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2024.03.11

販売士

喜色満面の人たちを生むキラリ要素とは?-渋谷の場合-

 
 

 誰もが多様な消費を体験できる今の日本では楽しそうに嬉しそうに買物をする人を見ることが少なくなりました。美味しいグルメもお洒落な最先端ファッションも日常のワンオブゼムな消費シーンで“特別な体験”にはならず、表情が硬い人たちが多いように感じます。

 

 ところが最近、喜色満面の笑みの人たちを見かけます。その場所は渋谷。今回は「キラリと光る店づくり」ならぬ「キラリと光る街」についてお話しいたします。

 
 

●笑顔がいっぱいハッピーステージ
 「東京中で一番嬉しそうな顔の人がいるのはどこでしょう?」とクイズが出たら「渋谷のスクランブル交差点」と答えられるほどインバウンドの人々が楽しそうに交差点に集まっています。彼らは横断せず滞留し、歩行者と高層ビルや大型サイネージを背景にグループや家族で記念写真や動画を撮り、ニコニコ顔で「すごいよSHIBUYA‼」「ハッピーSHIBUYA‼」の表情が豊かです。

 

 このインバウンドの人たちは積極的に街を楽しんでいます。ラーメン屋の行列やパンケーキ屋の行列は、真冬の寒さも気の遠くなるほどの夏の暑さもものともせず待っている間も期待に胸を膨らませ談笑し楽しそうです。センター街入り口に24時間営業の居酒屋が昨年秋にオープンしました。朝から飲酒する人はいないだろうと思ったのですが、通勤時間の8時や9時に店の前を通りかかるとインバウンドの熟年夫婦やファミリー、男女グループがビールに焼き鳥を食べ楽しそうです。またコンビニの人気も高く、珍しそうにおにぎりやスイーツを買って店の前で試食会を開く人たちも多く見かけ「ONIGIRI美味しい‼」と満足顔。こんな様子が渋谷の街の風景のひとつになっています。

 

 さらにこの人たちは東急ハンズやロフトへも足を延ばし日本の雑貨文化を体験しています。特にロフトはインバウンドを意識し、メインフロアでは夏に風鈴やミニ盆栽やうちわを売ったり冬にはだるまや招き猫などの縁起物を売ったりしています。それも外国人うけするデザイン商品を上手に集め、編集し、手に取りやすい構成やポップで興味をわかせる演出をしているのはさすがにロフトの販売力だと感心します。海外では日本の文房具は優れものだと評価が高いそうですが、ロフトやハンズの文房具売場は超人気スポットでインバウンドの若い世代の人々が集まっています。日本人でもこれらの売場は品揃えの充実を実感しますが、外国人にとっては宝の山のように見えるのではないでしょうか。

 

 メイドインジャパンの質の良さでいえば日本のスポーツブランドのオニツカタイガーやデサント、モンベルの大型ショップが渋谷の街に点在しているのでインバウンドの買物目的のひとつになっています。

 

 また渋谷のサブカルチャーショップの存在も見逃せません。渋谷パルコにはJUMP SHOPやCAPCOM STORE TOKYO、Nintendo TOKYOやポケモンセンターを集積し、新商品販売日にはインバウンドや日本人の行列がオープン前からできサブカルのメッカを証明するほどです。

 
 

●キラリ要素はなにか?
 渋谷の街の何がインバウンドの心を捉え、楽しそうに嬉しそうに人々が街を回遊しているのか、そのキラリ要因は3つあると考えます。

 

 1つめは他の都市にはない唯一無二の景色がある事。高層ビルや大型サイネージは他都内でも存在しますが、渋谷の世界中が驚くスクランブル交差点は世界に1つの名所になっています。多くの人が注目する“唯一無二”は街でも店でも強い集客装置です。

 

 2つめは街の中に複数のゾーンが分かれて存在する事。渋谷はけして大きな街ではありませんが、全てのものが駅前に集中しているのではなくあちらこちらに点在をしてゾーンをつくっています。インバウンドの人たちはスクランブル交差点からブラブラ歩いて人気のラーメン屋やパンケーキ屋に行ったり、明治通りを進んでスポーツショップを探したり、公園通りの坂をのぼってロフトの雑貨やパルコのサブカルチャーを楽しんでいます。駅からその人気スポットまでの道沿いに人通りをいかした新たな店も誕生して、面白さが点から線にさらに面に変わっていくというテーマをもった広がりが街の楽しみ方を深めているのです。店舗でもテーマを設定しゾーン(レイアウト)構成をわかりやすくつなげていくことが来店客の関心の深さをつくっていくはずです。

 

 3つめは質ある専門性。渋谷にはメイドインジャパンのスポーツブランドや日本のサブカルチャーショップ、優れた食文化を味わえる飲食店やコンビニエンスストア、そして海外のラグジュアリーショップもバラエティ豊かに揃っています。どれも世界が認めた本物、日本が生んだ本物です。ネットで手軽にショッピングができる時代だからこそリアル店舗は質と専門性にこだわらないと生き延びられません。

 

 インバウンドの人たちが渋谷を訪れるとこんな3つの要素が相まって街に独特な雰囲気を醸し出し「何かありそうな期待感」「特別な事を体験したい好奇心」を感じさせ、それがワクワクの喜色満面を引き出し、キラリと光る街になっているのではないでしょうか。満面の笑顔で渋谷を楽しむ人々の様子を見て、こちらも嬉しい気持ちになりました。

 
 

(記:島村 美由紀/販売士 第52号(令和6年3月10日発行)女性視点の店づくり㊲掲載掲載)