MAGAZINE

2020.08.04

不動産フォーラム21

ウィズコロナ生活 あなたの買ったモノは?

  

 コロナ禍で人々のライフスタイルは変化しているという話をよく耳にするようになりました。夜の繫華街の人通りは減ったように感じますし、電車内の人々の様子も活気は薄く静かに暮らしている様子が伝わってきます。

 

 コロナ禍の自粛生活は多くの人々に生活を見直したり暮らし方の意識を変えるきっかけになりましたが、その結果は消費動向にも興味深い変化をもたらしています。

 
 

●「テレワーク期間に何を買いましたか?」
 先日ある小売業の方々20人とオンラインによる勉強会を開きました。「コロナで物が売りにくい」「リアルショップは先行き不安」等、暗い話題が多く「何をどう売ったらよいのか」がテーマとなりました。
 

 重い空気の会になったので気分転換に「長いテレワーク期間中、何を買ったか」の質問をし、売り手ではなく買い手(お客)側の気分を引き出すことにすると、全員が喜々として自分の“買物ばなし”を語り始めました。

 

 管理職男性は「オンライン会議で自宅が映るので壁紙を新しくしようと100均ショップに行くと、同じことを考える客が多く品薄になっていた」そうです。他の男性は「自宅に長期間いると家族の食事にも飽きるのでマンションのベランダで用具と食料を買いそろえバーベキューのファミリーイベントを開いた」そうです。「どこのお宅も同じ発想のためかベランダバーベキューが急増してマンション敷地内がしばらくバーベキューくさかった」と笑い話になりました。同様に家族サービスを心掛けた男性は「娘が大ファンのアイドルグループを初めて見たら自分もすっかり虜となってしまい、妻も含めて一家で応援することになり、グッズやチケットなど、かなり高額の投資をしてしまった」と、予想外の話が飛び出しました。

 

 男性に比べ女性陣からは現実的な“買物ばなし”が多く聞かれました。「家族で三食が自宅ご飯になったので食料品にお金がかかった。不安だからつい保存用に複数買いをしてしまい、1万円も使ってしまった日もある」とのこと。これは主婦の実感で、我が家でも多く買ってしまったパスタをいま懸命に食べているところで共感する話題でした。30代シングル女性は「テレワーク期間、洋服不要、化粧品不要で楽チン生活だった。同世代女子のリモート飲み会に参加して面白かった。出社許可が出てすぐ買物したのは夏服。やはり外出にはそれなりのメイクとファッションが必要だ」との話でしたが、「長くノーメイク、ノーファッションだと楽だけどオンナ度が低下してしまい不安になる」と女心を語っていました。若手女性は「在宅期間中に普段試せないメイクアップやスキンケアの化粧品をいろいろ買って試してみた」そうです。さすがの若さですね。

 

 売り手側に立つと何を売ったらよいかわからない人たちも、買い手側に回ると自粛期間だからこそ始めたコトや楽しんだモノがあり、皆それなりの消費活動をしていました。中にはそれがきっかけになって、遊びや趣味が今でも継続している人たちもいました。

 
 

●コロナ禍で売れた物、売れない物
 コロナ禍でとてもよく売れた商品は、マスクや消毒剤や体温計等、また家族で楽しめるホットケーキやお好み焼き等の粉物やお菓子作りの食品やお掃除用具等であることはニュースでも取り上げられていますが、意外だったのがホームパーマ剤や毛染め剤が例年の1.5倍以上の売れ行きだったそうです。知人の美容師が「コロナで美容院に行くことを避け、自宅でセルフパーマやセルフカラーをしたお客様が多くいたが、ほとんどの人が上手にできず、すぐに美容院へ戻ってきてくれた。私たちの技術を認識してもらえたよいきっかけになった」と話していました。

 

 売れない商品も、口紅や日焼け止めクリームやファンデーション等のコスメ類であったことはご存じの話ですが、行楽シーズンに外出自粛となったので酔い止め薬や眠気防止剤、スポーツドリンク等の売上低下も顕著だったそうです。

 
 

●ウィズコロナ時代の商品開発
 ウィズコロナ時代、アパレル各社では自宅でくつろぐホームウェアやオンライン会議で上半身がきれいに見える衣料品の提案を活発に行っています。化粧品メーカーではマスクをしても蒸れないファンデーションの提案や、マスクに着色しない口紅の販売をスタートさせました。また、様々な企業で技術力や素材力を生かした新しいタイプのマスクが驚くほど多様に製造販売されているためか、街中ではカラフルなマスクファッションの人々を見かけるようになりました。また人々の通勤ファッションもかなりカジュアルで快適性や通気性重視のスタイルに変化しています。ウーバーイーツ等の運び手が急増して、元気を取り戻しつつあるレストランも増えてきたように見受けます。エンターテイメントでは、オンラインによる有料ライブ等のアーティスト活動が始まりました。

 
 

 しばらくは静かな生活を心掛ける時期が続きそうですが、ウィズコロナの生活を充実させるため、新しい提案による需要と供給が展開され、ニューノーマルとなっていくのだと思います。

 
 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2020年8月号掲載)