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2022.08.01

不動産フォーラム21

「泊まれる」から「何ができるの?」 アクティビティが目玉となる宿のこの頃

  

 2000年代初期、軽井沢の星野リゾートが開業して早々に泊まった時、周辺を散策するネイチャーツアーを実施していて、気の利いたことをしてくれる宿だと感心しました。それから約20年がたち今では多くのリゾート系宿泊施設がアクティビティと称する客を楽しませるプログラムをバラエティ豊かに実施しており、単なる泊まる宿から体験施設への進化を遂げ、目的性と時間の価値の向上を図っています。「どこに泊まるか」から「泊まって何ができるのか?」そんな宿の選び方が当たり前になってきている時代です。

 
 

●小泉元総理が乗っていたセグウェイを体験 
 箱根の老舗リゾートホテルへ行くことになりHPでホテルの下調べをすると「セグウェイ自然体験ツアー」が紹介されていました。たしか小泉元総理が乗って官邸(?)を走っていたのがセグウェイだったと思い出し、私もこのツアーにチャレンジすべく9,000円という高額ではありましたが事前予約を入れました。

 

 さて箱根リゾートの当日、朝9時30分に山小屋風のロッジに行くと30代の元気なお姉さんインストラクターが迎えてくれました。室内でツアー概要や注意事項を聞き屋外へ出るとそこはセグウェイの練習場になっていて、セグウェイの乗車方法や運転方法をレクチャーを受けつつ実践します。体重45kg以上、18歳以上、運転免許取得者に限定されたツアーなので要領は得やすいのですが、体重移動による走行となるセグウェイなので、体重が軽い女性などは回転等に苦戦します。

 

 練習を終えていざ出発。目的地は30分先にある地元の神社ですが途中でインストラクターが湖のある風景や植物・鳥などネイチャーツアーのガイドをしてくれます。何度も訪れている箱根ですが、セグウェイという特殊な乗り物で専門家による箱根案内は新鮮な体験です。山道をすれ違う旅行者が手を振ってくれたり子供達が珍しがって話しかけてきたりと日常では味わえないコミュニケーションもセグウェイのおかげで生まれました。

 

 神社に到着し参拝をした後、おやつタイムになりました。インストラクターがバックパックからお茶とお菓子やかわいいトレーとランチョンマットを取り出し、箱根の森の中で鳥のさえずりを聞きながらのミニピクニックです。参加者(定員6名)それぞれの感想やインストラクターのキャリアや趣味(予想通り山ガールでした)で会話が盛り上がり楽しいひとときでした。ようやく乗り慣れ感がでてきたセグウェイでロッジに戻り合計約2時間半、走行距離4.1kmのセグウェイ旅は終了。予約時には9,000円が高いなと思ったのですが初セグウェイと箱根の森の新鮮な空気、旅で出会った人たちとの触れ合いなど、とてもタップリした体験ができ満足度の高いリゾートのアクティビティとなりました。

 
 

●泊が二の次になる多様なプログラム
 あちらこちらのリゾートホテルを調べてみると多くの宿が興味深い工夫をしています。専門ガイドによるネイチャーツアー、E-BIKEのウェルネスツーリング、カヤックツアー、フィッシング体験、自然の中のヨガエクササイズ、夜景ナイトツアー、星空天体観測、あたりはアクティビティプログラムとして想像の範囲ですが、工夫している宿では狩猟体験ツアーで地元猟師が罠を利用した猟を見学し動物がさばかれていく一連の工程を見学するツアー、医師監修で開発された3日間の五感整えプログラム、キッズキッチンスタジオ(子供限定料理教室)、子供の自由研究対応プログラム(夏休み宿題対応)などなど、専門的プログラムや気の利いたプログラムを企画する宿泊施設もあります。

 

 競争が激しい宿泊業界ですから、選ばれるための努力は並大抵ではないと思いますが、逆に何かを求めて出かける客側もおいしい食事や気持ち良い温泉、美しい景色だけではなく「他に何もないかな?」と要求が強くなっている傾向にあるのでしょう。“のんびり・ゆったりリゾート”のゆったり・のんびりの質が変わってきている時代なのですね。

 
 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2022年8月号掲載)