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2012.02.08

日経流通新聞

「渋谷の文化を世界へ 「街の面白さ」を売り込め」

 

 東京の渋谷駅前スクランブル交差点で、珍現象が起きている。ここで写真を撮る外国人が急増しているのだ。当初は交差点そのものを撮っていたが、昨年あたりから交差点の人混みを背景に自分を記念撮影するパターンに変わった。ストリートダンスを踊りながら、メッセージボードを持って、コスプレをして、という人もいる。

 交差点が注目されたのは、2006年カンヌ国際映画祭で監督賞をとった「バベル」に登場してから。以降、訪日外国人が動画共有サイトで往来の混雑状況を紹介。

 「まるでアリの大行列」「短時間で事故なく渡り終える日本人の序列はすごい」などのコメントが寄せられ、有名スポットになった。

 

 さて、こんな多勢の外国人が撮影後に渋谷のどこに行くのか?と思い追跡すると、「H&M」「フォーエバー21」「ユニクロ」「ビックカメラ」「マクドナルド」と、まったく平凡な行き先である。日本の若者文化を代表する街・渋谷なので、ファッション・アート・食文化に関心を持ち渋谷を探索する外国人がいるのではないかと思ったのだが……。

 入り口に大勢の外国人が来ている今こそ「街の面白さ、楽しみ方」をより積極的にインフォメーションする工夫があると、渋谷そのものが世界のホットタウンになれるのに、惜しいところだ。政府は官民有識者会議を立ち上げ、ファッションや食、コンテンツなど「クールジャパン」産業を育成、海外での事業を膨らます構想を進めている。輸出だけでなく、訪日外国人をクールジャパンを感じられるスポットに導く仕掛けがあれば、海外での商機も広がるだろう。

 

 

(記:島村 美由紀/日経流通新聞「How To 商い」 2012年2月8日掲載)