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2012.09.13

不動産フォーラム21

「日本の明日が危ない!! ―結婚のカベ、出産のカベ②―」

 

男性は「正社員が結婚へのパスポート」、女性は「自由にさせてくれる人、安定した人」

★24歳 男性
・今年新卒で正社員として就職したが、
体調不良のため3ヵ月で退職
・現在アルバイトをしつつ就職活動中(手取り9万円)
・一人暮らし

 『面接で短期で退職したことを指摘され、今後正社員雇用となるか不安です。』

 『一人暮らしのため生活費が必要でとりあえずアルバイトをやるしかないです。彼女がいて親にもあいさつに近々行くけど、正社員にならない限り結婚は無理。不安な気持ちです。』

 

★28歳 男性
・昨年11月、勤めていた会社が倒産
・現在アルバイト生活
・一人暮らし

 『一人暮らしで、アルバイトをしなくては生活ができません。でもアルバイトをしていると就職活動の時間がとれずにこのままアルバイト人生になってしまいそうです。正社員の職を探しているけど採用されません。』

 『今の彼女とはSNSで知り合いました。結婚をしたいけど、まずは今の生活を保つことに必死です。』

 

★29歳 男性
・大手メーカー勤務、正社員
・月収手取り20万円
・一人暮らし

 『大手企業勤務なので生活は安定していて満足です。』

 『不満は彼女ができないこと。会社の配属で地元を離れているため、友人もいないし、彼女もできません。職場にはおばさんと男しかいない。SNSで女の子と仲良くなって告白もしたけどうまくいかなかった。』

 『婚活サイト利用は気が引けるしお金もかかり、そこまでの余裕はないです。』

 

★25歳 女性

・新卒で昨年春、住宅メーカーに正社員として入社
・仕事がたいへんで今年1月に退職
・親戚の事務所でアルバイト
・実家暮らし

 『気楽に仕事をしたかったのに、意外と仕事がきつかったので、実家の親も無理するなというので退職しました。今は親戚の事務所で楽に働いています。』

 『結婚はするつもりですが、収入のある人と結婚をすればよいと考えていて、自分は好きなコトや好きな仕事を自由にして、それを許してくれる男の人でないとダメ。実家にいるのは楽でいいです。』

 

★29歳 女性
・3年間はメーカー系企業に一般事務として働いたが、
その後派遣社員として勤務(年収210万円)
・実家暮らし

 『実家で家族と暮らしているので、そんなに収入がなくとも大丈夫です。派遣は働きたいときに働けるし、派遣先でもたいへんな仕事を任されるわけでもないので自由です。』

 『そのうち、生活が安定した男性と結婚できたらと婚活パーティーにいろいろ出席しています。会費が安いパーティーはレベルが低いですが、男性レベルが高くても気後れしてすいまいます(笑)。』

 

 私の身近にいた若い年代の生の声です。男性は厳しい社会、厳しい現実が言葉の端々にあらわれていて「まずアルバイトから抜け出て正社員雇用にならないと結婚も子供も無理」という悲壮感に満ちた話がありました。が、女性は実家にパラサイトして「よい人があらわれれば」という余裕ある待ちの姿。一部の声ではありますが、男女に結婚へのギャップがあるものの、職業については、安定収入、安定雇用という状況にない若い人が増加している一端がうかがえます。

 

13年間で80万円も収入が減った若年男子!!

 厚生労働省が今年7月5日に発表した「平成23年国民生活基礎調査」によると、平成22年の1世帯当たりの平均所得金額は538万円と前年を2.1%下回り(116,000円減少)、生活意識別でも「苦しい」と回答した世帯は61.5%で、昭和61年調査開始以来過去最高であったことがわかりました。またこの調査では平成8年(1996年)が661.2万円と国民平均所得のピークでしたが、その値から14年間で123.2万円(▲18.6%)もマイナスになっているわけですから、日本国民の生活の苦しさは増すばかりです。本当にたいへんです。(図1)

 

