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2020.12.01

不動産フォーラム21

たかがマスク されどマスク -コロナ禍のマスク事情-

  

●長い行列をつくるマスク専門店
 出勤や外出時は身なりを整え荷物をチェックして準備万端で家を出るのが常ですが、ちょっとそこまでのお使いの時やブラッとご近所の散歩時に、うっかりマスクを忘れてしまうと一大事とばかりに動揺してしまうこのごろになりました。やむを得ずハンカチで口元を押さえ、まずコンビニかドラッグストアに飛び込みマスクを購入して着用し街を歩けるセーフティスタイルになりひと安心、といった“うっかりマスク”をだれもが経験する日常が続いています。“たかがマスク されどマスク”で、こんな小さな存在ですが、今や暮らしの中でかなり重要なアイテムになっています。

 

 先日、小売業関係者の会合で「マスク専門店が大賑わい」の話題が出ました。何百種ものマスクを集め、専門的アドバイスをしてくれるマスクコンシェルジュまで配置して売上も上々との話なのでさっそく視察に行ってきました。

 
 店舗は9月上旬に東京駅八重洲地下街の一角に開店した20坪の小さな店です。久しぶりに訪れた八重洲地下街は観光客も減少しリモートワークでビジネスマンの姿もまばらな東京のど真ん中のためか、ずいぶんひっそりしていて空き店舗もポツポツある少し寂しいい地下街になっていました。が、そこに長蛇の列をなす人の群れが見えてきます。何事ぞ?とその列の源をたどると、マスク専門店「Mask.com」に行き当たりました。

 

 私は待ち時間30分程度でしたが、客が多い時には入場制限のため90分もの待ち時間の場合もある人気店です。店内には約200種強の多様なマスクが陳列されています。「500円から10万円まで」が謳い文句になっているので、まずは10万円のマスクを拝もうとして探すと、ガラスケースに納まったスワロフスキーのクリスタルがふんだんに散りばめられた職人さん手作りのキラキラしたマスクでゴージャスでした。すでに購入者が複数人いるそうです。

 

 白衣を着用したマスクコンシェルジュに声をかけると、どんな場面の着用なのか、サイズはあっているのか、呼吸のしやすさや抗菌性の高さ等の機能特化性は?素材の説明など、こちらのニーズに合わせていろいろなアドバイスをしてくれます。自分用の購入だけではなくマスクをギフトにしたいというニーズもかなり高く、贈りたい相手のイメージに合わせたマスク提案もコンシェルジュの大切な仕事になっているのだそうです。素材やカラー展開や柄物まで多様なマスクがそろっていて、たかがマスクされどマスクでマスクショップは圧巻の専門性でした。

 
 

●マスクの陰にビジネスチャンスあり
 コロナ禍でアパレル業界等、売上不振が続く昨今ですが、意外に売上を伸ばしているのがピアスやイヤリング等を扱うファンシージュエリーショップです。その理由はマスク着用が常態化した中で、マスクのゴムにひっかからずに耳元のおしゃれを楽しむためのジュエリーに女性の注目が集まっているためで、顔がマスクで半分以上隠れてしまうため、耳元のおしゃれやアイメイクへのこだわりをより増している女性ニーズが売上を押し上げているのです。

 

 さらにマスクファッションは多様なバリエーションが増えていて、例えばマスク専用のカラーゴムの付け替えで服装に合わせたマスクコーディネイトを楽しんだり、マスクゴムにフックをつけて髪留めと一体化したヘアアクセサリーが生まれたり、マスクのヒモ部分にイヤリングのように装着する吊り下げの装飾品やマスク本体にピンやマグネットで装着するワンポイントとなるアクセサリー等“マスクアクセサリー”という新分野アイテムが誕生しています。

 

 毎日マスクを着用しているとさすがにマスクの無表情さに飽きがきてしまい、何かおもしろい工夫や楽しい工夫はできないものかというシンプルニーズからヒット商品が生まれているわけです。

 

 携帯ショップではワイヤレスホンの販売数が急激に伸びているとの話もあります。コロナ禍でマスク着用という日常が新しい消費シーンを生み出してる一例です。

 
 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2020年12月号掲載)