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2017.05.01

不動産フォーラム21

上海――― 子育て世代の集客スポット

 

 近頃のショッピングセンターは、子育て世代を優遇した工夫が随所にされているのが容易にわかる商業施設が増えてきました。子育て世代は人口が多くありませんが、ライフステージの変化が激しい人達だけに衣食住遊にかかわる消費チャンスを逃さないための顧客化を狙っているのでしょう。子供広場やキッズカフェや保育スクール等至れり尽くせりです。
 先月上海に行ったら、日本を超える子育て世代を的にした施設がたくさんあったのでおどろきました。

 

芸術性と運動能力はショッピングセンターで養おう!?

 上海市内の大型ショッピングセンターで、当たり前のように見かける店に絵画教室や陶芸教室があります。超高齢化社会の日本から上海に行った私は、「ヒマを持て余すお年寄りのためのお教室なのだろう」と思ってたらあに図らんやキッズのためのお教室だったのです。
 絵画教室のシステムはこんな感じ。まず店内でお気に入りの絵画を決めます。キャンバスにはすでに下地が薄く線画で描かれており、係りのお姉さんスタッフが何色も並んだ絵具ポンプからパレットに必要な色を取ってくれ、下絵のどこに何色を塗るのかが説明されたマニュアルに沿って色をおいていく作業を子供達が月に複数回通って絵を完成させるというものです。料金は1万円弱。完成品は額に入れ子供の作品として持ち帰り自宅に飾るそうです。下絵あり、着彩マニュアルありで創造的か否かは疑問ですが、けっこう人気があり子供達が真剣に取り組んでいました。
 絵画だけではなく陶芸教室も盛んです。小学校低学年ぐらいの子供達が電動ろくろを使ってお茶碗や花瓶や湯飲みをつっくています。粘土遊びに近い感覚なのでしょうが、これもお教室料金が5,000円~8,000円ぐらいかかります。
 他にもダンススクールやクラッシックバレエスクール、英語教室、工作教室、武道教室、フェンシング教室、ボルダリング教室などなど、本当に多岐にわたる子供教室がショッピングセンターに店を持ち、送り迎えのパパやママや祖父母が店の前でヒマそうにレッスンを終える子供を待っている姿があちこちにありました。
 上海在住の知人に聞くと、まだひとりっ子が多いため子供への注目度が高いこと、学校では勉学が中心で日本の教育カリキュラムのようにスポーツや図画工作のような創造性を養う教育時間は極めて短時間なことが、このようなサービス業に結び付いているらしいのです。

 

赤ちゃんのお風呂屋さんとキッズ盆栽店

 さらにびっくりしたのは、赤ちゃんのお風呂屋さんがショッピングセンターに出店していたことです。ガラス張りの店内にベビーベッドが複数台並んでいて、小さなバスタブもあるので一体全体何をやるサービス店舗なのか?さっぱりわかりませんでした。やがて新生児を抱いたおばあさんとママが入店。やさしそうな白衣を着た女性専任スタッフが赤ちゃんを受け取り、はだかにしてバスタブで沐浴をさせています。髪や身体をていねいに洗い、上がり湯をかけて、ベビーベッドの上に移動。湯上り赤ちゃんにパウダーやクリームをぬり、産着を着せ、赤ちゃんストレッチをしてあげるというサービス業態です。その間、おばあさんとママはスタッフの動作と赤ちゃんの満足そうな顔をうっとりと眺めていました。こんなビジネスがあるのですね。と前述の知人に話すと、上海は住宅事情がよいわけではないので、中にはマンションが狭かったり、ママが多忙だったりの理由から外部にサービスを求めるニーズがあるのだそうです。またある施設で園芸店がいくつもあると紹介されていたので屋上に行くと、たしかに園芸店や金魚を売る店等が軒を連ねているのですが、そこのお客は全て子供達。キッズが寄せ植えや盆栽づくりに精を出しているのです。大人はそれをほほえましそうに見ている。子供にとって盆栽や寄せ植えは楽しいコトなのでしょうか?
 園芸は大人の趣味だと思っていましたが、上海ではキッズが楽しむものだったのですね。この施設ではガーデンテラスの園芸がまるで遊園地のようににぎわっていました。シブい趣味です・・・。

 

 お国によって子育て世代の集客はいろいろなのだなあ、と感心をした数日間でした。

 

 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2017年5月号掲載)