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2017.06.01

不動産フォーラム21

地道な商店街活動-渋谷公園通りの場合-

 

 地元の話で恐縮ですが渋谷公園通商店街が地道な地域活性化の努力を続けています。
 この商店街では振興組合をつくり毎年ゴールデンウィーク期間に花をテーマにしたイベントを行なってきましたが、今年は「第1回全日本渋谷公園通りガーデニングコンテスト」と銘打ち、公園通り沿いの花壇を造園業者20社が参加してそれぞれの芸術的花壇に仕立て上げ、4月27日から5月いっぱい展示されています。どれもプロの作品ですから見応えのある花壇で、装飾は季節の花草に流木やミニベンチやひよこの人形など面白い組合せ演出を行い20作品を見て回れます。その中でも「都会の森」という作品がコンテストで最優秀賞となりましたが、小さな花壇の中に田んぼやめだかの泳ぐ池を再現してミニチュアワールドをつくり往来の人の足を止めていました。公園通りはNHKへの道でもありますから表彰式が行われた5月2日にはNHKの首都圏ニュースで紹介され多くの人の知るところとなりました。

 

 実はこの商店街の振興活動は昔からメディアに取り上げられる機会が多く、知名度あるイベントには年末のイルミネーションがあります。以前はたばこ会社の協賛等があり毎年美しいイルミネーションが12月の渋谷の夜を演出していましたが、長引く不況による協賛企業の激減などでイルミネーションも「これがイルミネーション!?」というほど地味なものになってしまった数年間が続きました。しかし昨年末は公園通りから代々木公園のケヤキ並木までの750mを約55万球の青色LEDで照らし出す「青の洞窟 渋谷」というテーマのイルミネーションが展開され街は盛り上がりました。当然NHKを始めとした多くのメディアにも取り上げられ全国的に有名となり期間中は多くのカップルや親子連れで夜の公園通りはにぎわいました。このころ、地方出張に出ると「公園通りはすごいですね。どんな雰囲気になっているのですか?」と多くの方に声をかけられましたが、報道を知らない私は答えに詰まりました。正直に言って55万球のLEDに照らされた公園通りは真っ青な居心地があまり良くないストリートになっていたからです。しかし昭和時代に一世風靡した“公園通り”は平成時代以降にすっかり静かになり若い世代には“公園通り”という名称すら知られなくなっていた昨今、この商店街の努力により通りが話題になったのですから、地道な活動努力は称讃できるものです。

 

 もうひとつ、渋谷では今年始まったプレミアムフライデーに合わせて、4月28日(第3回プレ金))にシブヤ大掃除パーティーなるイベントが開かれました。主催は渋谷区観光協会とプレミアムフライデー推進協議会ですが、もちろん公園通商店街振興組合を始めとする渋谷の7つの商店街が後援する地域活性化イベントです。4月28日プレ金で早く仕事を終えた人が渋谷に集まり、街でゴミ拾いをした後に福引で商品やクーポンをGETし、渋谷界隈のカフェやレストランやショップでクーポンを使って食事や買物を楽しもうという渋谷ならではのプレ金活動でした。
 初めてのイベントでもあり、年度初めで多忙な上にゴールデンウィークの直前という日程から、主催者側は元気いっぱいでもやや集客力に欠けるイベント感は否めませんでしたが、お話ばかり先行するプレ金に対し渋谷では街を挙げて取り組もうとする姿勢は、地元民としてナイスだと思います。

 

 パルコの建替え工事、20年続いたGAP日本1号店の閉店、アルマーニエクスチェンジの閉店、渋谷区役所と渋谷公会堂(渋谷C.C.Lemonホール)の建替え工事と、このところ渋谷公園通りは集客核がない状況が続き通り沿いに空き店舗がチラホラ目立つようになってきました。おそらく新パルコ開館(2019年予定)、区役所竣工(2018年予定)までは厳しい状況となるでしょうが、地道な商店街活動に応援をして公園通りの生まれ変わりの日を待ちたいと地元民は考えています。

 

 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2017年6月号掲載)