不動産フォーラム21
あたりまえにエシカルファッション -Z世代のソーシャルグッド意識-
●“服を売らない“アパレルブランド
知人が面白い体験をしたそうです。ネットでファッションイベントのチェックをしていたら“服を売らないアパレルブランド“を標榜する「CLOSETtoCLOSET]の記事に目がとまりました。服を売るのではなくあなたの服を誰かの服と交換することで衣料ロス削減に貢献しようという、1996年生まれのZ世代の女性が立ち上げたプロジェクトでした。古着に関心を持つ知人は早速このイベントへ参加することにしました。
まず事前にチケット販売サイト(Peatix)で3,000円の参加チケットを購入し、月一開催で都合よい日時を申し込みます。会場はその都度変わり、知人は恵比寿駅近くのビルの一室に出かけていきました。入り口でQRコードの提示をしてチェックインをし、自分が持参した3着の服を係員に渡します。その後会場を2時間制限で見て回り、気に入る服を3着まで持ち帰ることができるという仕組みです。当日は30代と20代、10代の女性が来場していて熱心に服を選び簡易なフィッティングルームを何回も利用していたそうです。お洒落好きの知人は、破れなどはないもののノンブランドの安価商品が主流との感想を持ったそうです。
この数年Z世代を中心に古着ブームが起こり渋谷・原宿などのファッションスポットでは人気の古屋が生まれています。国内リユース市場は2010年1兆1,274億円が2020年には2兆4,169億円に成長しています。知人はこの流れで「CLOSETtoCLOSET」に関心を持ったのですが、このイベントは古着ブームとは一線を画していて、トレンドで楽しむ古着ファッションではなく「エシカルファッション」を推進し地球環境に負荷をかけず、他社とクローゼットの中を物々交換し循環させていくファッションの楽しみ方というZ世代ならではの視点で考えられいます。会場に陳列された衣料には価格が表示されておらず、持ち込み服も価格提示はありません。値段もトレンドも気にせず自分の好みだけを基準に服を選び結果は地球にやさしくクローゼットに循環が生まれる。Z世代だからこそこんな純粋体験を考え楽しめるのだと知人は感心していました。
●エシカルファッションを意識する
数年前から大手アパレルメーカーが人件費の安い開発途上国の工場生産で人権をないがしろにした労働環境問題等が取りざたされ、有名大手会社が2021年に告発されるという出来事があり、私たちの目線も「安い、おしゃれ、楽しい」だけではなく「この商品、誰かを苦しめていないか?」という意識を持つようになりました。エシカルへの意識です。
「エシカル」とは倫理的なという意味で、人権や社会、環境に対して“良識的“な考えや行動をとり生活する私たちの目線を意味する言葉です。同様に“エシカルファッション“は環境だけではなく労働問題や社会問題にも配慮した上で素材・生産・販売までを行っている地球と人にやさしいファッションを示します。この「エシカルファッション」は2004年ごろからヨーロッパでブームが起こり、時間を経て生活者の関心を集めるようになりました。すでに2004年にはエシカルファッション推進団体が誕生し、安価で使い捨て型ファストファッション反対、生産する労働者の賃金・権利・労働環境保護、持続可能な生活を支える、有毒農薬・化学物質の使用問題、環境に負担少ない素材開発、水の最小使用、リサイクルやエネルギーやごみ問題への取り組み、ファッションの持続可能性促進、動物の権利保護など基準を掲げ世界的に呼びかけています。
“エシカルファッション“は目にする機会が増えていますがややもすると生産や販売に重点が置かれ“服を買う時の意識“としてフェアトレード商品やら生産地チェックやら廃棄物から生まれた素材やらを気にしていましたが、「CLOSETtoCLOSET」のように服のリユースは地球の負荷軽減でサスティナブルファッションなのだと再認識しました。近頃は売れ残りの服をつぎはぎしてファッショナブルな洋服に仕立てる若いデザイナーのブランドが「アップサイクルファッション」として注目されたり、90年代のお父さんお母さんの若い頃のファッションを自宅のクローゼットから掘り起こしてコーディネイトする若者が増えてきたりしていますが、自然にあたりまえに自分の行動をソーシャルグッド(社会貢献)につなげる意識が高いZ世代のすばらしいムーヴメントだと感じます。
(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2022年5月号掲載)