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2024.03.01

不動産フォーラム21

街と高架下のコラボで生まれたブランドパワー

 
 

 渋谷隣町の中目黒は年々華やかに人が集まる街になっています。駅乗降客はこの10年で1.35倍になり夕方や週末は駅が混み合うほどです。目黒川沿いのファッションショップやグルメスポット、昔ながらの商店街もあり路地に入れば静かな住宅地、駅前にはタワーマンションがそびえ立ち、モダンでありながらもカジュアル感が入り混じった独特な雰囲気が街の魅力です。昨年春からインバウンドも急増、渋谷からの41系統バスにはスタバロースタリーは「菅刈小学校前で下車徒歩30秒」と英語案内があるほどで有名な東京の観光地になっています。3月は目黒川のお花見でおおぜいの人出が予想されます。

 
 

●「中目黒高架下」という名の高架下 
 中目黒駅に「中目黒高架下」という名称の路面店の連なりが東横線高架下にあるのをご存じですか。あまりにドンズバのネーミングにびっくりですが、2016年秋にできた目黒川から駅を通り祐天寺方面に700m、27店舗からなる路面店群で人を集めています。

 

 ここの面白さは超メジャー店から知る人ぞ知るのマイナー店までバラバラに混在している様子が人々の期待感をくすぐるところです。マイナー店はメジャー店に引っ張られて店格アップに見えますし、メジャー店は街の雰囲気に溶け込んで個性的な店に変身しています。運営方法も独特で営業時間は店まかせ、店舗デザインも自由、電車運行と往来の人々の安全を守れば店の個性を最大限に発揮する独自性を尊重した運営管理がおこなわれています。

 

 このごろは、ルール通りに綺麗に整理整頓された店舗が主流でどこの街でも同質化した商業施設ばかりになりましたが、中目黒高架下のバラバラ感は何があるのかの期待感や好奇心から線路沿い700m歩き切り中目黒の街の中を知るきっかけになっています。

 

 27店は”ローカライズ”がポイント。メジャーやマイナーは関係なく中目黒に本社がある、中目黒に拠点を構えている、中目黒に社長が住んでいるなど、中目黒に縁ある事業者が選ばれ個性を競い合うのを是としています。中目黒には街中にも沢山の飲食店があり競争が激しいので、かなりの力量ある店でないと生き残れません。開業から7年で3割強の店が替わりましたが、この新陳代謝はお客様には新しい変化と受け止められているわけです。

 
 

●人が人を呼ぶ街
 駅そばにはTSUTAYAとスタバがあり常に人で溢れています。I’m donut?という福岡からきた話題のドーナツ専門店には長蛇の列。テラス席があるpizza店も人気がありますが、不思議な程どこもオシャレな若い女性ばかり。男性もイケメンが沢山います。そしてこの人たちが絵になるシーンをつくるのでそこに憧れる次の人が集まってくる様子がうかがえます。

 

 駅から祐天寺に向かう路面店群はお酒が楽しく飲めそうな飲食店の並びで、夕方から店に灯りがともり賑やかになります。個性派店主が店を仕切りこの店主にお客が付いて常連が生まれているそうです。

 

 さらに進むとNAKAME GATE STREETというゾーンにスタジオやショールーム併設のスモールオフィスが複数入居しています。窓越しにオフィス内が丸見えなので働く若者がとてもカッコよくクリエイティブなイマドキ働き方の光景です。高架下でスモールオフィスが成立するのは中目黒の街ブランド力なのでしょう。通りがかりの若者が憧れて入社希望をするケースもあるとか…

 

 中目黒の代官山寄りはアパレルメーカーも多くあり、人気カフェやレストランの事業会社も複数あり情報に敏感なセンスよい人達が働く街、タワーマンションや高級住宅地もあるだけに高感度層が憧れ層を引き込む、人が人を呼ぶマグネットになっている街です。

 

 うるさい、きたない、危ないと今まで負の場だった高架下ですが、近年は駅周辺の有効活用として商業や宿泊やコミュニティの場として開発され注目されています。が、どこもうまく人を集められいるわけではありません。中目黒高架下は元来の街の持つ魅力と高架下のうまいプロデュース力が相乗効果をもたらした成功事例です。

 
 

(記:島村 美由紀/不動産フォーラム21 2024年3月号掲載)