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2019.12.17

繊研新聞

協業が創る都市公園の新スタイル

 
 
 都市公園が変化している。過去には暗く荒れて危ない気配で避けていた都心の空間が、最近は多様な取り組みで集客・交流拠点として生まれ変わり、新たな役割を担い始めた。

 

 

アトラクティブ・パーク

 超高層ビルあべのハルカスがそびえる天王寺駅に直結する「天王寺公園てんしば」は大都会の真ん中にある約25,000㎡の芝生公園で雰囲気が良い。平日の昼間でも大勢の大人や子供が芝生広場でキャッチボール、追いかけっこ、昼寝とパークライフを楽しんでいる。さらに広い芝生広場(7,000㎡)の周囲をカフェ、ステーキハウス、ピッツェリア、コンビニ、雑貨屋、物産店、子供の遊び場、ペットショップ、ドッグラン、簡易宿泊施設までが戸建て店舗で囲んでいる。大阪で代表的都市公園の天王寺公園は2015年10月に大胆なリニューアルで「てんしば」となり、年間400万人と過去の2.5倍の人が利用する公園に変身した。そして今年11月には「てんしばⅰ:na(イーナ)」が延べ床面積約2,500㎡で動物園グッズショップ、カフェ、アスレチックステージなど7店舗の商業棟を開業し、期間限定のアイススケートリンクを特設するなど魅力を増している。

 

 東京でも「南池袋公園」が話題だ。繁華街に隣接して以前は荒れた場だったが、2016年4月に新たな公園としてスタートを切った。7,800㎡強の都市公園の過半が芝生広場。遊具のある子供の遊び場や階段状のデッキが設置されている。広場正面にはしゃれたテラスのある2階建てのカフェ(120席)があり都会的なモダンパークの雰囲気づくりに貢献している。11月のある日、芝生は養生のため入場禁止だったが、日なたぼっこができるデッキが子連れママや学生、サラリーマンでにぎわっていた。

 

 福岡天神中央公園の西中洲エリア(8,380㎡)は那珂川の左岸に接した水辺立地で水上バス船着き場や重要文化財の貴賓館がある。天神の東の玄関口として活性化するため、2019年8月「ハレノガーデンイースト&ウエスト」としてリニューアルした。レストランやカフェ、ベーカリーが公園内に点在し、船着き場も整備された。夜になると川越しに対岸の夜景を楽しめるナイトスポットとして大人を集めている。

 

 東京都南町田市に商業施設と都市公園の一体的再整備が行われ、2019年11月に開業した「南町田グランベリーパーク」は市民のための鶴間公園、世界初の公式サテライトのスヌーピーミュージアムと241店で構成されるアウトレットモールが一体となった街型パークだ。大規模開発(敷地面積約220,000㎡)でコンテンツが充実しており、公園とミュージアムと商業がこれからどのような融合を見せるのかに期待がかかる。

 

 

官と民で魅力的に

 人口減少、都心への一極集中の時代となり、都市公園も量的拡大から質的充実を図る時代となった。2017年6月「公募設置者管理制度」の創設により民間事業者の公園内収益施設の設置が円滑になり、サービス水準向上や公園利用の仕組みづくりに工夫ができるようになり、民間事業者が参画した公園づくりが加速している。事例で挙げたプロジェクトは官と民の協業で成功した事業だ。「てんしば」は近鉄不動産、「南池袋公園」はレストラン事業者のグリップセカンド、「ハレノヒテラス」は西日本鉄道、「グランベリーパーク」のミュージアムや公園は東京急行電鉄系関連企業、ソニークリエイティブプロダクツなど複数企業の参画により魅力的な公園として再生し成功した。

 

成功への二つの視点

 成功への視点は2点ある。1点は稼げる仕組みづくりだ。アイデアを持つ民間事業者が知恵を出し収益を生む施設を整備し運営を行う。また、公園や施設を活用してイベントやプロモーションを実施し集客を図る。特に商業に長けた事業者は施設運営にも慣れ、施設入居テナントの選別と関係づくりはお手のものだ。質の良いテナントは公園活用の販促を積極的に展開できる。その結果、公園、施設、テナントの協業で相乗効果が生まれ、集客が図れて収益が上がり、その一部が公園管理費に当てられ公園全体の好循環が生まれる。官にとっては負担軽減、民にとっては新ビジネスチャンスとなり、特に商業事業者にとっては蓄積したノウハウが活用できる新領域である。

 

 2点目は現代人の意識変化だ。人々のくらし価値観は世代交代で転換期を迎えている。所有欲は薄く車も不用、目立つことは避け、身の丈に合った自分らしい生き方と自分時間を大切にしたい今の生活者は、ぼっち時間にちょっと遊びができる街中の居場所(サードプレース)を求めている。一人でも仲間や家族とも、日常の気晴らしや娯楽を受け止めてくれる身近な場所へのニーズが新たな都市公園の役割と結び付いた。

 

 都会には立地に優れた都市公園が数多くある。従来の枠を超えた発想で新たなパークライフを商業の視点から提案していきたい。

 

 

(記:島村 美由紀/繊研新聞 Study Room 2019年(令和元年)12月17日(火)掲載)