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2017.03.01

不動産フォーラム21

変わる葬儀、変わるビジネス

 

 知人の葬儀に参列して驚きました。祭壇の生花が豪華かつ絢爛で、葬儀というよりパーティのようにバラやシンビジウムなど華やかな原色のお花が遺影を飾っていました。
 葬儀には白菊が定番と思っていましたが、テレビで見る芸能人の葬儀にも色のあるお花が使われだしたなあ、と気付いたことがありましたので、葬儀スタイルもずいぶんと変化をしてきた昨今です。

 

競争激化の生花業界

 高齢化社会で日本の死亡者数は2015年で129万人あり、年々1%の穏やかな増加傾向にあります。それに連動して葬儀件数は3.6%増、葬儀業売上も3.7%増の1.5兆円となっていて、今後も高齢化は進みますので市場は拡大傾向が予測されます。先日テレビを見ていたら、住宅メーカーのお洒落な新CMかと思ったものが葬儀会社のCMだったので意外に思いました。葬儀会社が全国ネットでCMを流すなんて今まででは考えられない時代でしたが、データが物語るように市場が活性化しているわけですから業界のPR活動も活発になってしかるべきなのですね。
 葬儀件数増加に伴い業界では競争が起こっています。昔から葬儀社といえば地域密着型のビジネスで、商店街のはずれに“葬儀屋さん”があり馴染み感覚で対応してくれるイメージでしたが、今は異業種からの参入や低価格パッケージを売りとしたフランチャイズチェーンの出現やCMを流せるような大手の参入があり、業界全体は再編時代に突入しているそうです。
 私の友人に首都圏で老舗と知られる生花会社のお嬢さんがいますが「会社が苦しい」と悩んでいます。聞くと前述したように葬儀業界の競争激化に伴い祭壇を飾る生花も増加傾向になるはずなのですが、消費者の志向で家族葬や密葬というスタイルで大きな葬儀をやらない人が増加したこと、葬儀業界の再編で大手葬儀会社やフランチャイズチェーンなどは生花祭壇業務を内製化するため従来型の営業では生花業務契約が取りにくくなっていること等、葬儀関連業界の動向が生花業界にも波及しており、老舗といえども葬儀の生花需要を取るためには厳しい競争を勝ち抜く工夫が求められる時代になりました。葬儀費用の3分の1が生花に充てられるそうですから、ここに目をつけるライバルも多いのでしょう。テレビで見た印象的な大手葬儀会社のCMが私の友人にも影響する業界動向だったわけです。

 

仏具店は街の雑貨屋

 私の住む街に仏具販売大手H社の小さな店がオープンしました。きれいで明るい店づくりなのではじめは何屋なのかがわからなかったのですが、看板を見てあのH社なのかと驚きました。しばらく仏壇には縁のない私ですが、物は試しと店を訪ねました。「あれ?仏壇らしい仏壇がないぞ!」というのが第一印象。売られているのは和モダンデザインの小さなBOXという雰囲気の家具でした。日本製では20万円台~、中国製では10万円台~というお手頃価格。15年前に父が亡くなり仏壇を購入した時の記憶では比較にならないほど、カジュアルでラフな売り方と商品でした。
 さらに店頭にはアロマグッズや縮緬素材の人形、キャンドル、ドライフラワーアレンジメント等が並び、まるでお洒落な雑貨屋さんです。
 中でも興味深い商品はメモリアルジュエリーというシルバーや18金、プラチナでつくられたネックレスです。一見、センスの良い普通のネックレスなのですが、ペンダント部分に遺骨を入れられる仕組みになっていて、故人への想いを身に着ける手元久用品として販売されています。2万円~30万円台まで様々なジュエリーが品揃えされていました。
 このショップは仏壇販売大手H社として、今後、人の集まるショッピングセンターや街中に出店を進めていく新業態で、マンション居住者や新築洋風住宅に向けた祈りスタイルを提案していくそうです。商品の中にはペット供養の品々もあり客層の拡大を狙っていることがよくわかりました。
 高齢化社会は多様な業界に変化を生んでいるものですね。

 

 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2017年3月号掲載)