販売士
「男→大」「女→小」はむかしのこと
空腹女性を襲った悲劇!
いつも元気な女友だちの可笑しくて可哀想な話です。
久しぶりの休日、お腹がすいて駅前のそば屋に行きました。カウンター席に座り「何を食べようかな」とメニューを眺めていると近くの男性客に「大盛り無料ですよ」と店員が言っている声が耳に入りました。“ラッキー!!”と思った彼女はざるそばと丼物のセットメニューを頼んだのですが、店員は大盛りのことを言ってくれません。「すみませんけど、大盛りでネ」と彼女が頼みました。その直後に入店してきた年配男性が彼女と同じセットメニューを注文。店員は「大盛り無料ですよ」と言うとその男性は「フツーでいいよ」と答えていました。
「なんだ大盛り無料は男性客にしか声掛けしないのか??女子だって大盛無料は嬉しいのにな~」なんて考えていると料理が運ばれてきましたが、ここで悲劇が起こりました。なんと大盛りが年配男性客の前に、彼女のところにはフツー盛りがきてしまったのです。彼女は悩みました。仕事で遅くなった彼女は昨夜食事抜きで寝たため猛烈に空腹で昼食を楽しみにしていたのです。「すみません、私大盛り頼んだんですけど」と言おうかどうするか迷っている間に男性客はざるそばを食べ始めてしまいました。が、途中で箸を止めて首を傾げていました。
「おじさん、それ私のだよ~。。。」と心の中で叫びつつ彼女はフツー盛りのセットメニューを噛みしめたそうです。「大盛りが食べたかったのに。おじさん食べ過ぎちゃったよ、きっと」と彼女の感想に話を聞いていた全員が大笑いをしました。
しかし、このそば屋は女性に対するイメージを更新していかないと女性ファンが増えませんよね。「男→大」「女→小」はすでに昔のこと。今の女性はどんどんタフになっていますから。
「それ、お願いします!!」と言いやすくする工夫
また「大盛り無料」の話で恐縮です。私が札幌でよく行くイタリアンレストランはパスタとピッザが美味しく、ランチ時は9割が女性客という人気店です。この店でも大盛り無料をやっています。ある時、料理を待っている間に店内を見渡してみるとあっちの女性は丸皿、こっちの女性は楕円形とパスタ皿が2種になっています。どうやら大盛りは楕円皿で提供されているようです。それに気づいて女性達をもう一度見るとけっこう大盛りパスタ人気は高く、およそ3割の女性が楕円皿でした。札幌には活力ある女性がたくさんいてステキです。
後日、店の関係者と話をしました。数年前よりデフレ傾向の中で競合店が価格を下げてきた。この店では値下げは考えていなく、逆に内装を新しくして価格を上げる施策を行いブランド価値を高めたが、ランチに来店してくれる女性ファン層へのサービスと夜への再来誘導をするため“大盛り無料”を半年前から始めたらたいへん好評で売上が伸びたという事でした。以前よりスタッフから「女性の大盛りニーズあり」の報告を受けていたそうです。
さらに店の気の効きようは深いものがあります。「大盛り無料ですよ」ではさすがに女性は頼みにくい。せっかくのファンづくりが進みません。そこで「お値段かわらずにパスタの量は大盛り中盛りをお選びいただけますがいかが致しますか?」という表現でお客様にアプローチしているそうです。たしかに私も何度となくそんな声掛けをしてもらいました。「じゃ、大きほうでお願いします」と女性もニコッと笑って答えやすいですよね。お客様にとって言いやすい、頼みやすいことは商いの原点ですから。
さらに上をいく女性客の知恵
このイタリアンレストランでは私は大盛りを注文したことはありませんが、近頃同行するスタッフ2名は「じゃ大きいほうで」と大盛りを注文します。彼女達の考えは、サラダ1つと大盛りパスタ2種を私とスタッフ2名の計3名でシェアして食べると、野菜もたっぷりとれパスタ2種味わえ楽しいランチになるということです。
なるほど大盛りも知恵を使うといろいろなバリエーションが生まれるものですね。ナイス!!
当社スタッフいわく「近頃、大盛り無料の店も増えているので積極的に大盛りにトライすると仲間でたくさんシェアできたり、ボーイフレンドに分けてあげられたり、お得なことがいろいろある」そうです。女性が大盛りを頼むのが恥ずかしいなどという感覚はまったくなく、元気いっぱいの世代です。女性客を従来の枠にはめて考えてしまうと女性客は枠からはみ出てしまいます。大は男性、小は女性という枠はすでに過去のものになりつつある一例として今回のお話をいたしました。
(記:島村 美由紀/販売士 第24号(平成29年3月10日発行)女性視点の店づくり⑨掲載)