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2016.06.22

繊研新聞

人口構造と商業の関わり 大人時代の商業を工夫する!

 

 今の日本は①人口減少②高齢化③単身世帯増加の三つの人工構造変化を着実に歩んでる。人口減少による消費支出のマイナスは商業に大きな影響を及ぼすが、全てが①によるマイナスではなく②や③による新消費シーンが生まれる可能性を秘めている。例えば、人口減少により自動車・食糧品・衣料品は消費額の減少が周知だが、高齢化で一般衣料からレジャーやスポーツ時の機能性衣料の需要や、単身向けの個食対応食品や少量ぜいたく食品へのニーズなどが生まれてくる。

 

ちょい寄り買い物
 単身世帯では外食利用が多く飲食店にはチャンスだが、より高齢化が進むと外食より食事宅配というサービス事業が拡大される。3人以上の世帯から、2人、1人の世帯へ移行する時に家具や家電、不動産の新需要が生まれる傾向もある。そのような人口構造の変化がもたらす消費品目を整理してみると、掲載の表のようなマトリックスになった。今後の商業はⅠⅡⅢブロックを意識して工夫を凝らしていくことが大切だと考える。
 さらに人口構造変化を商業施設立地で考えると、高齢化や単身世帯化で消費地の変化が予測される。近年、商業施設の大型化が注目され、郊外立地に2~3万坪(6万6,000~9万9,000㎡)という売場面積のファミリー集客の大型商業開発が促進されてきた。しかし、ある調査では、子育てが一段落した40代以降から同じ市町村内にある商業利用が増え、60歳以上では顕著になるという。消費量・時間節約・体力の視点から見て当然だ。最寄りの場所や公共交通機関の利便が良い施設利用が増え、単身世帯化では通勤や外出時の立ち寄りがしやすい場所への買い物ニーズが増え“わざわざ買物からちょい寄り買い物”の可能な立地がクローズアップされる。駅前商業で後発のSCや駅ビルに主位の座を奪われ苦戦する商業施設や、20~30年前に勢いのあった今では小規模と見なされるGMS(総合商売業)などがまさに最寄で便利な大人時代の商業施設立地として再生できる可能性を示している。すでにGMS事例で、イオングループが立地の良い、古い量販店を新商業として2013年からリニューアルを始めた。

 

大人世代が上顧客に
 食品は、個食対応の生鮮や惣菜の売り方が基本だ。今後改善が必要なのは、食品スーパ―のサインと陳列ではないか。店内をデザイン重視で整然と陳列、また近頃は食品パッケージの均一化で、どの棚に何が売られているのかの勘も働きにくい。サインも、天井や棚袖に突出ているがコンパクトで判読しにくい。視力の衰えや新しい物に勘が働きにくくなる世代への陳列とサイン計画は今後の課題であろう。
 アパレルでは、大人世代が上顧客になる可能性が大だ。若年層より大人層は気に入ると常連になりセット買い客になる。30代狙いのカジュアルテイストを持った店づくりをすると40代~60代のおしゃれ層は必ずついてくる。ポイントは開放的な間口と店装とサイズに余裕があるスタイリングを店頭で展開すること。大人層にとってサイズは不安要因。「安心してください」を店頭で見せることで入店しやすさは作りだせる。接客でも当たり前の商品説明から離れることも大切で「きれいなネイルですね!」「ステキなバッグですね!」という“褒め褒め作戦”を私はすすめている。女性は年齢を重ねると他者から褒められる機会が減少するもの。“自分が認められる心地よさ”から大人層とのコミュニケーションを始めるのも有効であろう。加えて老眼にとって服に付く小さなプライスタグは見えにくい、すぐわかる箇所にわかる文字でが鉄則。
 雑貨類では、靴やバッグが注目だ。年齢と共に靴に歩きやすさを求めたコンフォートシューズやウォーキングシューズの大人層売り上げが高い。私の関わるSCでは、4店舗の靴屋が週末に日売り合計200万円超になる。男女共に大人層の支持が高く、気に入ると2足買いも当たり前。バッグはセカンドライフに突入した男性が旅行やレジャーや街歩きなどTPOに合わせたお洒落なバッグの購入が盛んだ。
 夫婦二人きりの生活、また単身生活で心の友としてペット需要も高い。生体、服・フード・アクセサリー・キャリーバッグと商品構成も幅広い。ペットオーナーは金に糸目をつけない。またライフステージ変化を機に、住まい替えのためにデザイン性の高い家具やインテリア雑貨も遠い郊外大型店でなく、最寄り商業で求められている。
 最後に大人層にとり外食ニーズは高い。環境の良いSCでは、休日ブランチから熟年カップルのアルコール需要や平日一人アルコールランチが盛んだ。さらに大人層は私的な同好会やクラブ活動の場を持ち、その懇親として複数人での飲食店の利用が利便性ある駅立地に求められている。1人ランチは若い女子だけでなく大人女子のニーズも高く、大人女子が好むカフェや甘味屋も新ニーズである。

 

 大人世代の商業はこれからが本番だが、人口は減少しても大人層を狙って“高単価と利用頻度”を上げる視点を持つ事により商業の新しいステージを構築すことを可能にするはずだ。

 

 

(記:島村 美由紀/繊研新聞 Study Room 2016年(平成28年)6月21日(火)掲載)