MAGAZINE

2014.03.10

不動産フォーラム21

大人のJ-POP

 

 数年ぶりでCDショップに立ち寄りました。店はショッピングモールの中。記憶にある大型のCDショップはすでになく、生活雑貨屋の隣にチョコンとした50坪程度の小さな店舗となっていました。

 

 TVで紹介された著名なボーカリストAさんのCDを求めて“J-POP”コーナーに行ったのですがなぜかありません。「あんなに有名なのに??」と思いつつ棚を探すのですが、“J-POP”コーナーにはAさんどころか私の知っているアーティスト名はかなり少数でした。腑に落ちぬ気分でキョロキョロしていると隣に“大人のJ-POP”というコーナーがあり、AさんのCDどころか、まさに私の音楽シーンそのままのアーティストから、これは後輩世代だなと思われるアーティストまでしっかり揃った棚になってしまいました。中にはザ・タイガーズ等のグループサウンズからザ・ピーナッツまで混ざっていて、ちょっと「昔すぎるぞ!!」という気もしました。

 

 さて、会計時にレジのアルバイトらしいロック系女子に「大人のJ-POPってどういう意味?」と聞くと、「40代以上の楽曲を集めています」との答え。お客様の年代別になってるのかを聞くと「そーです。すべてをJ-POPにすると大人の人が迷うのでわかりやすくしたんですよ」なるほど、迷ってウロスロする私のような熟年層のために“大人のJ-POP”コーナーをつくってくれたのですネ。ありがたいけど気分は複雑です。
 「じゃSMAPはどこにはいるの?SMAPももう40代だよ?」と聞くと、ロック嬢は涼しい顔で「SMAPはジャニーズコーナーです!」との答え。でも80代の母が大好きで、先日は瀬戸内寂聴さんもコンサートに行ったと言っていたし、私の50代の友人も追っかけをやっているEXILEはどこなの?とおばさんの素朴な疑問にロック嬢はEXILEは単独コーナーがありますよ。もしEXILEの人気がなくなったとしてもJ-POPに入るでしょうねえ」の答え。じゃーミーシャは?ドリカムは?と聞きたくなったのですが、そこは大人ですから「そうなんだ……大人のJ-POPなんていいネーミングつけたのネ!!」などとにこやかに笑いながらCDショップを後にしました。

 

 さてその後、どこに行ってもJ-POPとその他をどのように分類しているのかがとても気になる日々を送っています。都内某CDショップは写真にあるようにJ-POPに対し“J-SONGS”、さらにAKB48等は“iPOP”(アイドルポップ)という分類になってしまいました。ちなみに、JALの機内オーディオでは“Jポップトゥデイ”に対し“Jポップメモリーズ”とあり、各社各店苦心のネーミングがつけられていて面白いです。

 

 ある時、銀座の老舗レコード店社長と話したら「カセットテープは演歌を中心にした品揃えを今でも充実させています。全国からわざわざこのカセットテープを買いに当店までお越しくださるお客様がまだまだ大勢おられます」との話がありました。また前述の“iPOP”の店では「来店の多くは40代以上か小学生以下。“iPOP”は小学生がお小遣いでAKB48のCDを買いに来てくれますよ。40代以上はもちろんCD購入で、ネット配信に不慣れな人たちです」との話しでした。

 ウーン。何となく認められてないような、現役でないと烙印を押されたような微妙な気分ではありますが、素直に“大人のJ-POP”はなかなかセンスの良いネーミングで気に入ったので、最近では友人達と「○○さんはJか大人か?」なんてクイズで遊んでいます。

 

 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2014年3月号掲載)