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2019.10.01

不動産フォーラム21

ランチタイムを変える グルメなトラック集団

  

 都心のランチタイムに変化が生まれています。弁当や総菜を移動販売車で売る「フードトラック」が昼どきにオフィス街の広場や空き空間に出店を始め、人気になっています。

 
 

●ある日のオフィス街のランチタイム
 9月の東京国際フォーラム広場は初秋のさわやかな風に誘われてランチタイムを楽しむ人でにぎわっています。オフィスワーカーのお目当ては広場に9台並ぶ「フードトラック」の弁当。人気店はパエリアを売るトラックとビーフランチ(焼肉弁当)を売るトラックで30人以上の行列ができています。他の車もバラエティに富み、ナシゴレン、タコライス、イタリアン、和食、コーヒースタンド等々、「何を食べようかしら?」と迷っている女性グループを見かけます。どのトラックも美味しそうに感じるのは、車のデザインがそれぞれにお洒落であることが一因だと思います。駅前等で見かける少しいかがわしい感じの移動販売車とは一線を画し、どのトラックも個性的で洗練された佇まいです。車内には一人の販売車がいてお客様に対応していますが、主に20代後半から30代の元気のよい若手販売者ばかりで女性も活躍しています。「今日も来てくれたんだ。ありがとネ‼」など常連とフレンドリーな会話をしているトラックもあります。
 値段は600円~800円が平均。“コンビニ以上飲食店未満”という価格設定と、9トラックのメニューの豊かさが人気の秘訣かもしれません。

 

 オフィスワーカーはフードトラックで弁当を買うと、広場にあるテーブル席やベンチで弁当を広げる人もいれば、そのままオフィスに戻る人も見かけます。近所に勤める知人は散歩がてらフードトラックを1周してお目当ての弁当をゲット。「外のベンチで食べるかオフィスに持って帰るかはお天気次第。毎日コンビニ弁当では侘しいし、飲食店では待ってる時間が長すぎるから、フードトラックは使い勝手よし」と言っています。

 
 

●「フードトラック」はマッチングビジネス
 「フードトラック」はバラバラに車が集まってくるわけではなく、計画的な配車とビルや敷地オーナーに対応する仲介業者がいて成立している事業です。車や営業許可等の手続きはそれぞれの出店者が行いますが、ビル側との交渉や消防署等への届出についてはこの仲介業者が担当します。そしておもしろいのが組合せ計画。トラックオーナー何百社と提携しているので、その立地に合わせたトラックメニューの組合せを行い、週単位で組合せや出店先をチェンジすることでオフィスワーカーへは店の選択肢をトラックオーナーには売上をとるチャンスの幅を広げる仕組みが構築されている、まさに今はやりのマッチングビジネスが「フードトラック」の特徴です。

 

 ビル側にとっては施設の評価を下げがちな昼食難民対策になり、かつ見栄えの良い複数のトラックやベンチでくつろぐオフィスワーカーの姿は施設の雰囲気アップにつながります。トラックオーナーはこの仲介業者によって出店のわずらわしさがなくなり、様々な立地で様々な組合せの仲間と協業ができ、人件費や賃料が軽減され、何より店舗を構える初期投資が格安で済み、店を持つことへの敷居が低くなります。よって若いオーナーや女性オーナーが多くいます。売上の5%が土地所有者に、10%が仲介業者に支払われるのが一般的です。

 
 

 すでに都内では、百数十ヵ所でフードトラックがランチタイムに活躍しており、このマッチングビジネスを手がける会社も複数社が何百ものトラックオーナーと提携しているそうです。まさに三方良し(売り手良し、買い手良し、世間良し)のトレンドビジネスですね。ただし残念なことに、現金払いが主流。キャッシュレスの波はこれからの様子です。
 今後、このビジネスは関西や地方都市にも広まっていくのでしょう。楽しみです。

 
 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2019年10月号掲載)