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2020.09.01

不動産フォーラム21

エコバッグ持参という ニュースタンダード

  

 海ガメの鼻の穴からストローを抜くシーンや死んだクジラの胃から100キロのゴミが摘出されるシーンなど、ショッキングな海洋生物へのプラスチック汚染による被害映像を目にすることが増えました。

 
 私たちが日常的に使っているプラスチック製のペットボトルや食品容器などは適切な処分がなされていないことで流れ流れて海に至り、海洋プラスチックごみとなり、海洋汚染や生態系に甚大な絵影響を及ぼすという現代社会の大きな問題になっています。この海に流出するプラスチックごみ問題の量は世界中で年間800万トンになると試算されています。日本の漁獲量は約400万トンなので、その2倍のプラスチックごみが世界中の海に流れてしまっているのですから、海の生き物の暮らしに危害を及ぼしていることに心が痛みます。

 
 そこで、地球温暖化や海洋プラスチックごみ減少に向けた第一歩として、7月1日からレジ袋の有料化が全国でスタートを切ったことは周知のとおりです。

 
 

●「お持ちですか?」から「どーします?」まで
 この2ヵ月間、コンビニ、スーパーマーケット、ドラッグストア、雑貨屋にいたるまで買物の都度レジで確かめられるのがエコバッグを持参しているか否かのセリフです。良い接客教育がなされている店や常識的なレジスタッフが対応してくれる場合は「エコバッグはお持ちですか?」「マイバッグをご持参でしょうか?」などと声をかけてくれます。「ハイハイ持ってます。大丈夫です」と答えスムーズなコミュニケーションが成立します。レジに立つ段階でエコバッグを手にしている準備のよいお客も見かけます。
 

 しかしちょっとぶっきらぼうなレジスタッフだと、「袋どーします?」なんて冷淡に言われてしまって嫌な気分になりますが、スーパーやコンビニなど来店客数が多い店では今まではなかったひと言を何百人にも声掛けをする必要がでてきたのですから、レジスタッフもご苦労なことだと思います。ある大手食品スーパーでは以前からエコバッグ運動に取り組んでおり、レジ前に<レジ袋要りません>の札が用意されていましたが、7月より<レジ袋要ります>の札に替わっており、“エコバッグ持参を常態化”とみなした店の姿勢を感じました。

 
 さて、エコバッグ持参で意外とドギマギするのが袋への商品のつめ込みです。食品スーパーなど荷物台が別途にあるところはそこまでカゴを運んでゆっくり袋へのつめ込みができるのですが、ドラッグストアやコンビニでは従来レジスタッフがやってくれた袋への商品づめを自分でこなさねばなりません。少量であれば問題なしですが、複数商品で大小まちまち、冷たい物や弁当など型くずれ商品があった場合には苦労をしますし、後ろでレジ待ち客がいたりするとあわててしまい汗が出ます。あるドラッグストアでは「袋におつめしましょうか」と手を貸してくれたレジスタッフがいて、親切さが身にしみました。しかしコンビニでは若いスタッフに身体を左右にゆすりながら手元をガン見された時にはイラっと来ました(苦笑)。

 

 どちらにしろ、レジでの袋詰めタイムのワンアクションには微妙な間の悪さを感じるこのごろです。

 
 

●エコバッグと思っていたら雨ガッパ!!
 2ヵ月も経過するとエコバッグ持参スタイルに徐々に慣れが生まれてくるものですね。自宅から買物目的で出かける時には目的に合ったエコバッグをしっかりと持って出ますが、通勤途中や出掛け途中でなにげに買物をするときにバッグを持参していないと不便なことになります。そこで車やショルダーバッグやリュックサックなどいたるところに袋を忍ばせるようにしているのは私だけではないと思います。あらためて購入しなくてもなんとなくおまけやプレゼントでもらっていたエコバッグ的な袋物は自宅に結構たまっているものです。

 
 そんなことから身近で笑い話が多発です。かわいらしいケースに入っていたエコバッグをレジで取り出したらなんとビニールの雨ガッパだった、という友人。奥さんから持たされたエコバッグがカサの収納袋だったという知人。私は古いエコバッグをレジで広げたらビニールが劣化していて破けてしまいました。たかがエコバッグ、されどエコバッグで、これからの生活では必須アイテムですね。

 
 
 実は海洋プラスチックごみのうちレジ袋が占める割合は0.3%しかなく、ペットボトルの12.7%などと比べるとわずかな数量です。しかし7月以降レジ袋なしの生活が始まると家庭で出す他のごみに目線が行くようになり、ペットボトル、食品トレー、ラップ、包装フィルムなどその種類と量の多さに気付きパッケージの工夫などができないものかと感じるようになった人が増えているそうです。まずはレジ袋不要の小さな一歩からごみへの意識改革をはじめ地球の負担を軽くしていきましょう。

 
 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2020年9月号掲載)