 では、若い人たちの所得はどうでしょうか。図2で示す通り、男性・女性ともに減少の一途の厳しい折れ線グラフが示されています。その厳しさの中でも、女性はピーク時(1993年、1997年、1999年)と2010年を比較すると20歳~24歳は▲9.1%(▲24万円)、25歳~29歳は▲5.7%(▲18万円)、30歳~34歳は▲4.1%(▲13万円)ですが、男性はピーク時の1997年から20歳~24歳で▲12.3%(▲38万円)、25歳~29歳で▲11.3%(▲47万円)、30歳~34歳で▲15.7%(▲81万円)という大きな下げ幅で、日本の経済環境が大変化をしたことがわかります。現在30代半ば~40代後半の男性たちが、1997年ごろに仕事に就いて結婚をし、子供を育てようと意識した所得ピーク時の余裕感覚に対し、今の20代~30代男性が40万円~80万円も収入が減少する環境の中で同じように自分の将来に夢を見るのは、この数字からも「きついよね~。生活するのにいっぱいいっぱいだなあ」と私は痛感しました。前述の若い男性たちの「まずは生活費の確保」は本当に実感の一言なのですね。

 

若年女性の2人に1人は非正規雇用!!

 さらに同性の女性として愕然とした事実が、図3の正規雇用者比率のデータにあります。女性雇用状況で15歳~24歳までの女性10人中5.1人が、25歳~34歳までの女性の10人中3.9人が非正規雇用=正社員としてではなく派遣・契約・パートで働いているという状況にあります(15歳~には学生も含まれており、多少数値は上がる傾向にあり)。

 図2の平均給与では、男性に比較しその減少率は▲4%~▲9%(13万円~24万円)で、もともとが低収入ゆえに減少させようもないのだろうと理解しましたが、実は金額ではなく雇用形態に変化があり、女性たちは正社員という安定のステージから非正規雇用という不安定でいつでも解雇される立場に追いやられていることがわかります。女性全体では1990年に62.1%だった正社員比率が2011年には45.4%に落ち込んでおり、女性の労働環境の厳しさは深刻化するばかりで、残念です。

 合わせて若年男性では、25歳~34歳で1997年に94.9%だった正社員比率が2011年には84%(▲10.9%)となっています。働き盛りの35歳~54歳はそれぞれ91.5%、92.7%ですから、前述の若い男性も結婚へのパスポート=正社員が入手できる日はいつごろになるのか不安になるのも無理はありません。

 日本の企業は大量に新卒の若者を採用し、社内で10年間訓練し、長期雇用でその若者たちが企業に貢献して、企業は人材への投資を回収してきました。その間は手厚い福利厚生を通じて、結婚をし、子供を育て家庭を形成維持してきたわけです。が、バブル崩壊後失われた20年の日本経済の失速による低成長と年々激化する新興国とのグローバル競争により、人材(社員)の一生や家族を丸抱えする企業の力は失われました。

 なぜ日本で結婚しない男女が増加しているのかを考えると、非正規雇用者が増加し、正規雇用者の賃金も低下している環境の中で、男性は一家を養うという将来に希望が持てるでしょうか?女性は安心・安全な家庭で子供を産む心理になれるでしょうか?どちらにしても、若者から「NO!!」の声が聞こえてきます。働く場がない!お金がない!この若年層のプリミティブな生活問題に対し日本経済の安定と社会環境整備によって建て直しを図らないと、日本には新しい人口が増えていきません。ジリジリと日本はこの20年間で豊かな国から貧しい国になり、若年の人生観もかえてしまっていたわけです。“無気力、無関心”と言われる今の若者ですが、彼らの生活背景には不安定な状況しかありません。

 なんとかしなければ!!と思っても私には為す術がないと思っていたら、遊び仲間の若年男子から立て続けに秋の出産報告が3件も入りました。育メンをやるために秋は遊び活動休止とのこと。日本の人口が私の身近で3人も増えますよ。ちなみに3人とも大手上場企業の30代半ばの中間管理職で、3人中2名が第2子出産の恵まれた男子たちですが。

 少子化問題は、長期継続で取り組改善していくべき次世代日本人の“幸せ課題”だと思います。

 

 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2012年9月号掲載)