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2023.06.28

日経MJ

ふだん使いハレ感添えて-「ジアウトレット湘南平塚」開放感を満喫-

  

 神奈川県で4月にオープンした「ジ アウトレット湘南平塚」が話題を集めている。「ふだん使いのアウトレット」としてのあり方に徹し、ゆったりしたテンポで巡れるのが特徴だ。イオンモールのアウトレットとしては3施設目、関東初進出となる施設は新たな概念を取り入れ、興味深い商業ステージとなっている。

 
 

生鮮や緑の広場、エンタメ

 ジ アウトレット湘南平塚は、アウトレットモールとしては小規模で回遊がしやすい。いわゆるラグジュアリーブランドが無く、「掘り出し物を買わなくては」という客のワサワサ感がない。やすらぐ緑が配置され公園のような和やか感が漂い、店舗の顔ぶれにも身近さを感じる。

 

 アウトレット事業部の土屋敦ゼネラルマネージャーは「休日集中型アウトレットではなく、平日も集客できる施設を目指した」と語る。

 

 建築・環境デザインは「ふだん使いの価値創造」というテーマに大いに貢献している。

 

 平塚駅からバスで向かう途中、細い道路の先に施設が忽然と見えた瞬間「オォ~」というどよめきが上がった。「すごいね」「楽しみ」との会話も聞こえた。平塚方面からはウエストゲート、厚木方面からはノースゲートで客を迎えるが、大キャノピーとブラウン&ホワイトの2カラーで構成されるモダンデザインが客に期待感を抱かせる。

  

 ノースストリートは植栽を密に配置し、緑に沿わせたベンチを組合せた。やや広い道幅のサウスストリートには小さな公園を配置。遊具やポップアップステージを設え家具も大ぶりだ。2階部の庇は短くし1階の日当たりに配慮、通路とテナント区画の照明も互いの漏れ光で自然な調和を生むようになど細部に配慮がなされている。

 

 モールの中央には大神ビレッジという広場がつくられ、中央にカフェを配置した。植栽とガゼボスタイルの休憩スペースがまるでアジアの高級リゾートのようにお洒落で絵になる空間だ。

 

 施設はアウトレットモールのふだん使いの気軽さと、デザイン力による「ハレ感」のバランスがとれている。

 

 隣接する市公園と一体化を狙い、公園側に有名なアウトドアショップを配置。公園面と館内面の2面開口としたことで開放感が生まれ、モールと公園の融合が賑わい演出している。

 

 来館者のアウトレットの楽しみのひとつになっているグルメの充実もはかられ、多くの専門店やカフェに「フードフォレスト」という約700席のフードコートが2階の中央に配置されている。相模湾の新鮮な魚介を使った海鮮丼の店や地元のスイーツショップカフェなど地域のグルメが楽しめる。またダイナミックな内装デザインが個性的だ。スケルトンの天井には多くのサークル状照明器具が空間の広がりを魅力的に演出し、キッズコーナーや一人から複数人までのテーブル席は多様な来館者への居場所をつくる気遣いを感じさせる。

 

 アウトレットだけでなく、地域共生とエンターテインメントも重要な柱になっている。5月にはJリーグの湘南ベルマーレのライブビューイングが実施され、約500人のファンが大型LEDビジョンのあるウエストコートで観戦した。湘南海岸公園で定期開催されている「SunSunマルシェ」を隣接するTHE OUTLETS 公園で開くなど、地域に根差したイベントを相次ぎ開催している。

 

 18店舗のスポーツ・アウトドアの有名店を集積した点も強みだ。テントの設営講習や焚火体験、ウエストコートでのヨガスクールなど専門店ならではのアクティブなプログラムが人気を呼んでいる。

 

 「ふだん使い」を最も印象付けるのは生鮮三品のテナントで、平日の遅い時間でも買い物客が途切れない。中田祐介営業マネージャーは「平日と休日の比率は1対2。平日に強い場づくりが実現した」と語る。アウトレットモール競合は50km圏に3施設、大型SC競合は10km圏に2施設ある中、独自のポジションを形成しつつある。

 

 高速道路ICが近く、国道129号と接するなど車のアクセスに優れる。ジ アウトレット湘南平塚は、平塚市の「ツインシティ計画」の中心に位置し、街は今後も発展が見込まれそうだ。

 
 
(記:島村 美由紀/日経MJ「デザイン面」 2023年(令和5年)6月28日(水)掲載)