不動産フォーラム21
増える訪日外国人 新たなインバウンド消費が起こる。
●スクランブル交差点が渡りにく~い‼
秋の行楽シーズンで観光地は盛況です。国内では「全国旅行支援」が導入され抑圧されていた人々の気持ちが解き放たれたように新幹線も飛行機も混んでいます。
さらに10月11日以降、新型コロナウイルスの水際対策が大幅に緩和され入国者数の上限撤廃や個人旅行の解禁など、外国人の受け入れがほぼコロナ禍前の状態に戻り訪日外国人観光客が増加傾向にあります。渋谷では名所化した駅前スクランブル交差点が外国人の撮影スポットとしてコロナ禍前のようになっています。日本人だけだと“無秩序の中の秩序”的な動きで凄まじいカオス状況でもスイスイと渡れる交差点なのですが、外国人が増加すると交差点は無法地帯と化し、駅前広場にも大勢の人がたむろするようになってきてインバウンド増加の実感を持つこのごろです。
コロナ禍前の2019年の訪日外国人旅行者は3,188万人で年間4兆8,000億円の消費額をもたらしましたが、2021年の訪日客数は24.6万人で消費額は1,208億円と激減したので、円安が追い風にもなり訪日外国人が増える今は日本経済にウェルカムな状況です。
●若いインバウンドの新しいコト消費
浅草に出かけ浅草寺や仲見世や周辺エリアをまわると、日本人より多くの外国人観光客の姿(ニュース等にある雷門前のあの様子)がありました。この中でとても特徴的なのは若い外国人(主にアジア圏)の多くが着物スタイルを楽しんでいることです。女性は好みの着物と帯と髪飾りに和装バッグと草履で全身を演出し、3人~4人のグループで境内や商店街を闊歩しています。カップルは男性が羽織姿で女性もレース地(寒そうでした)の着物、襟元にはパールの飾りやフリル付き半襟でベレー帽を被った印象的なキモノファッションでおみくじを引き写真を撮っていました。男性3人組も着物姿に京劇のような仮面をかぶってはしゃいでいました。
着物の作法としてみるとゾッとするほど変な着物の着方なのですが、一種のコスプレを旅先でその国の文化に触れる的に楽しんでいる若者としてみるとほほえましく思えます。商店街を一周したかわいい3人組女子が、その後昼間から営業している居酒屋に入り和食文化を楽しむインバウンドのコト消費も目撃しました。
富士山エリアは訪日観光客に最も人気のスポットで河口湖がその入口ですが、ここも外国人観光客でごった返していました。中でも目を引いたのは若者がスイーツShopやパン屋に寄り人気商品を買って店外で食リポをしている姿です。例えばパン屋の前ではカツサンドの箱を開けながら一口パクっと食べ中身をしげしげと見ながら「なかなかジューシーなポークカツでソースも濃厚‼キャベツがはさまってますよ、おいしい‼」と撮影担当友人のカメラに向かってリポートしています。(言葉はわかりませんがそんな素振りの話し方でした。)
別のカフェではクリームのかかったシフォンケーキをフォークでサクッと切り取りパクリと食べながら「抹茶の香りとクリームの甘みが…」と説明している風の女性が仲間のカメラで食リポ動画を撮っていました。そば屋では甲州名物「ほうとう」の食リポも見かけましたが、さすがにほうとうを何とリポートしたのかは想像しにくかったです(笑)。従来の旅先で美食を味わうから食のリポートをして発信するというアクションは、ネット時代ならではの旅の奥行を感じさせるものがあります。
●円安で爆買いも復活
渋谷パルコ前には巨大な袋を持つアジア系外国人の姿を頻繫に見かけるようになりました。パルコ内のキャラクターショップでの爆買いのようで、コロナ前の爆買い姿と同じです。
銀座や新宿の中古ブランドショップではオーストラリアや台湾、韓国からの訪日客がシャネルやエルメス、ルイ・ヴィトン等の中古バッグや高級時計を買う客でにぎわっています。日本の中古品は扱いが丁寧で質が良い、円安で安価、種類豊富、という理由から日本の中古市場に注目が集まり数百万、数千万の爆買いが生まれ大手ショップでは在庫不足になりかかるといううわさも飛んでいました。
景気対策が望まれる日本のきびしい経済状況の中で、訪日外国人のインバウンド消費と日本人のお出かけ機運の高まりに期待大のこの頃です。
(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2022年12月号掲載)