不動産フォーラム21
プレミアムは愛のあかし-拡大するペットビジネス-
コロナ禍で追い風が吹いた業界がいくつかあります。食品メーカー、食品スーパー、ドラッグストア、IT・通信事業者等がその代表ですが、ペット業界にもかなりの追い風が吹き新たなサービスや新業態が生まれようとしています。
●“家族化”が成長のKEY!!
2019年度ペット関連市場規模は1.57兆円で微増傾向にありましたが、2020年度予想では軽く1.6兆円を超えるのではないかと言われています。理由は簡単。“コロナ禍のステイホームでおうち時間が長くなった生活者が犬や猫の飼育を始めた”ことにあります。多くの人が自宅にこもり子供たちも学校に行けない状況が長く続いた中、10万円の特別定額給付金が支給された事がきかっけとなり一段とペット需要は高まったようです。
都心にある知り合いのペットショップでは、通常時は犬や猫が月20頭平均の販売数のところコロナ禍の春以降は2倍~3倍の販売数となり品薄状態になっているとの話がありました。
今年6月に改正動物愛護法が施行され、殺処分の厳罰化や業者への飼育環境指導、ショップや繁殖業者への頭数制限規制が行われることもあり、一般の動物愛護の活動とともに犬猫が量産されるケースが減ってきて、昨年あたりから犬猫の価格は値上がり傾向にありましたが、コロナでさらに急騰状況になっているそうです。
販売頭数増加がペット業界に追い風をもたらしているわけですが、1.57兆円の内訳にはケージやサークル、トイレシートにおむつ、シャンプーや消臭剤類や衣類、ペット用おもちゃやフード類など多種多様な関連商品があり、1頭を飼うことによる関連商品群の購入品は相当な額になります。
特に最近は少子化によりペットを家族の一員として捉える考え方が浸透するにつれ、飼い主はペットにお金や手間をかける傾向がより強くなり、この関連商品群や関連サービスビジネスが拡大しています。
●プレミアムから生まれる新ビジネス
拡大するペット産業と書くとペットの代表格である犬猫の日本における飼育頭数は増加しているのだろうと思われるでしょうが、実は飼育頭数は微減傾向にあります。犬は2013年1026.5万頭→2019年879.7万頭、猫は937.2万頭→2019年977.8万頭の横ばい傾向です。
ではなぜペット産業の売上は上昇しているのかというと、“家族としてのペット”の位置付けで、ペットにかける単価が上がっています。最も顕著なのはペットフードで、自分の子供に与える時と同様、またはそれ以上に「安全」や「健康」に気遣い、さらにはそのペットの長寿を願う「高齢化」までが加わり、ペットフードは“プレミアムペットフード”となり、栄養価・安全性に配慮した高付加価値・高価格帯のペットフードが注目され市場規模は拡大傾向にあります。
あるペットショップ事業者は従来ペット関連商品やトリミングを行う一般的なペットショップを長年経営してきましたが、新業態として「プレミアムペットフード専門店」を出店予定だと言います。生体を扱う店では客が犬や猫を帯同するための駐車場や水回り等の設備や導線が必要、ケージや衣類等は仕入れ商品で原価率が高いため店舗規模や出店立地に制限があり利益が少ない。ところがプレミアムフードだと商品単価が高く出店規模・出店立地に自由度があり商品の原価率も抑えやすく利益率が良い。そこに、飼い主の犬や猫に対する安全性や健康志向や長寿願いが強くなり、フードに特別なこだわりを持つ客が増加。さらには、おやつやアニバーサリー対応(ペットのお誕生会や家族記念日)のニーズが広がっているので、「フード専門店」のメリットは大きいことに注目した新Shop展開です。
「ペットの食いつきが悪い」「食が細い」といった飼い主の心配に対しアドバイスをする“ペットフーディスト”を常駐させ、生体を帯同しなくともペットフーディストとの会話からその犬や猫にマッチするプレミアムフードのサンプル(有料)を提供し、2度目以降はECから継続購入を促すというシステム。まさに、リアルとオンラインの融合ビジネスが計画されています。
ある損保会社の発表によると、2019年のペットにかける年間支出は犬30.6万円、猫15.8万円だそうですが、“プレミアム”切り口はぺっとの様々なアイテムやサービスに拡大されるはずですから、1頭への年間支出も増加の一途をたどるはずです。
(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2020年10月号掲載)