MAGAZINE

2012.08.14

不動産フォーラム21

「日本の明日が危ない!! ―結婚のカベ、出産のカベ①―」

 

 数十年ぶりですっかりオジサマになってしまった高校時代の同級生男子たちに会いましたが、24名中結婚歴のない独身者が4名もいて少し驚きました。

 “50代半ばの独身男”というと寂しそうなイメージですが、コンビニやグルメお取り寄せで思いの外リッチな食生活を送り、気軽にひとり温泉や都心ホットスポット巡り(すでにスカイツリーの展望台見学を済ませていました)をし、ゴルフや飲み会にもマメに参加、中にはオジサンサーファーもいて楽しそうな一人暮らしです。でも、「結婚がしたいけれど相手がいない。出会いがない。」のは全員の悩みで「知り合いの誰かを紹介しろ」と言われますが、4名ともに偶然なのか自営業のフリーランスで仕事をやっている男性たちのため(?)知人の女性に話をしても反応が薄く話がまとまりません。私もお節介オバサンになる気はありませんが、なかなか男女が知り合うのは難しいことのようです。

 世の中は“少子高齢化問題”が深刻になり、ややもすると老人問題が大きく取り上げられがちですが、“子供が増えない”という少子問題をもっと真剣に考えるべきだと思っている私は、独身男性4名の「これから男一人でどう年老いていくのか」より、早い同級生の初孫誕生の吉報報告を聞きつつ「もうひと踏ん張り、人口増に貢献しなさい」と、4人の
独身オジサマに檄を飛ばしています。

 

子供が生まれない不幸な時代

 2011年の合計特殊出生率は前年と同じ1.39だったそうです。このところ団塊ジュニア(1971年~1974年生まれ)の女性達の出産ブームで出生率は2005年の1.26の最低値から徐々に上昇を続けてきましたが、団塊ジュニアの出産時期も峠を越し、2011年は横ばい、この先は減少傾向が予測されています。

 もちろん、団塊ジュニアという人口多勢世代が出産期を終わらせていくわけですから、人口が少ない団塊ジュニアの次の若年世代の出産数はおのずと少なくなるのは計算上当然のことです。しかし、近年の20代・30代動向では、人口数が出生率を下げるという単純要因だけではない出生率低下の社会問題が起こっています。「若い世代の所得の伸び悩み」「若年者の非正規雇用の増加」「異性との交際に消極的な若年層」「未婚化・非婚化の進行」etc・・・。様々な若年層の意識変化から子供をつくるという出産に対する動機付けが薄くなっていることも出生率低下の大きな要因になっているのです。

 「お金がない」「異性とどう付き合ったらよいかわからない」「出会いの場がない」「正社員になれない」、日本が右肩上がりに伸びた時代に社会人になり家庭を持った世代には耳を疑うショッキングな話ですが、子内は出生率低下につながる現代の若年世代の問題について2回にわたり考えていきたいと思います。

 

「彼女がいない・・・・・。彼氏がいない・・・・・。」

 いま、彼女がいない、彼氏がいない人はどのくらいいるのでしょうか?財団法人こども未来財団の2009年調査によると、20~34歳の未婚男性のうち現在恋人がいないのは74%、過去に恋人がいないのは52%、これまで一度も恋人がいなかったのは27%、同様に未婚女性ではそれぞれ64%、53%、17%という結果が報告されています。一般調査会社のネット調査でも、近似値が公表されており、さらに年々交際相手がいない数値は男女ともに上昇の一途をたどっているという、結婚や同棲以前にパートナー不在男女が6割から7割以上もいるという事実にびっくりしました。

 私の周囲にも見目麗しい男性や女性が「交際相手がいない。誰か紹介して」と言ってきます。その誰もが、外見も性格もナイスなので「なぜ彼氏や彼女がいないのか不思議?」な感じのする人たちですが、様子を見ていると前述の同級生独身オジサマたちのように独身を大いに楽しんで“自由な時間、自由なお金、縛られない精神”をかなり大切にしているような人たちで異性との交際については積極的ではないようです。中には「恋愛はしたいけど、付き合うのはめんどくさい」という輩もいて理解に苦しみます。

 昨年発表された国立社会保障・人口問題研究所の「第14回出生動向基本調査」では、「一生結婚するつもりはない」と答えた18歳~34歳の男性は未婚者の中で9.4%、女性も6.8%もいて、約30年弱で2倍に増加しているという驚きのデータが発表されました。

 

「男女の出会い」の変化

 「お見合いって知ってる?」と社内で聞いてみたところ、「知ってはいるけど身近に経験者なし」という回答が返ってきました。

 20~30年前の日本では、適齢期(これも死語になってしまいましたが)の若者がいると、ご近所や親類や親の知人たちが「こんな人がいるけどお宅のお嬢さん、息子さんにどう?」と紹介をしてくれ、お見合いが成立したものです。また職場の上司や同僚の紹介、兄弟・姉妹の友人などという紹介ルートも存在し、適齢期の若い人を周囲が放っておかずに気にかけて、出会いを準備していました。本人が異性に消極的でも、交流ベタでも、周りがお世話を焼いてくれていたわけです。

 今はどうでしょう?個を重視する時代の中で、周囲が個のプライベートに踏み込むようなことは一切なくなり、お見合いやら親類・上司の紹介などはドラマの中の出来事です。また職場では、不景気のため女性の正規雇用が少なくなり独身女性が正社員として職場にいなくなったため、社内恋愛のチャンスも減少しているといわれています。となると学校での出会いや友達の紹介、さらには合コンやインターネットなど、自分が積極的に活動をしないと異性とは出会えない社会環境になっています。それは一昔前であれば恥ずかしがり屋、引っ込み思案、口ベタな若者であっても出会いのチャンスが与えられたのが、今では自分から行動を起こさない限り何も起こらない社会になってしまっている男女の厳しい現実を意味しています。

 

結婚相手に求める条件

 結婚する意志のある未婚者が相手に求める条件とは何でしょうか?これも年々条件に変化が起こり、男女ともに人柄や容姿が高いのは通年の傾向ではありますが、近年は男性から女性に求める条件に経済力や家事能力、また女性が男性に求める条件は圧倒的に経済力や職業が重視される傾向になっています(図2)。不景気ゆえに安定した結婚生活には経済力ある相手を男女ともに求め合うというシビアな現実がデータから垣間見られます。

 しかし、経済環境は低迷、失業率もなかなか改善されない中、男女ともに正規社員として雇用される若年層も減ってしまっています。

 Web調査による20代~40代未婚女性が「結婚相手に求める年収」では、400万円以上が25.6%、500万円以上が22.5%、300万円以上が16.6%と発表されています。年々、収入減の時代に400万円の年収を獲得するのはたいへんなこと。男性にとってはますます結婚へのハードルは高く上がるようです。

 さて、出生率アップのためには社会環境が安定し女性が子供を産む気持ちになること、その前にはステキな男女との出会いと幸せな結婚(未婚であっても出産はできますが)があることといったライフステージが必要なのですが、異性と出会うことのハードル、結婚へのハードル、若年層の所得へのハードルと子供に行き着くまでにたくさんのハードルを越えなければならない事実が見えてきました。特に、若年の所得の伸び悩みと雇用環境については、若年層を消極的にする大きな原因になっているようです。

 次回は、若年層のふところ具合について考えていきたいと思います。

 

 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2012年8月号掲載)