MAGAZINE

2018.01.04

不動産フォーラム21

冬の光の風物詩-イルミネーションさまざま-

 

 年末年始は1年間で最も華やかなシーズンですが、街のにぎわいに一役買うイルミネーションはすっかりこの季節の風物詩となり定着しました。我が社のある渋谷でも公園通りは以前からイルミネーションの演出があり華やかでしたが、2016年から「青の洞窟イルミネーション」が始まり今年も街が幻想的雰囲気に包まれています。

 

イルミネーションは船の出港祝いが起源

 イルミネーションランキング1位は有名な「神戸ルミナリエ」、2位は三重県桑名市「なばなの里イルミネーション」、3位はさがみ湖リゾートの「さがみ湖イルミリオン」ですが、関東圏で人気のある丸の内イルミネーションは10位、青の洞窟は11位、本家本元的イルミネーションである表参道イルミネーションは15位なので意外と知らない間に新しいイルミネーションスポットが全国に誕生して人気を集めているようです。
 ではイルミネーションはいつどこで始まったのかを調べてみると、日本におけるイルミネーションは1900年4月に神戸沖で行われた観艦式の時、夜間に沖合の艦がひかり海面にその姿が反射して人々を驚かせたことから始まったそうですが、その後東京や大阪で行われた明治期の勧業博覧会で、電燈をつけたイルミネーションが人々の目を奪ったと記録されています。むかしからイルミネーションは“集い祝う祝祭”の演出と考えられていたわけですね。
 そんな意味を裏付けるように、近年のイルミネーションイベントの開催時期を調べてみると、バブル経済が終焉した1990年代から表参道イルミネーション(1991年)、神戸ルミナリエ(1995年)、OSAKA光のルネサンス(2003年)、つくば光の森(2005年)が地域イルミネーションとして始まり、不景気や震災で元気をなくしてしまった都市や街に人の活気を取りもどし、みんなで集まろうという趣旨の光の祭典を始めた記録が残っています。今はこのムーブメントがさらに拡大し、都市や地域だけではなく公園や遊園地等でも冬のにぎわい演出として力を入れた光のイベントが全国各地で華やかに行われるようになりました。

 

コンビニと青の洞窟の関係性

 「人を集める光の祭典の集客効果はいかに?」とすぐに現実的なことを考えてしまう私ですが、渋谷の様子をお知らせいたしましょう。「青の洞窟イルミネーション」は第2回を迎え、初回の昨年より集客効果は上がっています。
 このところ渋谷はファッションビルの閉鎖や駅の大工事が行われ、ハロウィン以外は人通りが減少傾向にあったのですが、イルミネーションが始まった11月下旬からはにわかに人が増えており、それも久しく見かけることが少なかった若者カップルが手をつなぎ肩を寄せ合って青く光るイルミネーションの下をロマンチックに歩いています。
 何年も渋谷からは消えていた若い人のデートシーンは、なかなか初々しく楽しそうでよいものです。そしてインバウンドの人たちも日本の旅を楽しんでくれている姿がたくさんあります。
 こんな人の出だったら公園通りのカフェやレストランはさぞ混雑しているだろう、と思いきや、残念ながらガラガラ。いつもの飲食店の様子と変わりません。「近頃のカップルはカフェでお茶する文化がないんだよね。おれ達のころはデートと言えば喫茶店で待ち合わせだったし、お茶しない?がナンパの声掛け定番台詞だったけど、いまどきの若い子は生まれた時からファーストフードやスタバが当たり前で不景気世代。カフェでお茶文化は年寄りだけだ」と近所のカフェオーナーは嘆いています。人手はあるが地域にお金は落ちていかないのが若者を集める渋谷の痛いところですが、公園通り沿いのコンビニではあたたかい飲料やおにぎりやスナック菓子とホカロンが好調な売れ行きで、夜食を買いに行ったスタッフから「おにぎり売り切れでした」と報告がありました。
 かたや大人層を集める「丸の内イルミネーション」は例年、見学に街を訪れる熟年カップルやグループもあるそうで、知り合いのイタリアンレストランではイルミネーション期間の約3ヶ月間は年末年始の予約も含めて売上が上がるシーズンになっているといいます。むかし丸の内のビジネスマンやOLだったリタイア層が懐かしんで古巣の光の夜景を楽しむ会もこの時期ならではの予約が入るとか。まさにこの人たちにとっては年に1度の小さなお祭りなのですね。

 

 大人層と若者層ではイルミネーションの楽しみ方も違いますが、「光が集める人のにぎわい」には価値があります。特に近年は、太陽光や風力の自然エネルギーにより発電されたグリーン電力が積極的に活用された“エコイルミネーション”が実現されるようになりました。地球環境に配慮しつつ、冬の風物詩となったイルミネーションを今冬もロマンチックに楽しみましょう。

 

 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2018年1月号掲載)