不動産フォーラム21
“じゃら付け”の個性
平成ファッションを面白くてお洒落と受けとめZ世代が中心になって新たなブームをつくり出しています。例えば厚底ブーツやスニーカー、ミニスカート、へそ出し×ワイドパンツ、ジャージやスウェットのスポーツファッション、カラーコンタクトなど、90年代ブームになったスタイルを取り入れたZ世代トレンドを数年前より街で見かけるようになりました。
中でも最近気になるのが“じゃら付けバッグ”。10代から大人までハマる人が増えブームがひろがっています。
●“じゃら付けバッグ”の女子高生たち
電車で見かける女子高生からそのトレンドを読み取れることはしばしばありますが、このごろ目にとまるのはスクールバッグやリュックサックにバッグ本体が見えなくなるほど大ぶりのキーホルダーやチャームをたくさん付けた“じゃら付け”を楽しむ女の子たちです。
4~5人の女の子たちでも“じゃら付け”の中身はまちまちで、ディズニーキャラクターの子やキティ系の子、推しアイドルのキーホルダー、サンリオキャラクター、大阪万博キャラクターのミャクミャク、動物ぬいぐるみなど、その女の子のセンスや好みでじゃら付けワールドがそれぞれのバッグに広がっていて、興味深い光景です。
街のカジュアルショップや雑貨屋などではキーホルダーやチャームが売られ、多い店では1,500種から2,000種がそろっているそう。渋谷公園通りにもアイドルグッズショップやゆるキャラショップが複数店あり、“じゃら付け”アイテムがよく売れているそうで、電車で見かける女の子たちの“じゃら付け”ボリュームは圧巻です。
2000年代前半、女子高生の間はスポーツバッグやスクールバッグをキーホルダーで“デコる”流行りがあり、好きなキャラクターの飾りを1~2個付けて楽しむ女の子たちを全国で見かけましたが、このトレンドが四半世紀を過ぎ、より強烈なブームとなり“じゃら付け”がウケているわけです。平成ブームの再来ですね。
●うっとり“Charm”にハマる大人女子
平成ブーム再来を楽しんでいるのは若い女の子たちだけではありません。30代~40代の大人女子も近頃は“Charm”にハマっています。
チャーミング、チャームポイントなど、Charmは普段使われる言葉ですが、魅惑する、うっとりさせる意味や魔力、魔よけ、お守りの意味を持つ英語で、服飾業界では飾りや装飾品を意味し「バッグチャーム」はバッグ飾り物を示しています。
昨年春からラグジュアリーブランドの各社がバッグチャームを次々に売り出し、超人気で入手困難なアイテムも数々生まれています。
例えばエルメスではアニマルモチーフのチャームが数万円~数十万円で売られており、エルメスのバッグにアニマルチャームを付けた女性はセレブマダムの証といったところでしょうか。
アメリカ発のコーチは一時低迷をしていたものの最近では新しい皮製バッグデザインを発表して復活しつつありますが、バッグチャームを数年前から恐竜やカタツムリやヘビ等のユニークなデザインで商品化を図り注目を集めています。中でも一番ユニークなのはスニーカーに付ける“シューチャーム”で、スニーカーにヒモに立体型のイエローキャブやビンテージカーを取り付けるかなり大ぶりなデコアイテムですが、限定品のため実物を見た人はいないほどレア商品です。コーチは“じゃら付け”がブームになる以前からチャームを提案してきたブランドなので先見の明ありですね。
実は大人女子は平成時代に“デコる”文化を発信してきた世代で、見慣れたバッグやシューズをチャームやキーホルダーで表情を変えたり、リボンを結んだり、ヒモの色を変えたりしてお金をかけずに自分のこだわりを表現してきた世代ですから“じゃら付け”はお手のもの。
若い女の子たちも今の時代はお金をかけずに楽しむ術をSNSや口コミで知り、自分なりのカスタマイズできる知恵を持った世代。こんな流れを見ていると春の流行が身近な工夫から楽しめることがよくわかります。
(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2025年3月号掲載)