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2014.02.03

不動産フォーラム21

ご当地を売り込みます!!

 

 昨年12月の朝、通勤電車に乗って驚きました。中吊り広告に上半身裸の若い男性4人がこちらを見てポーズを取っているのです。「朝から何ごとぞ?」と思ったら、ポスターには「ハダカのおもてなし いわき市」とあり意味不明。気になってネット検索すると、福島県いわき市が“「裸一貫」震災を経ていわき市が「心からおもてなし」を考え実行するプロジェクト”のPRポスターでした。

 

 様子を見ると私の乗った女性専用車両だけポスター展開で、ヌーディーな男性たちの女狙い撃ち作戦に度肝を抜かれました。

 

 4人の男性はいわき市のスパリゾートハワイアンズのダンサーたちで、昨年末に都内でイベントを開いたりキャンペーンサイトに登場したりと、いわき市の魅力のメッセンジャーだそうです。いわき市にはアミューズメント施設や水族館や温泉等たくさんのにぎわいスッポトがあり、ご当地の人々ががんばってもてなしますのご当地観光キャンペーンを若い女性に向けたインパクトあるメッセージで伝えた「ご当地売り込み方法」には反響もあったようで、その後ネットでは“旅の予約をいれた”とか“ポスター見て笑えた”などの書き込みがアップされていました。

 

 思い起こせば同様のご当地売り込みのインパクト手法は、2011年秋に香川県が展開した「香川県は『うどん県』に改名いたします」うどん県プロジェクトもインパクトが大きかったですね。うどん県副知事こと俳優の要潤さんが「うどん県」とかかれた額を手に記者会見するPR動画は羽田空港や六本木の大ビジョンに映し出され、地下鉄車内でCMが流され、駅構内にポスターが貼られ、一挙に「香川県」がメジャーになりました。当時「本当に香川県は名前を変えるのか?」の問い合わせが殺到したそうです。私も「何コレ??」と足を止めて大ビジョンをながめたほどのインパクトキャンペーンでした。

 

 「おいでませ 山口へ」「そうだ 京都に行こう」という昭和の時代の正統派ご当地観光キャンペーンの時代は遠い遠い昔となり、今は“強烈な引っ掛け”がないと人の心をとらえられない時代になったのだと思います。

 

 さて近頃、ご当地の売り込みになくてはならない存在になったのが“ゆるキャラ”です。先日、九州の土産店でくまモンの紙袋を買う人が「ふなっしーはないの?」と聞いていました。「九州ですからふなっしーはいません!」という店員さんの答えはみなの笑いを誘っていましたが、人気ゆるキャラはご当地の宣伝マンとして大活躍をしております。“ゆるキャラ”には三か条があり、1.郷土愛にあふれた強いメッセージ性 2.立ち居振る舞いが不安定でユニーク 3.愛すべきゆるさを持ち合わせていること だそうですが、“ゆるキャラ”を全国で有名にしたのは2010年から始まった「ゆるキャラサミット」の存在で、全国のゆるいキャラクターが一堂に集結する“すごいゆるさ”とゆるい順番をつける不思議さが今のような厳しい時代の反動で受けたのではないでしょうか。昨年は栃木県佐野市のさのまるがグランプリを獲得(120万票)しましたが、一昨年は最下位のキャラたち3人で「ビリキャラトリオ」を結成してイベントが開かれたりという敗者にもスポットが当たる企画もあって、“ゆるさ”が光る展開が面白いところです。

 また、最近では全国区の人気競争に乗る手法ではなく、地元地域との関わりを重視するご当地キャラクターとして原点がえりを果たすキャタクターも生まれ始め、地元の地域イベント参加や学校行事や高齢者施設訪問等で地域の絆づくりのシンボルとして活動するゆるキャラもいるそうで、これも別の意味でご当地を大切にするゆるキャラづくりだと思います。

 

 “地元”“郷土”“ご当地”…、成熟した日本の今だからこそ、人に知ってもらいたいし、自分でも振り返りたいホットスポットなんですネ。

 

 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2014年2月号掲載)