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2015.11.30

不動産フォーラム21

こんなところにも女子力が…その1 ―女子が飲んだビール祭りの1,300杯―

 
 
 ‘女子力’という女性のパワフルな活力が注目される時代ですが、「こんなところにも女子力が…」という出来事に遭遇しています。

 

 私のクライアントである某ショッピングセンターの食品売り場で集客効果を期待してビール祭りを企画しました。‘祭り’といっても大々的なイベントではなく惣菜売場の小さなイベントスペースにビールサーバーを持ち込んで生ビールとおつまみのセット券(630円)を販売し、おつまみ買いのお客様で惣菜売場各店の賑わいを生み出そうという効果をねらったミニ催事です。

 

 本当に16席ほどの極小イートインスペースで、周囲はトンカツ屋やキムチ屋や塩干屋に囲まれた売場の真ん中でビールを楽しむには恵まれた環境ではないため、「きっと会社帰りのオジさんや休日の暇な老人が“ちょっと一杯”と立ち寄るかな」というイメージで計画を立てて事前告知もせずに金曜の夕方から始めました。するとみるみるお客様が集まりビールおつまみ券が売れワサワサと生ビールが出るに出て、3日間で1,300杯という驚きの人気イベントになっていました。ビールサーバーを持ち込んだ某ビールメーカーの営業マンも「びっくりポン!!」お得意様であるショッピングセンターから申し出があったので断れなくて「せいぜい200枚/日がいいところだろう」と思っていたようなのですが、倍以上のビールが売れてため息をついていました。夏の大型ビアホールでもこんなには売れないそうです。

 

 さて、誰が1,300杯を飲みつくしたが問題なのですが、当初イメージしたオジさん・老人は少数派で65%が20代30代の女性達でした。夕方からは会社帰りのサラリーマンではなく会社帰りのOL。ちょっと寄って生ビール1杯につまみのトリの唐揚げ食べてサッと引き上げる女子。OL2人連れも多く立ち寄り、焼鳥と中華総菜をシェアして生ビールをおいしそうに飲んでいきます。週末はショッピングセンターでお買い物に来た女性達。お一人立ち寄りもあれば母と娘で昼間から気軽なランチ感覚カフェ感覚で、ビールとつまみを楽しんでいかれます。中には開催3日間連続してチョイ飲みを楽しまれた女性もいたほどです。

 

 男性達はちょっと肩身が狭そうなほどひっそりとしておられ、グループが来て居酒屋のように長居になってしまうのでは・・・という心配は一切なしの‘女子力によるチョイ飲みビール祭り’が大盛況のうちに幕を下ろしました。

おつまみ惣菜もよく売れましたが、人気No.1は串カツ、No.2は唐揚げNo.3は焼鳥と、まるで男性人気と同様の女子おつまみベスト3になったこともおもしろい結果で、3日間1,300杯のビールを飲みつくした女子力に完敗(乾杯?)です。

 

 こんな驚きの女子力を体験した3週間後、こんどは生鮮産品売場の販売促進でお鍋の試食会を開催しました。寒くなり肉や野菜が鍋用に売れる時期の定番販促です。試食はキムチ鍋のピリ辛ボリューム系から始めてみたのですが、ここでも試食コーナーに積極的に立ち寄り鍋の前に立ちはだかり「ちょうだい!」と言わんばかりに手を出されたのが20代後半から30代女子達でした。そして「これどーやって作るの?」と質問をしてきます。結果45分間でキムチ鍋の素か20袋と豚肉が3万円も売れていきました。「私一人暮らしなんだけど、この鍋の素は開封したら保存できるの?」「残ったスープはご飯を入れてリゾットがつくれるんじゃない?」というような会話もあり、ポジティヴな女子達はここにも存在するを実感した試食会となりました。今どきのロングカーデにつば広帽子をかぶった女子がキムチ鍋の試食をして豚コマ肉を買って帰る姿は、なかなかパワフルでした。

 

 表舞台の女子力もさることながら、こんな生活基盤の中の女子力は好感度です。女性は強く生きていますね。次回も「こんなところに女子力が」のおもしろいエピソードをお話しいたします。

 

 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2015年12月号掲載)