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2018.11.06

不動産フォーラム21

オリンピックイヤーに向けひと皮むけるか スポーツショップ

 

増えましたね、気がきいた店
 今回は、お店の話をいたしましょう。

 この数年で気のきいた店が増えてきたと実感しています。例えば洋服屋では、スカートばかり、ブラウスばかりで棚に並べた店はなくなり、全身をコーディネイトしやすいように相性のよいスカートやブラウスやニットをひと塊で見せてくれます。紳士服も同様ですよね。スーツ売場には必ずそのスーツにマッチしたネクタイ&Yシャツがディスプレイされています。特に最近ではその店の感度に合わせた靴やバッグやアクセサリーまで扱う店が増えましたから、1店舗でトータルコーディネイトが実現できるようになりました。
 接客も気がきいています。入店するなりベッタリと店員がついてくる店は激減しました。店員はほどよく客と距離をとり、呼んだ時には感じよく対応してくれます。最近では、試着室に扇風機やミネラルウォーターを置く店もあるほどです。
 身近なところでは食品スーパーもずいぶん気がきいた店になっています。お豆腐の棚には生姜が置かれ、秋刀魚の脇には大根おろしが置かれています。会計はセルフレジで時間短縮。保冷用の氷やドライアイスも常備が当たり前になりました。
 どの店もお客目線で店舗運営を考えているから“気がきく度”がアップしています。

 

残念な気がきかない店
 以前から“気がきく度”が低いままの店だと感じていたのがスポーツショップです。まず大型店で何がどこに売っているのか、目的の売場にたどり着くのが大変です。ようやくその売場にたどり着いても商品が男性用女性用サイズ別と盛りだくさんに棚やラックに置かれていて探すのがひと苦労。ワサワサガサガサと掻き分ける間隔で商品を選ばねばなりません。おしゃれなランニングウェアや水着も男性用女性用の売場に境界線がなく、特に素肌に身に着けるようなウェアを男女が近い場所で見なければならないことに抵抗があります。スポーツ用の下着をそのまま露出して売っている店舗もあるほどです。試着室にも工夫がありません。着替えが不安になる簡易なつくりのところもあり、そこに男性女性が混合で使用するわけですからかなり抵抗があります。
 スポーツウェアもスポーツの各種ギア(道具類)もけっこう高額な商品が多く、数万円するような商品をこんな雑な売り方でよいのだろうか、といつも感じていました。

 

ようやく生まれた男女別売場のスポーツショップ
 “ライフワークバランス”という考え方が一般的になり、充実したプライベートタイムを楽しもうというライフスタイルが浸透してきたためか、レジャー&スポーツ人口が急激に増加しています。週末ごとに多くの人が山や海やグラウンドに行き仲間との豊かな時間を過ごすようになりました。それに伴い、小売業界ではスポーツ系の店舗が好調に実績を伸ばしています。
 そこで、ようやく前述した“気がきく度”が低い店から、気のきいたスポーツショップが誕生し始めました。渋谷に9月下旬に開店した「スパースポーツゼビオ」は売場が男女に分かれています。店舗の左側は女性用売場、右側が男性用売場です。もちろんスポーツ用下着も気兼ねなくチェックできますし、試着も女性専用室が用意されていますので快適です。1Fのシューズ売場が好評で、従来は男性用のシューズが過半の中に女性用が少数という売場が多かったのですが、この店では男性用の数に劣らず女性用シューズも十分な品揃えで選べます。ようやくスポーツショップで楽しく買い物ができるようになった店ができました。
 日本橋高島屋新館に出店した「タウンライン」というスポーツショップも男女別の売り場を実現した新型店です。近頃、空前のヨガブームで女性達はおしゃれなヨガウェアを探していますが、この店では有名デザイナーのウェア等もそろえマダム達のニーズにこたえています。ランニングやトレーニングウェアを含め男女それぞれの売場を別々につくったからこそ、スポーツをおしゃれに楽しみたいという今のお客様ニーズにこたえられる気のきいた提案が実現できたと感じました。

 

 たまごが先かニワトリが先か微妙ですが、こうしてニーズに上手に呼応して店がひと皮むけて気がきいたお店にかわると、消費者の購買意欲も増してくるものだと思います。今後もオリンピックイヤー(2020年)に向けてスポーツ人気は高まってくるはず。より殻を破ったスポーツショップが普及するとよいですね。

 

 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2018年11月号掲載)