販売士
ワクワクオーラを放つ店
●みんなをワクワクさせる物産ショップ
物産ショップを見かけるとワクワクしませんか?「何を売っているの?」「珍しい物があるかしら?」「きっと美味しい物があるはず!」という期待のワクワク気分になりますよね。「故郷の味を」や「旅で出合ったグルメを」と思う人もいるでしょう。老若男女、幅広く誰をもワクワクさせる業態は稀なので物産ショップは注目の店だと思います。
物産ショップの代表格は全国の自治体アンテナショップで、東京には62件(2023年)の店が有楽町や日本橋や表参道に出店しています。中には年間150万人もの集客や10億円の売上をあげる店もあるほど人気です。
私の物産ショップとの出合いは1994年の銀座「わしたショップ(沖縄)」でその面白さに興奮しました。その後、北海道や山口、宮崎など次々に各都道府県のショップが次々に東京に集まり、今では通りがかりに立ち寄るだけではなく「○○を○○ショップに買いに行こう」という目的を持つ存在になっています。
百貨店の催事でも“物産”は抜群の集客テーマで特に北海道・沖縄の物産展は人気だと百貨店関係者から聞きました。
人気の秘密は各県や地域の認知度とそこから繋がる名店・名品やグルメや珍味など、地域のイメージが好感度なほど店に小さな発見や驚きが詰まったサプライズボックスになっている事が世代を超えるワクワク感に結び付くのだと思います。
●ワクワクオーラを放つ
都心の地下鉄改札を出て地下道を歩いていると新しい店ができた事に気付きました(A店)。近寄ってみたもののアピールのない地味な存在で、何屋なのか判別がつきません。店舗の真ん前に立ち、店名を見て“沿線いいものセレクト”の物産ショップである事がようやくわかりました。ネットの紹介には“沿線にある店舗などの魅力ある商品を取り揃え、ここでしか買えないオリジナル商品なども販売し、発信や活性化に貢献”とありました。
店内にはその趣旨に沿った商品がきれいに陳列されビールやお菓子などのオリジナル商品もあり、コーヒーが飲めるイートインカウンターがあります。残念ながら外へのアピールが弱いため通行人の多くがスルーしていきます。
「何があるの?」とご婦人たちが足を止める、間口は4mほどの小さなショップ(B店)。店内も狭く10坪弱の店です。どうやら新潟県上越の特産店でした。
ひとりの通行人が足を止めて棚をのぞき込むと、他の人もその客の姿を見て「なに?なに?」と足を止め店に入っていくお客もいて、すぐに調味料を買っていました。商品そのものの良さもさることながら、店全体がワクワク感に溢れ“面白いよ!楽しいよ!いろいろあるよ!”をアピールするショップに仕上がっています。
●人を引きつけるサプライズボックスの作り方
A店もB店もしっかり計画がされ関係者が真面目に取り組みコストもかけた良い店ですが、違いは外へ向かったオーラの放ち方にあると思います。
地下鉄通路にある沿線セレクト店(A店)はおそらく規制から外への滲み出しができづらく、区画内側だけの発想で店がつくられたのでしょう。しかし、何らかのデザイン手法や演出で通行人への存在アピールはできたのではないでしょうか。
店内は統一什器で整理整頓され商品が陳列されていますが、残念ながら凸凹がなく商品サイズやパッケージが類似のため、目線に引っかかりが生まれずスルッと終わってしまいます。きれに整理され過ぎていて、サプライズ(小さなワクワクの爆発)が起こってきません。
新潟の店(B店)は外に向け強いアピール!店内も凸凹の商品が並びほど良いバラバラ感が面白さを発揮しています。これが「オヤ?」「アレ?」というサプライズを起こし、お客の期待に応えているわけです。
商品の見せ方や並べ方は物によっていろいろなクセがありますが、食品や細かな雑貨など小サイズ・低価格の商品は整理しすぎる事は禁物。高い低い、縦横斜め、大きい小さい等でわざとバラバラ感や雑然さをつくることで目線をキャッチでき楽しさや面白さの演出になりアピールにつながります。これが人々の意識にキラリと反射してワクワク感をつくり上げていくわけです。どうぞ参考にして下さい。
(記:島村 美由紀/販売士 第53号(令和6年9月10日発行)女性視点の店づくり㊴掲載掲載)