B館は新人だらけで接客指導が不十分」と手痛いコメントでした。では優れた接客をするファッションビルはどこかを尋ねると、新宿にある人気のファッションビルC館だと言います。C館はA館のように気やすく客に近寄らない。客がラックから服を取り身体にあてた時や何げなく店内に目をやりスッタフを探す身振りをした時に、上手く声をかけてくるのだそうです。たしかにC館は独自のロールプレイング大会を開催し、優秀者には店内に表彰プレートを掲示するほど徹底した接客教育をしている館です。
 さらにわが社の女子いわく、C館はスタッフのファッションセンスが良いのでこの人から服を買いたいという気になるのだそう。また自分が気張ってお洒落をして行くとスタッフからのおススメ枚数が増え、どうでもよい服装の時には声掛けもされず接客も適当に流されるそうで「お金なく買物をしなさそうに見られている」のを肌で感じるそうです。
 だからお洒落をしてC館に行き、センスよいスタッフからいろいろおススメがあって買物をするのが楽しいのだそうです。若い女子の心理ですよね。

 

ある日のガールズトーク ( 30代バリバリ働く女子の場合 )

 この話に30代半ばの女子が参戦してきました。「私はどこの店でも話しかけられるのは嫌い。ともかく自分で選ぶし自分で決めるので放っておいてほしい。何が必要で何が似合うかよーくわかっているから」とのことです。まあ超多忙世代だからこの余裕なき発言も無理はない。声は毎回かけられるとのこと。それは良かったねと言うと「だって私世代をターゲットにしている店にしか行かないので店側は客である事が一目瞭然。たまに休日にユニクロを着ている私に “このニットは今日おめしのスカートにピッタリです” と言われると “嘘つき !!” と腹立ちますよ」とのトーク。これは私も同感です。さらにアラサー女子は「接客のきっかけづくりに客のファッションを褒めるのは問題あり。スカーフの色がきれい、かわいいスニーカーですね、おシャレなバックどこで買ったんですか?なんて言われても答えるのが面倒。果ては、褒めるところがないのか、その髪型がステキです、まで言ってくるスタッフにもイラッとしますよ」とかなりの剣幕です。働き盛りの世代ですからストレートで時間短縮型の接客が一番なのでしょう。30代半ばともなればかなりの消費体験を重ねていますから、自分のお洒落への自信も知識も持っているので接客には手強い相手です。

 

ある日のガールズトーク ( 熟年女子・私の場合 )

 ガールズトークなんておこがましい私は全てを乗りこえてきていますからなんでも楽しいのですが、声掛けをされることがめったにない。何ででしょうか?? 接客が頻繁なはずの某繁華街界隈のブティックでも全く相手にされません。答えは簡単、ターゲット外だからです。面倒な接客をされないので自由に店内を見てまわり、試着の時は複数枚をフィッティングに持ち込ませてもらうとようやくスタッフも「もしや上客になるかも・・・」と気付いてくれいろいろ褒めてくれ、おしゃべり相手にもなってくれ、若い女子にチヤホヤされてすっかりストレス発散ショッピングです。そして長い時間付き合わせて申し訳なかったなあとついつい複数枚の買物をしてしまいます。中には熟年の心をよーく掴んでいるスタッフがいて、小柄な私に「小さなサイズのスカートが入荷したのでお似合いかととっておきました」なんて電話があったりすると「行かなきゃ」と思ってしまいます。これチヤホヤ不足の私世代には効果ある接客カンフル剤なのです。

 

 ガールズトークも世代による心持ちの差がわかり面白い一瞬でしたが、こんなにも接客に対する印象が違うものなのですね。女心は複雑です。

 

 

(記:島村 美由紀/販売士 第25号(平成29年6月10日発行)女性視点の店づくり⑩掲載)