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2022.04.01

不動産フォーラム21

今どきの食品感覚満載の店  -注目スーパーに見る食の時代性-

  

 全国のスーパーマーケットの2021年売上高は13兆2,134億円で、前年比2.3%増、前々年比3.2%増と2年連続のプラスとなり街のスーパーマーケットにはお客が集まりにぎわっています。先日「若いファミリー層をターゲットにした商品開発を注目スーパーあり」の評判を聞き、早速視察に行ってきました。

 
 

●若年ファミリー狙いはスイーツに惣菜 
 注目スーパーは埼玉県和光市にあるヤオコー和光丸山台店です。
和光市は東京都練馬区と板橋区に隣接し池袋に19分、有楽町に41分で出られるベッドタウンで、研究・研修施設が多くあり年々人口が増え続けています。39.6歳、生産年齢人口(15~64歳)割合71.6%といずれも埼玉県のNO.1で若々しさを誇る街です。

 

 昨年10月にオープンしたばかりのヤオコー和光丸山台店は1階に食品スーパーのヤオコー(約830坪)、2階に無印良品(500坪)やクリニック等が入ったガラスウォールの明るい建物で、駐車場は店前敷地でとめやすくストレスがありません。スーパー入口はあか抜けたカジュアルな雰囲気でちょっとワクワクする感覚があります。それもそのはず、写真のとおり店内は鮮やかな色彩のグラフィックで演出され照明もつり下げ型の間接照明、高さを抑えた低い什器で見通しが良く店全体が今どきのおしゃれなモダンデザインにまとめられています。

 

 さらに楽しくなるのは、入口の左手は色とりどりのフルーツ売り場、右手にはガラス張りのピザ工房と生スイーツの冷蔵ケースが並び、夕食の支度はさておきケーキやフルーツが甘党ごころに直球にささってきます。近年どこのスーパーでも力を入れ惣菜売場がこの店でもとても充実しています。主にヤオコーのオリジナル惣菜やお弁当で構成されていますが、ボリュームもあり安く気が利いた商品ばかり。例えばカボチャサラダに生クリームが練りこまれていたりクリームパスタにキノコとチーズがたっぷり載せられていたり、しゃれたランチパックの中身がローストビーフ丼だったりします。それはデパ地下で売られている高級惣菜や惣菜専門店で見かける商品の雰囲気に酷似していてビジュアライズされた美味しそう効果を視覚的に演出されたオリジナル商品群となり、来店客の目線をガッツリつかんでいました。

 
 

●圧倒の冷凍食品群
 近年、冷凍食品の進化が著しく様々な商品が開発されスーパーの冷凍コーナーが拡大傾向にあります。時短や簡便さを求める共働き世代や単身者・高齢者世帯でも冷凍食品の需要が高まり、2020年の家庭用冷凍食品は3.748億円規模と増加の一途をたどっています。これを実証するかのようにヤオコー和光丸山台店の冷凍食品売場はすさまじい商品量が陳列され、20代~40代をボリュームとした若年ファミリーのニーズ掘り起こしとしてヤオコー最大級の面積となる圧巻の冷凍食品売場となっていました。

 

 餃子や揚物等の定番冷凍品から菓子・パン・野菜、ワッフルやシュークリーム等の生スイーツも冷凍、アイスクリームの多種多様な品揃え、ケーキトッピング用の生クリームも冷凍されており珍しい食品が盛りだくさんでした。これだけのスペースと品揃えの冷凍コーナは初体験で「よくぞ集めた」と感動したほどです。実は入店時に入口で買物かごのそばにアルミ製の保冷袋が準備され「店内でお使いください」とあり「?」と思いましたが、この圧巻冷凍食品群のための配慮だと知りました。

 

 仕事柄、いろいろなスーパーマーケットを見てまわりますが久しぶりのワクワク視察で、帰路で同行スタッフと「なんだかテンション上がったよね。楽しかった‼」とおしゃべりに花が咲きました。若年ファミリー狙いと紹介された店ですが、そうとは言えません。“食好き““料理好き“の人であれば、だれでもが気分高揚する商品開発力・品揃え努力・見やすい陳列工夫・デザイン力ある店内環境等の総合力が店の個性となって「新しい店・面白い店」として私たちに迫ってくるエネルギーを持った店だと感じました。

 

 特に高齢者だから和惣菜・ハイカロリー惣菜は揚げ物という既成概念で限定的な提案をする他スーパーに対し、ヤオコーでは「工夫した美食の演出」という創造性が世代を超えて「買ってみよう、食べてみよう、作ってみよう」というグルメマインドが刺激される食の優良店です。“一億総グルメ時代“老若男女の今どき食品感覚が満載された売場体験でした。

 
 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2022年4月号掲載)