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2016.01.04

不動産フォーラム21

こんなところにも女子力が…その2―職場における女性の新風―

 

 「一億総活躍社会」が現内閣の目玉プランになっていますが、少子化時代だからこそ男女の差がなく誰もが社会で活躍できるとすばらしいと思います。

 

 さて、前回に引き続き「こんなところにも女子力が」の2回目をお話したいと思います。

 

 私が最近注目している女性がいます。その人は大きな食品売り場の中の鮮魚売場の女性です。鮮魚売場といえば水や氷を大量に使い買物をする数分間でも“つめたさ”を感じる空間で男性の職場というイメージがありますが、この店では秋頃からたいへん元気のあるA子さん(おそらく40代)が売場に立つようになりました。
 A子さんは毎日元気です。そして誰よりも声が大きい!売場に響き渡る大声で途切れることなく終始声を出し続けているのです。この大声の連続は意外と難しい物で、私もある時売場に立つチャンスがあったので大声の声出しをなるべく続けてやってみようとトライしたのですが、息は切れるし喉はかれるしと苦労をいたしました。A子さんの喉はたいしたものです。
 さらにA子さんがすばらしいのはその掛声の内容です。単に、「いらっしゃい。魚が安いよ」という従来型のものではなく独創性にとんでいます。ある時の掛声は「ではこれから〇〇水産名物のクッキングスクールを開催いたします。本日は季節の魚である鱈を使ったホイル焼きです。アルミホイルにバターをぬって・・・というようにやるととっても簡単においしい鱈のおかずが完成。料理の下手な私でも上手につくることができますよ~。」と言っています。名物のクッキングスクールで講師が実は料理が下手という話に思わずお客さんは爆笑。本人も「ちょっとスベったな~」と苦笑いをしていました。またある時は「今日はブリの紹介で~す。ぶりは出世魚の代表選手。イナダの時代に漁師から逃げ切ってくれてブリになってくれた魚で~す。」と声掛けをしていました。どこまで本気で言っているのか不明ですが、ともかくA子さんの声掛けセリフは個性があって面白くお客様が注目をしており、A子さんがいる日と休みの日では売上が違うそうです。この変化で女性の可能性を見出した〇〇水産では女性の販売担当者を増やす計画を進めているとコメントをしていました。力仕事もあるし、身体は冷えるしで、女性にとっては厳しい仕事環境だと思いますがA子さんのような逸材が登場すると女性の活躍の場が広がります。まさに“女子力”です。

 

 話はかわって都内の路上です。仕事の移動で急ぎ止めたタクシーが女性ドライバーでした。タクシードライバ―と言えば男性イメージですが、女性ドライバーは全体の2.3%程度で東京都内でも約850人程度なのだそうです。しかし日中に都内でタクシーを利用すると結構850人のうちの何人かの女性ドライバーに出くわすことがあります。この時、私はたいへん多忙で食事をする暇なく動き回っていました。「ちょっとお昼を食べてもいいですか?」と声掛けをして車の中でお弁当を広げたのですが、うっかりおかずをポロリと落としてしまった私を見て、B子ドライバーさんがすぐにウェットティッシュを差し出してくれます。「時々お子さん連れのお客様にご乗車いただくと普段のティッシュじゃ間に合わない事が多いからウェットティッシュも携帯しているんですよ」とB子さん。目的地まで女性ドライバーとのさわやかなおしゃべりで気分が和みました。多忙な私にとってはこれもありがたい“女子力”でした。
 聞くところによると、京都には女性ドライバーだけのタクシー会社があるそうです。2013年に誕生した会社だそうですが、京都観光や高齢者の移動や妊婦さんの通院に依頼が多いそうです。確かに行先や利用シーンによって、女性ドライバーだとより安心できると感じる場面はあるように思えます。

 

 鮮魚売場のA子さん、タクシードライバーのB子さん、どちらも男性主体の職場の中で“女子力”を自然に使いながら新風を吹かせている好事例。これからも「あら!?こんなところに女子力が…」があちらこちらに起こってくると、2016年の日本もますます元気になっていくのではないでしょうか?“女子力に期待!!”

 

 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2016年1月号掲載)